和紙の魅力とその種類。日本の和紙産地別の特徴と洋紙との違い比較

和紙

その質の良さには国際的にも高い評価を得ている和紙。

世界中の文化財の修復にも活躍していて、和紙の強度と優れた保存性が注目されています。
ユネスコの無形文化遺産にも登録された日本の伝統工芸。

今回は和紙の魅力をご紹介します。

【目次】
1.日本の和紙のここがすごい!
 1-1.原料別の特徴
 1-2.水質が重要~和紙作りに欠かせない水
 1-3.日本のオリジナル「流れ漉き」という技術
2.日本の和紙産地一覧と歴史・特徴
 2-1.内山紙
 2-2.越中和紙
 2-3.美濃和紙
 2-4.越前和紙
 2-5.因州和紙
 2-6.石州和紙
 2-7.阿波和紙
 2-8.大洲和紙
 2-9.土佐和紙
 2-10.江戸からかみ
3.和紙と洋紙の違いと特徴
 3-1.和紙と洋紙の見分け方
4.ものづくりの心は受け継がれて~1000年の歴史を持つ和紙

1.日本の和紙のここがすごい!


和紙の原料には紙の質を弱くする成分が含まれていないので、その保存性が非常に優れています。

奈良の正倉院にはおよそ1300年前の物といわれる和紙が残っているほど。
耐久性、保存性、柔軟性、安定性が高い評価を得て、国内は勿論、世界中の文化財の修復にも活躍しています。

また和紙は強度や耐久性も高く、和傘にも使用される他、紙布(しふ)で作られる着物まであるのです。

和紙の原料は楮、雁皮、三椏が代表的。
手漉きの和紙は高度な技術が必要とされる日本の伝統工芸です。
明治時代以降は機械による和紙の生産が進み、現在では後継者の育成が大きな課題にもなっています。

1-1. 原料別の特徴

  • 楮(こうぞ)
  • 和紙の大半は楮を使用している。
    繊維が長く、絡みやすいのでもんでも破れない強靭さを持ち、幅広い製品に用いられる。

  • 雁皮(がんぴ)
  • 古代には斐紙(ひし)と呼ばれていた。
    繊維が短く、紙の表面はなめらかで美しい仕上がりになる。
    かな料紙や写経用紙など、細字に適している。

  • 三椏(みつまた)
  • 雁皮に似て繊維が短い。
    印刷に適し、大蔵省が栽培を奨励した。
    葉書や便箋などに用いられている。

  • 麻(あさ)
  • 古代を代表する和紙の原料。
    扱いが難しく、楮の台頭によって使用量が減少。
    重厚で風格のある仕上がりが特徴。

1-2. 水質が重要~和紙作りに欠かせない水

和紙を作る上で大切なのが水。

原料の楮を水にさらして洗う工程や流し漉きでは、良質な水が必要となります。
和紙作りにはカルシウムやマグネシウムの含有量が少ない軟水が適しています。

私達が普段使用している水道水で和紙を作ろうとすると、水道水には塩素が含まれている為、数年後には紙が赤く変色してしまうそうです。
たかが水、されど水。
その水に含まれている成分の僅かな違いで紙の質に影響が出るのです。

1-3. 日本のオリジナル「流れ漉き」という技術

紙を作る技術の基本は中国から伝わってきました。

しかしその後、日本は独自の製法を編み出し、中国の技法「溜め漉き」ではなく「流れ漉き」という漉き方を浸透させました。

流れ漉きは「ねり」と呼ばれる粘液を原料と混ぜ、その紙料液を揺り動かして繊維同士を絡みやすくする方法。
余分な水分は抜きながら、また紙料液を汲み入れるという作業を数回繰り返します。

流れ漉きは奈良時代の末期頃から一般化され、薄くても丈夫な紙に仕上がるということで各地に広がっていきました。

2.日本の和紙産地一覧と歴史・特徴

和紙の産地は北海道から沖縄まで全国各地に広がっていて、歴史の長い産地もあれば、近年始めたばかりという所もあります。

2014年にユネスコの無形文化遺産に登録されたのは島根県の石州半紙、岐阜県の本美濃紙、埼玉県の細川紙の3つ。
この3つの和紙に共通するのは

  • 原料が国産の楮のみを使用している
  • 良質な水を持つ川が近くにある
  • 伝統的な製紙技術が受け継がれてきていること

などが挙げられます。

また、日本三大和紙と言われる越前紙、美濃紙、土佐紙も有名です。
ここで、伝統的工芸品に指定されている全国の和紙の特徴をご紹介したいと思います。

内山紙


内山紙(うちやまがみ)とは長野県(飯山市、下高井郡野沢温泉村、下水内郡栄村)で主に生産される伝統的工芸品です。
戸籍台帳の用紙としても使われる程、丈夫な紙です。

内山紙は17世紀、萩原喜右ヱ門という人物が美濃で技術を習得し、帰郷後に生産を始めたのが起源とされます。

内山紙は原材料に楮を用いている為、強度も高く保温性や通気性、通光性にも優れています。
楮を雪の上に晒す”雪晒し”によって生まれる白さは日焼けにも強く、戸籍台帳の用紙としても使われているほか、障子紙に使われる内山障子紙も有名です。

産地情報

名称 内山紙協同組合
住所 〒389-2322
長野県飯山市大字瑞穂6385
電話 0269-65-2511

越中和紙


富山県の富山市、南砺市、朝日町で主に生産されている伝統工芸品、越中和紙。
非常に丈夫な和紙で、型染めの技法を用いる型染紙としても有名です。


越中和紙の歴史は古く、少なくとも8世紀頃には生産が始まっていたとされています。
その後越中和紙の生産が拡大したきっかけは、”富山の薬売り”にあります。
江戸時代から薬の配置販売が盛んになったことで、その薬の包み紙の需要が高まり、和紙作りが発展していったのです。

薬の配置販売だけでなく、当時はおまけとして浮世絵などの版画や紙風船も配っていたので、ここでも和紙が使われ、需要は拡大していきました。
ちなみに、このおまけは現在にも残る”おまけ商法”の元祖といわれています。
明治時代の初期には1500人程の職人が居ましたが、昭和に入ると三分の一以下にまで減少してしまいました。

越中和紙のクッション
出展:桂樹舎HP
楮や三椏、雁皮を原料とする越中和紙は、その温かみのある白に特徴があり、丈夫な和紙としても有名です。
近年では、その丈夫さを活かした新たな商品作りも行われており、驚くことに和紙で出来たクッションまであるのです。

kaoruさん(@kaoru_ina)が投稿した写真

そして近年人気のポップな柄は、伝統的な着物の染色技法である”型染め”が用いられています。
これは染色工芸家の芹沢銈介によって伝えられたもの。
明るい色使いは、若い女性にも人気となっています。

越中和紙の障子紙

また、越中和紙は障子紙にも使用されます。
これは、その”白”に特徴があります。
この”白”の色を出すには、原料の楮を冬の晴れた日に”雪晒し”を行うことから始まります。
紫外線の作用で白さが増した楮を使い紙すきを行うのですが、この紙すきの工程の前後に、繊維のゴミや黒い部分を取り除く作業を丁寧に行うことで、真っ白な紙が出来るのです。

そうして出来上がった越中和紙の障子紙。
実は越中和紙の障子紙は、時が経つ程に白さを増すという特徴を持っています。
これは、紫外線の作用によると言われています。


クッションにも出来るほど丈夫な越中和紙。
楮の繊維を原料として、そこにトロロアオイという植物から抽出した粘液を加え、”すげた”で紙すきを行います。
ここで一般的な和紙よりも多くすくことで厚みを出し、乾燥した後にこんにゃくのりを塗り込むと、クッションとしても使える程丈夫な和紙が出来上がります。
ちなみにこんにゃくのりを塗るのは、繊維と繊維の隙間を埋める為。この工程によって強度は倍になります。

産地情報

名称 桂樹舎
住所 〒939-2341 富山県富山市八尾町鏡町668-4
電話 076-455-1184
HP http://keijusha.com/

美濃和紙


美濃和紙とは岐阜県(美濃市)で主に生産される伝統的工芸品です。
光を通すと美しい輝きを放つ和紙で、日本三大和紙の一つです。

美濃和紙の歴史は古く、少なくとも8世紀の初めには生産されていた記録が残っています。
正倉院に現存する日本最古の紙も美濃和紙が使用されています。
江戸時代には障子紙として利用されるようになり生産を拡大し、「美濃判」という規格になるほど代表的な和紙になりました。

美濃和紙は非常に薄いながらも丈夫ということで、障子紙としても利用されてきました。
漉きムラが少なく、日光に当たると白さが増すという特徴を持ちます。

産地情報

名称 美濃手すき和紙協同組合
住所 〒501-3788
岐阜県美濃市蕨生1851-3
美濃和紙の里会館内
電話 0575-37-4711

越前和紙


越前和紙とは福井県(越前市)で主に生産される伝統的工芸品です。
多種多様な製品が生産されており、高品質な和紙として定評があります。

越前和紙の歴史は古く、6世紀頃まで遡ります。
室町時代には公家や貴族の公用紙として使用され、江戸時代には日本一の紙として「御上天下一」の印を押される程になりました。

越前和紙はその品質の高さに定評があり、横山大観などの日本画家にも好まれてきました。
原料の楮や三椏の繊維を丁寧に洗い、不純物を取り除く為、虫が寄り付きにくいとされます。

産地情報

名称 福井県和紙工業協同組合
住所 〒915-0232
福井県越前市新在家町8-44
電話 0778-43-0875

因州和紙


因州和紙とは鳥取県(鳥取市)で主に生産される伝統的工芸品です。
墨なじみがよく、書道用紙にもよく用いられる和紙です。

因州和紙の歴史は古く、少なくとも8世紀には生産されていました。
常に新しい製品を生産することで、全国的に知られるまでになりました。

因州和紙は書道に用いられる画仙紙の生産量が日本一で、シェア70%程を占めています。

産地情報

名称 鳥取県因州和紙協同組合
住所 〒689-0501
鳥取県鳥取市青谷町青谷4063-11
鳥取市西商工会
電話 0857-85-0408

石州和紙


石州和紙とは島根県(江津市、浜田市)で主に生産される伝統的工芸品です。
非常に強靭な和紙で、商人は帳簿に用いて、火災の際は井戸に投げ込んで保存をはかったとされる程でした。

石州和紙は8世紀、柿本人麻呂が紙漉き技術を伝えたことが起源とされています。

石州和紙は良質な楮(こうぞ)が採れる地の利を活かして作られてきました。
楮の薄皮を削る際にあえて甘皮を残すことで、和紙の強度を増すという独特の製法も用いられます。
また、余分なものを極限まで取り除き、繊維のみで作られた和紙は「みざらし」と呼ばれ最高級の和紙とされます。

産地情報

名称 石州和紙協同組合
住所 〒699-3225
島根県浜田市三隅町古市場957-4
電話 0855-32-0353

阿波和紙


阿波和紙とは徳島県(吉野川市、三好市、那賀郡那賀町)で主に生産される伝統的工芸品です。
徳島県のもう一つの特産品、藍染を用いた和紙作りも行われています。

阿波和紙は8世紀ころ、阿波忌部氏(あわいんべし)という人物によって生産が開始されたといわれています。

阿波和紙は非常に丈夫な特性を持ち、水にも強いです。
常に新しい製品作りに取り組み、特に藍染紙は人気となっています。

産地情報

名称 阿波手漉和紙商工業協同組合
住所 〒779-3401
徳島県吉野川市山川町川東141
阿波和紙伝統産業会館内
電話 0883-42-2772

大洲和紙


大洲和紙とは愛媛県(西予市、喜多郡内子町)で主に生産される伝統的工芸品です。
様々な用紙に用いられ、特に書道用紙としての人気が高い和紙です。

大洲和紙は9世紀頃より生産されており、江戸時代には大洲藩の保護のもと生産が拡大していきました。

大洲和紙は表装用紙や書道用紙、障子紙として利用されており、特に書道用紙の墨なじみの良さには定評があります。
非常に薄く漉かれており、紙肌のつややかさも特徴です。

産地情報

名称 大洲手すき和紙協同組合
住所 〒795-0303
愛媛県喜多郡内子町平岡甲1240-1
電話 0893-44-2002

土佐和紙


土佐和紙とは高知県で主に生産される伝統的工芸品です。
特にその薄さと強さが特徴で、手すき和紙として世界一薄い、厚さ0.03mmの和紙も土佐で作られています。

また、高級な書道洋紙「清帳紙(せいちょうし)」も作られており、天日乾燥で仕上げられた白くふっくらとした紙肌が特徴です。

産地情報

名称 高知県手すき和紙協同組合
住所 〒781-2128
高知県吾川郡いの町波川287-4
電話 0888-92-4170

江戸からかみ

江戸からかみとは東京都で主に生産される伝統的工芸品です。
和紙に装飾を施すからかみは、襖などに張られます。

江戸からかみの歴史は古く、平安時代まで遡ります。
筆写用の紙だけでなく屏風や襖などにも用いられ、生産が拡大していきました。

江戸からかみは和紙に多彩な加飾が施されますが、その装飾技法の中でも主な3つは下記の技法です。

  • 渋型捺染手摺り
  • 木版手摺り
  • 金銀箔・砂子手蒔き

産地情報

名称 江戸からかみ協同組合
住所 〒110-0015
東京都台東区東上野6-1-3
電話 03-3842-3785

3.和紙と洋紙の違いと特徴

日本の和紙と、海外の洋紙の違いは、どこにあるのでしょうか。
「洋紙は100年、和紙は1000年」という言葉があります。

実際洋紙は100年も経つと劣化してボロボロになってしまいますが、和紙は経年劣化がほとんどありません。
1000年以上経過した和紙の古文書も多く残っており、一番古いもので大宝2年(702年)の戸籍に使用された和紙が正倉院に残っています。

なぜこのような差が生まれるかというと、洋紙は大量生産する為に繊維を短くして化学薬品で固めている為、その薬品の作用で劣化が早まってしまうのに対し、和紙は長い繊維を絡めただけのシンプルな構造の為、劣化しにくいのです。

和紙と洋紙の見分け方

和紙は身近なところでは、障子紙や書道の半紙などにも使われています。
一方洋紙は、ノートやコピー洋紙など、表面が比較的ツルツルしています。

紙を手でちぎると、和紙は繊維が毛羽経つのもわかりやすい特徴です。

4.ものづくりの心は受け継がれて~1000年の歴史を持つ和紙

私達の身近にある紙の殆どが洋紙ですが、半紙、折り紙、扇子、包装紙、水引、障子、襖、壁紙、照明などのインテリア、そして紙幣にも和紙が使われています。

ひとくちに和紙といっても耐久力が自慢の楮紙、表面が滑らかな雁皮紙、千代紙など装飾に使われる友禅紙など、いろいろな種類があります。

日本に住んでいながら、和紙の特徴やその良さを詳しく知らない私達。
後世にそして世界に誇れる和紙は1000年以上の歴史を持つ伝統工芸です。

受け継がれてきた「1000年の技術、ものづくりの心」を大切に守り、これからの世代にも伝え続けていきたい日本の文化といえるでしょう。

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