お食い初めは、子どもが一生涯、食べることに困らないようにとの願いを込めて行われる儀式です。
地域によって「真魚(まな)初め」「食べ初め」、初めて箸を使うので「箸揃え」「箸初め」、生後100日頃にお祝いすることから「百日(ももか)の祝い」と呼ぶこともあります。
個人差はありますが、乳歯が生え始める生後100日目(地域によって110日目、120日目)に膳を揃えてお祝いします。
1.お食い初めの歴史
お食い初めの起源や由来ははっきりとはわかっていませんが、平安時代、赤ちゃんにお餅を食べさせる「百日」という行事があり、これがお食い始めの始まりと考えられています。
平安~室町時代はお餅を食べさせていましたが、鎌倉時代にはお餅の代わりに魚を食べさせるようになり、この頃は「真魚初め」と呼ばれていたことが「平家物語」や「源平盛衰記」に記されています。
このような子どもの成長を願う風習は海外にも見られます。
韓国には、赤ちゃんが生後100日を無事に過ごしたことをお披露目する「ペギル」という行事があります。
昔は赤ちゃんの死亡率が高かったため100日を超せばひとまず安心という思いでお祝いしたことから始まったとか。
そのため昔は盛大にお祝いしたようですが、現代では簡略化され、家族同士の食事だけで済ませたりお祝いそのものも行わないこともあるそうです。
お祝いとは少し違いますが、ネパールでは「パスニ」という行事があります。
生後7ヶ月になると晴れ着を着せてもらい、家族全員からコインの上に載せたお米を与えられます。
次に、土だんご、レンガ、精米していないお米、おもちゃ、指輪、ペンとインクポット、本の中からどれか一つを選ばせ子どもの将来を占うそうです。
もちろんアジア以外にも、こうした風習はあります。
イギリスでは幼児洗礼のときにお食い初めのような行事を行っていました。
その時、使っていたのがスプーン。
貴族は銀のスプーンを、裕福ではない家庭では木製を使っていたことから良い家柄・裕福な家庭の出身であることを「銀のスプーンをくわえて生まれてきた」と表すようになりました。
そのため、はじめて食べ物を口にするとき銀のスプーンを使うと一生食べるものに困らないとも言われています。
赤ちゃんが生まれたお祝いに銀のスプーンを贈る習慣がヨーロッパ各地で見られますがこうした歴史が背景になったからなのですね。
2.お食い初めの献立
子どもの成長を願う行事ということで、一汁三菜の祝い膳が伝統的な形とされています。
鯛などの尾頭つきの魚、赤飯、焚き物、香の物、紅白の餅、吸う力が強くなるようにと吸い物(汁物)などが献立の基本ですが、お食い初めならではのものとして、「歯固めの石」が添えられます。
地域によっては石の代わりに堅い栗の実や、関西地方では蛸を出すこともあります。
このように縁起の良い料理を用意しますが、赤ちゃんが食べられるわけではないので実際には食べる真似をさせるだけになります。
最近では、お食い初めを離乳食の開始と考えて伝統的なお膳ではなく離乳食にすることもあるようです。
3.歯固めの石とは
歯固めの石
歯固めの石とは、文字通り「石」。
その昔、歯が丈夫なことが長生きの秘訣と考えられていました。
そこで「石のように丈夫な歯が生えて、長生きできますように」との願いから膳に石を添えるようになりました。
もちろん石を食べるわけではありません。
まず歯固め石を箸でつまみあげ、石は椀に戻します。
次に石をつまんだ箸を赤ちゃんの歯に当てます。
こうした形式をとることが多いのですが、地域によっては赤ちゃんの歯に直接、石を(軽く)あてるところもあります。
また長野県佐久地方のように、石をもかみ砕く丈夫な歯になるようにと、洗い清めた石を赤ちゃんにしゃぶらせるところもあるそうです。
地域のよってやり方が異なる場合もあるので、あらかじめ調べておくといいでしょう。
いずれにしても誤飲の恐れがないように大人が充分、注意する必要があります。
4.歯固めの石はどうやって手に入れる?
歯固めの石の入手については大きく3つあります。
①お宮参りのご祈祷を行った際に祝い箸などと一緒に歯固め石を授かる場合。
お宮参りでいただいた場合は、お祝い後もお守りとして大切に持っておくとよいでしょう。
②神社の境内の小石をお借りする方法があります。
これはお宮参りでご祈祷した神社、もしくは近所の氏神様の境内にある小石を拾って帰りお祝いの膳に使います。
大きさですが、特に決まりはないようです。
色については、黒、白、赤それぞれ1個用意するのが正式とされていますが、必ずしもこれにこだわる必要はありません。
個数については地方によって異なる場合があるので調べておくといいでしょう。
この場合、注意しなければならない点が2つあります。
1つは、小石を使う時は熱湯消毒し、きちんと乾かしてから使うこと。
もう1つは、お食い初めが終わったら小石を綺麗に洗い、小石を拾った場所に、感謝の気持ちを込めて神社にお返しすること。
この2点をくれぐれも忘れないようにしてください。
③インターネット通販で手に入れる
最近は歯固めの石も通販で入手できるようになりました。
価格も500円からと手頃な値段です。
使い終わったら、お守りとして大切に保管しておきましょう。
5.お食い初めの食器
正式には高足の御膳を使いますが、男の子なら内外ともに赤色、女の子であれば外は黒色、中は赤色のお椀を用います。
またお椀の絵柄ですがおめでたい席なので紋付き、または鶴亀や松竹梅などが良いとされています。
このお膳は母方の実家から贈られる事が一般的とされ、家紋は婚家(嫁ぎ先)のものをいれることが多いようです。
しかし、昔ながらの正式な漆器やお膳を使うケースは少なくなってきています。
すくすく育つようにとの思いから竹を使った食器を使うこともあるようです。
もちろんベビー食器や、家庭にある食器でも構いません。
要は、子どもの成長を願う気持ちが大切で、食器にこだわる必要はありません。
6.お食い初めの作法
歯固めの石やお椀の色など、お食い初めには独特の約束事がありますが食べ方もいろいろで、お祝いの席のなかで最年長の人の膝の上に、赤ちゃんを乗せて、その年の恵方を向いて食べさせる(真似をする)という地方もあります。
また、お食い初めの後、赤ちゃんをわざと道などに捨て、事前に依頼しておいた近所や親戚の人などに赤ちゃんをすぐに拾ってもらうという所もあるそうです。
拾ってくれた人を「拾い親」と言って、時には親子のようにつき合うそうです。
このように地方によって、さまざまな作法があるのであらかじめ年長者の方に聞いておくといいでしょう。
お食い初めは、子どもの成長を願う愛情こもった行事ですが、反面、細かな決まり事も多く、環境や状況によって簡単にはできないこともあるでしょう。
そもそも、お食い初めは子どもを大切に思う気持ちから始まったこと。
離乳食への切り替えのきっかけとしても構いません。
愛情をもってお祝いすれば、それだけで立派なお食い初めです。
無理をしないことが大切です。
7.まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はお食い初めとは、その歴史と意味についてご紹介しました。
ご参考になれば幸いです。