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博多織・新海佳織さんインタビュー|伝統を繋ぐ人々

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【プロフィール】
短大を卒業後、国家公務員を経て2009年博多織デベロップメントカレッジ(HDC)に入学、博多織を学び始める。2011年HDCを卒業し、博多織手機技能修士の認定を受け、2012年に自宅に工房を構える。現在は帯を中心に制作活動を行っている。

Q1. 工芸品について教えてください。

博多織は、鎌倉時代から770年以上受け継がれてきた絹織物です。

強く密に張った細い経糸(たていと)に、太くまとめた緯糸(よこいと)を強く打ち込み経糸で模様を織り出すことが特徴です。

博多献上といわれる献上帯が有名ですが、帯だけではなく着尺、袴地、ネクタイや小物類など、様々なものが作られています。

Q2. 職人になろうと思ったきっかけとこれまでの歩みを教えてください。

中学生のときに見た様々な伝統工芸を紹介するテレビ番組の影響で、将来は伝統工芸の職人になりたいという思いを持ち始めました。

ただ漠然とした夢であったため、その夢より現実的な国家公務員として働いていたのですが、地元福岡に博多織の手織り職人を育成する学校「博多織デベロップメントカレッジ」ができたということを聞き知りました。

その後何気なく目にした新聞や雑誌にその学校の記事が掲載されていたことで職人になりたいという思いが再び強くなっていき、仕事を辞めその学校に入学したのです。

学校を卒業した後に独立し、現在は自宅の工房で制作活動をしてます。

新海佳織さんの帯制作過程

Q3. 職人として一人前になるにはどういったことが必要ですか。

何事も、自分から学ぶ姿勢が必要だと思います。

特に博多織は、私がやっている手織りではなく機械織りが主流になってきているため、的確なアドバイスをくれる熟練した手織りの技術を持つ職人は数少なく、また高齢化してきています。

今のうちに多くを学び、自分の技術として身につけておくことが大事だと感じています。

Q4. お仕事の流れを教えてください。

自宅の工房で織る作業をするときは、朝9時から夕方の6時までを作業時間にしています。
これは織るときに大きな音がするため、近所迷惑にならない時間帯に織る作業をすることを心がけているためです。

事務作業、小物製作、デザインを書くなどの音が出ない作業は、夜にやることもあります。
この他、たて糸を準備する整経という作業をするときは別の場所を借りるため1週間ほど通うこともありますし、展示会の期間中などは展示会にかかりっきりになることもあります。

仕事のリズムとしてはルーティーンで動くことが理想ですが、臨機応変に動くことが多いです。

博多織職人、新海佳織さんの作品

帯地を使った小物

Q5. 職人の仕事でつらい点、良かったと思う点を教えてください。

好きな仕事をしているので、作品を制作することについてつらいと思うことはありません。
何事も楽しみながらやらないと、続けられない仕事だと思っています。

展示会などでお客様が私の作品を見ながら「これいいねぇ~」と話しているのを耳にすることがあります。
直接私に言ってくれるときも嬉しいのですが、制作者(私)が近くにいることを知らないお客様同士の会話の中にその言葉を聞くとお世辞ではなくお客様の本心を聞いたような気がして本当に嬉しくなります。

Q6. 情報発信で行っていることはありますか。

情報発信としては、主にホームページ、ブログを利用しています。
問い合わせやコメントなどがなくても、確実にホームページやブログで私を見知ってくれる人がいることを感じることがあるので、やはり何らかの情報発信は必要だと思います。

博多織職人、新海さんのホームページ

Q7. 今後の展望を教えてください。

現在は、自分で着物を着ることができない、手入れが面倒という理由などで和装を敬遠している人が多く、残念ながら和装産業はどんどん衰退しています。
私自身が頑張ることも大事ですが、まずは業界として日本の民族衣装の文化を守っていくことが大事だと感じています。

ただ若者の間では夏の浴衣が定番化しているようなので、そこから着物にも興味を持ってもらえるように願っています。

自分に何ができるのか、今は常にこの意識を持ちながら活動をしていますが、和装としての作品づくりだけではなく手織りの博多織を身近に感じてもらえるようにするためにはどうすればいいかを試行錯誤をしながら、常に前向きに進んでいきたいと考えています。

Q8. 最後に、職人を目指す人へメッセージをお願いします。

伝統産業は、正直厳しい現実を抱えるところも多いと思います。
技術を身につけることも大変ですが、続けていくことの方がもっと大変だというのを感じることもあります。

現代は黙々と作業をすれば収入を得られるという時代ではなく、積極的に自分から動かないと何も始まらないということばかりです。

ただ、続けていたからこそ得られる喜びや楽しみに出会えるのも事実です。
何となく職人になるというのではなく、何をやりたいのかという目標をしっかり持って職人を目指してもらいたいと思います。

紋八寸なごや帯「レンガ通り」

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