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「である」ことと「する」ことの内容解説|丸山真男の評論文|本文要約・テスト予想問題対策|高校現代文

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「である」ことと「する」ことは丸山真男さんが1961年に発表した評論文です。
高校現代文の教科書にも掲載される作品なので、テスト勉強で学習したという方も多いのではないでしょうか。

今回はそんな丸山真男さんの評論文「である」ことと「する」ことの内容解説と、テスト予想問題・対策などを紹介していきたいと思います。

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「である」ことと「する」こととは

「である」ことと「する」ことは1961年に刊行された日本の思想という書籍に収録されている評論文です。
作者の丸山真男さんは1914年に生まれ、1996年に亡くなるまで日本を代表する政治思想史学者として活躍し、また東大の教授も務めました。
「日本の思想」の他にも、「日本政治思想史研究」「現代政治の思想と行動」などの作品も有名です。

中でも今回ご紹介する「である」ことと「する」ことは高校国語・現代文の教科書にもよく収録される定番作品です。

「である」ことと「する」ことの内容

「である」ことと「する」ことは徳川時代から現代へと至る日本の近代化について、「である」こと「する」ことという図式を用いる事で問題点を分析し、対応について提言した作品です。

それではまず本文を段落ごとに整理していきましょう。

「である」ことと「する」ことの大意(本文要約)

近代社会の自由や権利は現実に行使する事で初めて守られるものである。
なので「権利の上に眠る者」は結果的に権利を失うことになる。

近代社会における制度は、「である」ことからどれだけ「する」ことへ移行しているかという見方によって民主化の度合いを測定する事が出来る。
徳川時代の社会は「である」価値の社会で、身分的な属性こそが決定的な役割をもっていた。
「である」論理から「する」論理への移行は、業績を本位とする社会への移行という事であるが、領域等によっても差異がある。
日本が近代化するにあたって起きた混乱は、「する」価値が猛烈に浸透する一方で、「である」価値が強靭に根を張って抵抗した事が原因だ。
本来は「する」ことの価値が浸透すべきところでそうならず、反対に必要のないところで効用と能率原理が進展してしまったりしている。

学問や芸術の創作活動では、それがもたらす結果よりもそのもの自体に価値があり、価値の蓄積が何より大切だ。
現代のような「政治化」の時代においては、内に蓄えられたものへの確信に支えられた発言や行動によって、「である」価値と「する」価値の倒錯を再転倒する道がひらかれるのである。

「である」ことと「する」ことの段落分け要約

【一段落目】

初め〜「やっかいなしろ物だといえましょう。」まで

○一段落目の内容要約
近代社会の自由や権利は現実に行使する事で初めて守られるものである。
なので「権利の上に眠る者」は結果的に権利を失うことになる。

【二段落目】

「自由人という言葉がしばしば…」〜「手がかりにもなるのではないでしょうか。」まで

○二段落目の内容要約
近代社会における制度は、”「である」こと”からどれだけ”「する」こと”へ移行しているかという見方をする事で、民主化の進展の速度や、制度と思考習慣とのギャップなどの事柄を測定する事が出来る。

【三段落目】

「次に、右のような…」〜「それに近づこうとする傾向があるのです。」まで

○三段落目の内容要約
徳川時代の社会は「である」価値の社会で、身分的な属性こそが決定的な役割を持っていた社会であった。
そこでは各人がそれぞれの身分や立場に満足し、それ以上望まない事が要求される。

【四段落目】

「徳川時代のような社会では…」〜「典型的なである社会だということを物語っております。」まで

○四段落目の内容要約
徳川時代の儒教道徳は典型的な「である」モラルであった為、いかに振舞うかという型が既に決まっているので、話し合いの時にも特別な手続きやルールを作らなくても問題なかった。

【五段落目】

「である論理からする論理への推移は…」〜「ヴァリエーションが生まれてくるわけです。」まで

○五段落目の内容要約
「である」論理から「する」論理へのへの移行は、業績を本位とする社会への移行という事であるが、領域による落差や、同じ領域での組織の論理と現場の人々のモラルの違いなど、様々なバリエーションが見られる。

【六段落目】

「世の中にむつかしきことを…」〜「ところに発しているわけなのです。」まで

○六段落目の内容要約
日本の急激な近代化によって起こった宿命的な混乱は、「する」価値が猛烈に浸透する一方、「である」価値が強靭に根を張り、「する」原理を建前とする組織が、「である」社会のモラルによって封じ込められたところに起こった。

【七段落目】

「厄介なのは、することの価値に…」〜「私に語っていたことがあります。」まで

○七段落目の内容要約
本来することの価値が浸透すべき所で浸透しておらず、必要ない所で効用と能率原理が急激に進展するといった事が起きている。

【八段落目】

「アンドレ・シーグフリードが…」〜「何より大事だからです。」まで

○八段落目の内容要約
学問や芸術の創作活動においては、そのもたらす結果よりもそれ自体に価値があり、価値の蓄積こそが大切な事である。

【九段落目】

「アンドレ・シーグフリードが…」〜「何より大事だからです。」まで

○九段落目の内容要約
現代のような政治化の時代においては、深く内に蓄えられたものへの確信に支えられた発言や行動によって、である価値とする価値の倒錯を再転倒する道がひらかれる。

「である」ことと「する」ことで抑えておきたいポイント


「である」ことと「する」ことで抑えておきたいポイントは、以下の通りです。

「権利の上に眠る者」について

”「である」ことと「する」こと”では、筆者が学生時代、「時効」についての説明を以下のように受けたという話で始まります。

「時効」という制度は被害者が損をする不人情な制度に思われるが、この規定の根拠には、権利の上に長く眠っている者は民法の保護に値しないという趣旨も含まれている

つまり時効とは、被害者が加害者に請求”する”という行為で時効を中断する事もせず、単に自分は債権者”である”という位置に安住していると、債権を喪失してしまうものなのです。

また別の例として、憲法第十二条が挙げられます。

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない

上記の憲法の文章を読み替えると、「国民は主権者である事に安住して、その権利の行使を怠っていると、ある朝目覚めてみると、もはや主権者でなくなっていたという事態が起こるぞ」という警告になっている、と述べられています。

つまり、時効の例でも憲法の例でも、「である」権利の上で安住して眠って「する」権利を失ってしまうのだという事が述べられています。

「徳川時代」と「現代」

”「である」ことと「する」こと”では、徳川時代と現代を比較して、それぞれ下記の様に分類しています。

【徳川時代】
・身分社会。つまり「である」社会。
・身分的な属性によって、振る舞い方が決まっていた。
・他人同士の集まりがあったとしても、特別な手続きやルールがなくても問題ない。=他人間のモラルは発達しない。

【現代】
・業績を本位とする社会。つまり「する」社会。
・何かをする目的で組織や結びつきがつくられる。
・領域による落差や、同じ領域での組織の論理と現場の人々のモラルの違いなど、様々なバリエーションが見られる。

倒錯

本来は「する」価値=つまり実用の基準は必要ないはずの芸術分野にまで、現代では「する価値」が浸透してしまっているという問題点が挙げられています。
学問や芸術の創作活動においては、そのもたらす結果よりもそれ自体に価値があり、価値の蓄積こそが大切な事なのです。

「である」ことと「する」ことで覚えておきたい単語

[民法(みんぽう)]
私人間の権利や義務の関係性をまとめた法律です。

[催促(さいそく)]
早く実行するように促す事。

[ネコババ]
拾ったものを自分のものにしてしまう事。悪いことをしたのに素知らぬ顔をしてごまかすこと。

[不人情(ふにんじょう)]
人情に欠けること。

[債権者(さいけんしゃ)]
金品を貸した際にそれを借りた人に返金要求ができる権利を持つ人。

[法理(ほうり)]
法律の原理。

[不断の努力(ふだんのどりょく)]
絶えることのない努力。

[偏見(へんけん)]
かたよった見方。

[内奥の(ないおうの)]
奥深いところの。

[先天的(せんてんてき)]
生まれつき備わっていること。

[儒教(じゅきょう)]
孔子を祖とする政治、道徳の教え。

「である」ことと「する」ことでよく出るテスト予想問題

丸山眞男の「である」ことと「する」ことは高校現代文の教科書にも掲載されているので、下記の様なテスト問題が出題されます。

○問題:第二段落:「制度の自己目的化」とはどのようなことか。
答え:本来は達成されるべき目的に向けての具体的な手段であるはずの制度が、その制度を守ること自体を目的としてしまうこと。

○問題:第三段落:徳川時代の人々の集まりで、「話し合いはおのずから軌道に乗る」のは何故か。
答え:お互いの身分や属性がわかっていれば、それぞれがふさわしい振る舞いや道徳に従うので、特別な手続きやルールは必要ないから。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は丸山眞男が書いた評論文である「である」ことと「する」ことの内容解説・予想テスト問題対策についてご紹介しました。
高校現代文の教科書にも掲載されるほど、日本を代表する名文の一つとされていますので、是非深く理解して作品を楽しんで下さいね。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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