【伝統を繋ぐ人々】奈良一刀彫/東田茂一さん

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【プロフィール】
NARADOLL HIGASHIDA
代表:東田茂一(ヒガシダモイチ)

1977年 天光・久の次男として生まれる
2000年から天光の師事を受け、2006年独立
2014年 「NARADOLL HIGASHIDA」を立ち上げる
2015年 度全国伝統的工芸品公募展 入選
2017年 あべのハルカス アートギャラリー 個展

【取り扱い店舗】
株式会社ayanas
奈良美術工芸舎 誠美堂
MA by So Shi Te
monova
EVERYTHING FROM.JP
あべのハルカス

Q1. 工芸品について教えてください。

NARADOLL HIGASHIDAは一刀彫本来の姿を目指しています。
奈良一刀彫は奈良の地に約900年続く工芸品です。
諸説ございますが、子供の玩具として発祥し、その後春日大社(ユネスコ世界遺産)の奉納物として大胆な面の入れ方が特徴となっていきました。

小手先の装飾で誤摩化さず、まやかしのない真実の姿を伝えるためとも言われています。
江戸時代には名工「森川杜園」によって繊細さを纏い芸術の域にまで高められ、権力の象徴、時代の憧れとして奈良に根付いていきました。

NARADOLL HIGASHIDAは、真実を伝える大胆さと、見る人に楽しんでもらう繊細さがひとつになった奈良一刀彫本来の姿を、今の生活に調和させ、より多くの人に楽しんで頂くことを目指したものづくりをしています。

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Q2. 職人になろうと思ったきっかけとこれまでの歩みを教えてください。

私は祖父、父と継いで三代目になります。
その事もあり一刀彫は凄く身近なもので職人が特殊な職業であるといったイメージは御座いませんでした。

だからかどうかは分かりませんが、現代とのギャップに素朴な疑問を感じていたのも事実で御座います。
しばらくは色んな事をフラフラしながら経験させていただきました。

20歳を過ぎた頃、ものづくりは好きだったので「ちょっとやってみよっかな」と、そのぐらいの軽い動機で父に弟子入り。
今振り返ると900年の歴史に土下座して廻りたい気持ちで御座います。

まず仕事として向き合うと、一刀彫のシンプルさ、デフォルメの世界、デザインの面白さに驚いたので御座います。
関西弁で言わせていただくと「ええやん」で御座います。

さらに職人として誇りを持っている父からは、職人と芸術家の違い、工芸品の意味、常に疑問を持つ事、その重要性を教わりました。
それらは全て現代にも通じる理念や魅力だと感じた次第で御座います。
二回目のええやんで御座います。

ただその魅力の発信については明らかに不足しているとも感じました。
私がそうであったように、そこにあって当たり前、もしくはある事にすら気付かない。
私は仕事として入り興味の入り口に立ちましたが、一般の方にもそういった興味の入り口に立って頂けて初めて魅力が伝わるのではと感じた次第で御座います。
これは一回目のあかんやんで御座います。

私が職人としてしっかり向かい合おうと思ったきっかけは、この二つのええやんと一つのあかんやんで御座います。

Q3. 一人前になるにはどういったことが必要だと思いますか。

一人前だとは一度たりとも思った事がないので申し訳御座いません。
ただ私のようなボンクラが心がけている事といえば、色んな事に興味を持つといった事でしょうか。

全てのモノ、人にスポットを当てればストーリーが御座います。脇役は御座いません。すべてがヒーロー、マドンナで御座います。
そんなストーリーに寄り添えるものづくりを目指したいと思っています。
そして偉そうな事言って格好よすぎて申し訳御座いません。

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Q4. お仕事の流れを教えてください。

まずNARADOLLでは神社仏閣で使う様な一級品の木材を仕入れいたします。
それを二〜三年倉庫で寝かします。完全に乾燥させる為で御座います。

それを各人形のサイズにバラします。木地取り作業と言います。
そこからノミを使い大胆な面の構成で彫り上げて、日本画の絵具、金箔、墨、等を使い繊細な彩色を施して完成で御座います。
この大胆と繊細が同居するのが奈良一刀彫の面白いところで御座います。

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本来の一刀彫はこの作業を一貫して職人が手作りで行います。
NARADOLLはその伝統を守って創作しております。ただその為、納期や在庫に限界が御座います。

お客様に待って頂く事も多く、この事が一番の悩みで御座います。
毎朝起きると私の手が四本になっていないかと期待しているのですが申し訳御座いません。

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Q5. 仕事でつらい点、良かったと思う点を教えてください。

つらい点でいえば私が持っている職人のイメージが一般的なイメージと少し違っていることで御座います。
良い点はいつでも夢を見れるということです。
これはいつでも寝れるといった意味では御座いません。
申し訳御座いません。

Q6. 情報発信で行っていることはありますか。

以前にフランスの見本市を見学させて頂いた事がありましたが、そこで感動したことが御座います。
各ブースの世界観、エンターテイメント性に驚きました。
パッケージのデザインはともすると上辺だけと懸念される可能性も御座いますが、私にはおもてなしの心と感じた次第で御座います。
善くも悪くもおもてなしは時代によって変わっていきますが、その変化を真摯にキャッチしにいく姿勢は少なくとも相手を無視してはおらず伝統の真髄を感じたので御座います。

伝統は作り手と使い手の相互関係で紡いでいくもの、と気付かされたので御座います。
間口は広く奥は覗けば深い、その様な発信を心がけたいと思っておりますが格好良すぎて申し訳御座いません。


NARADOLLのHP

Q7. 今後の展望を教えてください。

NARADOLLは節句人形を中心としたブランドを目指しております。
あるデータによりますと九割の方が節句人形をお使いになられます。

しかしその理由はポジティブな理由ばかりでは御座いません。
選択肢が少ない事、情報が少ない事、使い手さまにとって決して恵まれた状況とは言えません。
「大切な人を想う」これは素晴らしい伝統で御座います。

しかし前述したとおり伝統は作り手だけで守っていけるものでは御座いません。
大切なストーリーに寄り添う事を目指した一刀彫本来のものづくりをNARADOLLはしてまいります。

この事がきっかけで奈良一刀彫に興味を持って頂けたなら是非奈良にも遊びに来ていただけたら嬉しく思います。
奈良には他にも一刀彫作家も沢山おります。また他の工芸品、伝統・歴史の詰まった場所も御座います。

ハイテク技術が発展し合理化、便利化しています。
それ自体はワクワクするし 私は良い事だと思っています。なぜならかっこいいからです。申し訳御座いません。

ただどうしてもコピーできないものが御座います。人の気持ちです。
気持ちは他者とのやりとり、その行程で盛り上がる不条理で不便なもので御座います。

今だからできることが工芸品には御座います。
その魅力を発信する事も職人の大切な仕事で御座います。
未来は明るいです。
そして申し訳御座いません。

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Q8. 最後に、職人を目指す人へメッセージをお願いします。

職人といっても私は特別な仕事ととは思っておりません。
天然記念物でも御座いませんので守っていただけるものでも御座いません。
我々の問題は社会全体の問題でも御座いません。
消えてゆくものにも理由があるからです。

だからこそ魅力を発信し興味の入り口に立っていただけたなら、我々の問題が みんなの問題になるのかも知れません。
明らかに近年の「伝統工芸」の世界はそこをおろそかにしてきたと思います。
だからはっきり申しますとチャンスがいっぱいです。

なにも出来上がった世界に入る窮屈さだけでは御座いません。
フロンティア精神で飛びこんで来て下さい。
例えば若い方なら時代のサンプリング感覚、情報量、開けた視野、すべて武器で御座います。

時代の先人達もそうやって我々にバトンを繋いだので御座います。
時代を繋いだ職人達かっこ良すぎて申し訳御座いません。

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