日本庭園や清流にある苔むした岩、森の中にひっそりと広がる苔の絨毯。
苔のある風景は、どこかホッと心落ち着きませんか?
今回は苔について紹介します。
外国では苔を愛でる慣習があるのでしょうか。日本人と苔のかかわりを考えてみましょう。
1.苔が愛される理由
外国では苔を採集して研究するほかは、園芸用の培養土として使われます。
日本のように苔そのものを愛で、観賞する国は珍しいようです。
これはまず、日本が苔の生育に適した環境であることが大きいでしょう。
苔は水に恵まれ、湿潤な気候でよく育ちます。
世界には約18,000種の苔があり、日本国内ではそのうち約1,800種が確認されています。
日本人にとって、苔はごく身近な植物といえますね。
苔は和歌の題材にもなり、国歌『君が代』でも「苔のむすまで」とうたわれています。
『君が代』の歌詞は、『古今和歌集』に収録されている短歌の1つです。
もう1つ、苔は日本人の美意識と共鳴するものがあると考えられます。
たとえば海外の庭園には芝生が敷き詰められ、日本庭園には苔が使われています。
これは海外が「自然に手を入れたもの」に美を感じる一方、日本人は「自然そのまま」を観賞するからではないでしょうか。
だれも通らない道が苔むしていくように、苔は「古びたもの」「朽ちゆくもの」の象徴でもあります。
日本人は朽ち果てていくさまにも美を見出し、価値を感じる精神性や世界観をもっているといえます。
2.苔むす庭を見に行こう!
日本らしい景観の代表といえば、日本庭園や神社仏閣です。
これらの景観を作り上げている要素として苔が挙げられます。
いくつかおすすめのスポットを紹介します。
- 西芳寺(京都)
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「苔寺」の異名をもつ西芳寺は、異名のとおり寺全体が苔にすっぽりと覆われているようです。
庭園は上段が枯山水、下段は黄金池を中心とした2段構えの池泉回遊式庭園。
120種類の苔が密生し、見渡す限り深い緑が広がっています。
拝観は完全予約制ですが、予約しても見に行く価値があるスポットです。名称 西芳寺 住所 京都府京都市西京区松尾神ケ谷町56 - 箱根美術館(神奈川)
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約130種、日本で1番多くの苔を見られる場所として知られています。
茶室から見える苔庭や、敷地内を流れる清流沿いの苔は神々しいまでの美しさ。
秋は紅葉とのコントラストも見事です。名称 箱根美術館 住所 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300 - 妙法寺(神奈川)
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鎌倉にある日蓮ゆかりの妙法寺は、別名「鎌倉の苔寺」。
苔の石段が有名です。
木漏れ日に照らされる苔、小さな草花と苔の調和が素晴らしい風景を描きだします。
都心から日帰りで行ける気軽さも人気です。名称 妙法寺 住所 神奈川県鎌倉市山崎663 妙法寺
「苔庭」や「苔寺」は、京都を中心に数多くあります。
「苔」をキーワードに観光を楽しむのも一興です。
3.新しい楽しみ方「苔玉」
「苔玉」を知っていますか?
苔玉は植物の根を土でくるんで球状に整え、さらに表面を苔で覆ったものです。
盆栽よりもカジュアルで、スタイリッシュなインテリアとしても楽しめる点が人気です。
完成した苔玉が売られているほか、自分で作れるキットも。
また、趣味の1つとして苔玉教室も注目を集めています。
自分で作った苔玉は愛着もひとしおです。
苔玉は直射日光に当てず、風通しのよい明るい場所で育てます。
水やりは苔玉の表面に霧吹きで毎日与えます。2週間に1度くらいのペースで苔玉を水につけるとよいでしょう。
園芸店だけでなく、雑貨屋やインテリアショップでも苔玉を扱っています。
部屋で苔玉を育ててみませんか?
苔に「なぜか惹かれる」という人もいるでしょう。
よく注意してみると、道端や庭の片隅にも苔が生えているのに気づくはず。
身近にある苔を探すと楽しいですよ。
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