走れメロスは太宰治によって書かれた短編小説です。
ドラマやアニメにもなっており、幅広い世代に愛されている作品です。
中学の国語の教材文としても扱われていますね。
「メロスは激怒した」この1フレーズは誰しも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
今回はそんな走れメロスについて詳しく解説していきます。
1.走れメロスのあらすじ
走れメロスのあらすじを簡潔に解説していきます。
ちなみに走れメロスは青空文庫でも全文が掲載されています。
・メロス
村の牧人。父も母もなく妹と二人暮らし。
正義感の強い青年。
・セリヌンティウス
メロスの竹馬の友(親友)。町で石工をしている。
・ディオニス
町の王。人を信じる事のできない暴君。
<走れメロスのあらすじ>
村の牧人であるメロスは妹と二人で暮らしていた。
この妹が近々結婚するため、式の準備でシラクスの町に買い物に来たところ、メロスは町の様子がおかしい事に気付く。
2年前はにぎやかであった町がやけに寂しく町の人に聞くと、この町の王ディオニスが人を疑う心から次々と人を殺しているというのであった。
邪悪に対し人一倍敏感なメロスは、この話を聞いて激怒しディオニスを暗殺しようと短剣を持って王城に入るが、すぐ捕まってしまう。
ディオニスに対して「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ」と言い放ったメロスは、はりつけの刑に処される事になる。
メロスは村に戻り妹の結婚式を挙げるため処刑まで3日間の日限を与えて欲しいと頼む。
なかなか信じようとしないディオニスに、この町に住むメロスの無二の友人セリヌンティウスを人質として置いていくことを提案する。
ディオニスは、それを承諾し3日目の日没までに帰ってこなければセリヌンティウスを殺し、メロスの罪は永遠に許すと言う。
メロスはその夜、一睡もせずに急いで村に戻り妹の結婚式を挙げる。
妹と花婿に花向けの言葉を送り、次の日の朝、街を目指して出発した。
これから処刑される恐怖、故郷や妹への未練から立ち止まりそうになりながらも身代わりの友の為に走り続けるメロス。
途中、豪雨で氾濫した荒れ狂う川が立ちはだかり必死の思いで泳ぎ切り、3人の山賊が襲いかかってきたがたちまち殴り倒し、その後も一気に峠を駆け下りたメロスだったが、ついに疲労困憊で精神共にやられ動けなくなってしまう。
諦めかけたメロスであったが、友の信頼に応えるべく最後の死力を尽くしてまた走り始める。
何とか約束の日没までに間に合ったメロスは、セリヌンティウスに途中で諦めそうになったことを白状する。
セリヌンティウスもメロスが戻ってこないのではないかと疑ったことを告げ、二人は涙を流しながら抱き合った。
暴君ディオニスは、二人の友情に感銘を受け、心を改める。
メロスを無罪にし二人の仲間に入れてほしいと懇願したのであった。
2.ここが走れメロスのポイント
場面を整理
まずは、人物・時・場所・出来事に着目し、 場面ごとに分けて整理しましょう。
「走れメロス」は大きく6つの場面に分けられます。
②ディオニスに死刑を命じられメロスはセリヌンティウスを人質として差し出し処刑まで3日間の猶予を与えられる。
③メロスは村に戻り妹の結婚式を挙げさせる。
④メロスは町へと急いで走る。困難に見舞われ諦めそうになる。
⑤メロスは再び走り始め、何とか約束の日没に間に合う。セリヌンティウスとメロスの再会。
⑥ディオニスの改心。メロスは無罪となる。
走れメロスは、メロスが捕らえられてから戻るまでの4日間の物語となっています。
場所は、シラクスの町(王城)→村→シラクスの町(刑場)と展開していきます。
登場人物は、メロス・セリヌンティウス・ディオニスが中心ですが、物語を通して登場するのはメロスのみとなっています。
人物像の変化を捉える
走れメロスの中の描写や会話に着目し、人物像の変化を捉えていきましょう。
Q.メロスは最初どのような人物として描かれているか。
▷着目する走れメロスの中の描写・会話
・「のんき」
・「単純な男」
・「激怒した」
・「邪悪に対しては、人一倍に敏感で会った」
・「あきれた王だ。生かしておけぬ。」
普段はのんきだが、邪悪に対しては人一倍敏感で怒りを感じ、その怒りに身を任せて行動するような単純で正義感の強い人物。
Q.メロスの考え方や人物像は、村から刑場に向かう途中で変化している。どんな場面でどのように変化しているか?
▷着目する文章
大きく変化している部分は3カ所ある。
・「ああ、もういっそ、悪徳者として生き延びてやろうか。・・・・正義だの、信実だの、愛だの、考えてみればくだらない。」
正義感の強いメロスが「正義」や「愛」はくだらないと言って捨てようとしている。
・「歩ける、行こう。肉体の疲労回復とともに、僅かながら希望が生まれた。義務遂行の希望である。我が身を殺して名誉を守る希望である。
・「私は信頼に報いなければならぬ。今はただその一事だ。走れ!メロス。」
水を飲んだことで疲労回復しそれによって義務遂行の希望が芽生えた。
・信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題ではないのだ。人の命も問題ではないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ。
・メロスの頭は空っぽだ。何一つ考えていない。ただ訳のわからぬ大きな力に引きづられ走った。
メロスは「義務」や「名誉」、「信頼」、「正義」、「愛と誠」などのために走っていた。しかし、ここで「もっと恐ろしく大きいもののため」「訳のわからぬ大きな力に引きづられて」走っているという考え方の変化が読み取れる。
Q.王城内での、「メロス」と「王」の会話の場面を読み、「王」がどのような人物として描かれているかをまとめてみよう。
▷着目する会話文
・「疑うのが正当な心構えなのだと、教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。・・・信じてはならぬ。」
・「おまえなどには、わしの孤独の心がわからぬ。」
・「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
人間は私欲の塊だと信じず、疑う度に人を殺す残虐な人物。一方で現状に疲れ切り、孤独であり、心の底では平和を望んでもいる。複雑な性格も持ち主。
メロスとディオニスの人物像や考え方は物語の中で大きく変化します。
テストでもよく問われるのでしっかりおさえておきましょう。
3.走れメロスでテストによく出る問題
①.「この短刀で何をするつもりであったか。~メロスは悔しく、じだんだを踏んだ。ものも言いたくなかった。の部分を読んで次の問いに答えなさい。
⑴人を疑うという態度について、メロスと王はどう考えていますか。メロスは八字、王は六字で文章中から書き抜きなさい。
この問題では、メロスと王が対照的な考え方であることを踏まえておくと文章中から当てはまる部分を見つけやすいです。
答え:メロス=「最も恥ずべき悪徳」 王=「正当の心構え」
(2)メロスにとって、セリヌンティウスはどんな存在ですか。それがわかる五字の言葉を文章中から書き抜きなさい。
メロスが王に話している会話文から探します。
答え:無二の友人
②.ふと耳に、せんせん、水の流れる音が聞こえた。~ついてこい!フィロストラトス。」の部分を読んで次の問いに答えなさい。
(1)僅かながら希望が生まれた。とありますが、どんな希望ですか。文章中の言葉を使って、二十字以内で書きなさい。
僅かながら希望が生まれた。の直後の二文を一文にまとめると良いです。
答え:義務を遂行し、我が身を殺して名誉を守る希望。
(2)「その一事」とはどんなことを指しますか。
「その」という指示語に着目し、答えを直前から探します。
答え:信頼に報いなければならぬという一事。
(3)「悪魔のささやき」を聞いた理由をメロスはどう考えていますか。簡潔に答えなさい。
◎肉体の疲労回復とともに、僅かながら希望が生まれた。とあるようにメロスは疲労から悪魔のささやきが聞こえるほど精神を蝕まれていたことがわかります。
答え:五臓が疲れていたから。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は太宰治の短編小説「走れメロス」の内容解説とテスト問題と答えについてご紹介しました。
中学校の国語教科書にも掲載されている作品ですので、授業の予習、復習やテスト対策などの手助けになれば幸いです。