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日本民藝館で用の美を感じる〜柳宗悦と民芸〜

民芸
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伝統的工芸品は、日常の生活に用いる日用品であると同時に、目で楽しむ・使って楽しむ身近な美術品という一面もあります。
このような伝統的工芸品の美術的側面に焦点を当てた美術館として有名なのが、柳宗悦が開設した日本民藝館です。

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1.日本民藝館とは

日本民藝館は、主に工芸品を収蔵・展示する美術館であり、東京の駒場公園の隣にあります。
古くから親しまれてきた工芸品に焦点を当てていることもあって、建物自体も和風意匠を基調とした趣のある佇まいです。

1936年に竣工された旧館と道路に面した石塀は国の有形文化財に登録されています。
日本民藝館には、織物、陶磁器から郷土玩具までと国内外17,000点の工芸品が収蔵されていますが、そのほとんどは、創設者である柳宗悦の美意識にもとづいて蒐集されたものです。

工芸品を蒐集対象としている美術館は他にもありますが、日本民藝館は茶道具・名物といった美術工芸品だけではなく、日常の生活の中で使う工芸品を主な蒐集対象としているという点が際立っています。

そもそも、今では一般的に使われる「民芸」という言葉も柳宗悦が中心となった民芸運動の中から生まれた造語とも言われています。
民芸という言葉には、民衆的工芸、庶民の日常的な暮らしの中から生まれた工芸品という思いが含まれています。

2.柳宗悦が唱えた「用の美」

日本民藝館創設者の柳宗悦(1889-1961)は、日本を代表する思想家の一人であり、1910年の「白樺」創刊にもかかわっています。
柳は、1916年の朝鮮訪問時に目にした朝鮮陶磁器の美しさに魅了されたことをきっかけに、日鑑賞用に特化した美術工芸品から失われてしまったものが日々の暮らしで使われる日用品としての工芸品に残っていると考えました。これは、暮らしの中で使われることを考えて作られ、使われることによって輝く、「用の美」という思想につながっていきます。

柳はこのような美を持つ各地の工芸品を民衆的工芸・民芸と位置付け、広く紹介していくための民芸運動を展開し、日本各地に埋もれた工芸品に光を当てていきます。そして、この過程で蒐集した工芸品を一般公開する場として、日本民藝館を設立したのです。

3.用の美を楽しむ

民芸

濱田庄司記念館の写真。柳宗悦とも親交が深く、民藝館の第2代館長となった。


柳が唱えた「用の美」という思想は、伝統的工芸品が時を超えて人々に愛される理由と相通じるものがあります。伝統的工芸品は、その土地に暮らす人々の創意工夫によって生まれた日用品であり、日々の暮らしの中に当たり前のように存在してきたものです。このため、ガラスケースの中に入れられた美術工芸とは違って、使われること・身につけることを前提にした美しさがそこにはあるのです。

日本民藝館の中には、全国各地から集められた新作工芸品を販売するミュージアムショップがあります。ここに並べられている工芸品は、創設者である柳の思想を受け継ぎ、日々の暮らしで使えるものというコンセプトの下に選定されています。伝統的工芸品を生活の中で楽しむ、「用の美」を暮らしに取り入れていきたい方におすすめのスポットとなっています。

4.創設80周年特別展にも注目

今年は、日本民芸館の創設80周年を記念して、様々な特別展が開催されています。
8月21日までは「沖縄の工芸」、9月1日からは創設者である柳にスポットライトを当てた「柳宗悦・蒐集の軌跡」が開催されます。
日本の民芸、現在の伝統的工芸品が評価されるきっかけを作った思想家・柳の軌跡について、その豊富なコレクションとともに振り返ってみるのも楽しいでしょう。

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