青森の夏といえば「ねぶた祭」。毎年8月2日から7日にかけて行われ、300万人の人出を誇ります。
曳き回される巨大燈籠ににぎやかな音楽、「ラッセラー」の威勢のよいかけ声。
津軽人でなくとも胸をかきたてられるこの勇壮な祭りはいったいいつから始まったのでしょうか。
1.ねぶた祭りの歴史
ねぶた祭は、奈良時代に中国から伝わった七夕祭りや、昔からの精霊流しなどの習俗が変化したものといわれています。
七夕祭りでは健康や秋の豊穣を祈って燈籠とともに穢れ(けがれ)を川や海に流していました。
やがて、紙や竹、ロウソクの普及で16世紀頃から巨大な行燈が作られ始め、京都の祇園祭の山車をまねて担ぐスタイルへと発展しました。
18世紀には踊りが付いていたという記録もあります。
「ねぶた」の語源は、夏の農作業を妨げる睡魔を払う「眠り流し(ねぶりながし)」という農民行事が由来という説や、アイヌ語で不思議という意味の「ネプターン」が由来という説などさまざま。
県内の地域によってねぶた、ねぷた、ねむたなど異なる呼び方をされています。
2.ねぶたの燈籠について
ねぶたの主役といえばやはり巨大な燈籠の山車「ねぶた」ですよね。
- ねぶたの大きさ
- 人形(ひとがた)や大型のねぶたが作られるようになったのは江戸時代後期のこと。
現在の大きさは高さ5m、幅9m、奥行き7mが基準ですが、昔はもっと大きく、明治初期の最大時は高さ約20で100人で担ぎ、はるか4キロ先からも見えたといいます。
その後祭りの禁止令や電線の導入で大きさが制限されたと言われています。 - ねぶたができるまで
- ねぶたが作られ始めるのは桜の頃。1台ごとに専用の小屋を設置し、毎年新しいものを総勢40人くらいで作ります。
ねぶたは巨大なハリボテで、まずは紙に設計をし、顔や手などパーツごとに針金や糸であらかじめ準備しておきます。
角材で支柱を作り、パーツを組み立て、紙が貼れるように形作ります。電球や蛍光灯を取り付け、骨組みに紙を貼ります。
その後墨で顔や手足、着物の柄を書き、色止めにロウを施して染色したら完成。
高さ2mの台に40~50人がかりで取り付けると5mくらいの山車になるのです。
ねぶた師たちの苦労が報われる瞬間です。
3.ねぶたとねぷたの違いとは?
実はねぶた祭りは青森県内の40を超える地域で行われ、その訛りによって呼び方が異なります。
ねぶたで有名な「青森ねぶた」、ねぷたで有名な「弘前ねぷた」。
両者の違いを細かくみてみましょう。
青森ねぶた祭 (青森県青森市) | 弘前ねぶた(青森県弘前市) | |
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日程 | 8月2~7日 | 8月1日~7日 |
ねぶたの種類 | 立体の人形型が主流、20台程度 | 扇型が主流、県内最多の約80台 |
大きさ | 高さは4~5mで横広 | 大型は10m弱 |
デザイン | 神話や歴史のほか映画にも着想を得ている | 正面は勇猛な武者絵、背面は美人画燈籠の上に扇や杏葉牡丹を飾る |
背景 | 勝利の喜びを表す凱旋ねぶた | 戦いに出向く出陣ねぶた |
かけ声 | ラッセラー、ラッセラー | ヤーヤードー、ねーぷたーのもどりこ、ヤーレヤレヤーレヤー |
踊り手 | ハネト(跳人)、バケト(化人) | 決まった踊りはない |
雰囲気 | にぎやかで豪壮 | 落ち着いて情緒がある |
見どころ | 華やかな衣装で踊り歩くハネト 最終日にはねぶたの海上運行と花火が見られる |
じょっぱり、ごうじょっぱり大太鼓 幼い子が参加する金魚ねぷた フィナーレではねぷたを焼く |
どちらのお祭りでも広い交差点などでは巨大な山車がぐるりと回転し、観客に見得を切るさまは圧巻です。
4.ねぶた祭りに参加するには?
ねぶた祭りには一般の人も参加ができます。
- 青森ねぶた祭り
- 浴衣をからげ、花笠と手拭いで顔を隠し、鈴をシャンシャン鳴らすハネトは青森ねぶたの花。
正式な衣装を着ていればハネトとしてお祭に参加できます。衣装は近くの商店街などで、一式4000円程度でレンタルできるほか、デパートなどで購入できます。*申し込みの締切日などは各団体に問い合わせてみてください
青森ねぶた祭 オフィシャルサイト https://www.nebuta.jp/ - 弘前ねぷたまつり
- ねぷた曳き:曳き手を募集している愛好会に連絡をとります。
弘前観光コンベンション協会
https://www.hirosaki-kanko.or.jp/web/index.html
叩き手:テストに受かれば大太鼓の叩き手となることも可能です。
津軽情っ張り大太鼓保存後援会事務局
5.じょっぱり魂が祭りを守る
ねぶた祭り1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。
青森の人々は昔からの伝統を受け継ぎ、津軽のじょっぱり魂で祭りを守ってきました。
冬の長い雪国青森で、短い夏の夜にひととき魂を焦がす。
今年も北国でどこよりも熱い祭りが繰り広げられます。
※「じょっぱり」とは青森・岩手の方言で強情っぱりのこと
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