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山椒魚の内容解説|井伏鱒二の短編小説あらすじ・全文・テスト問題|高校現代文

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山椒魚(さんしょううお)は井伏鱒二による短編小説です。
高校現代文の教科書にも掲載されるくらい、有名な作品となっています。

今回はそんな井伏鱒二の「山椒魚」の簡単な内容解説と、テスト問題・対策についてご紹介したいと思います。

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「山椒魚」とは?

「山椒魚」は作家の井伏鱒二(いぶせますじ)によって1929年同人雑誌に初出された短編小説です。

元は「幽閉」という題名でしたが、後に「山椒魚」に改題されました。
人間の持つ孤独や傲慢さと、自身の屈折した思いを生き物達を通してユーモラスに描いた作品です。

【山椒魚のあらすじ】
渓流の岩屋の中で暮らしていた山椒魚。
しかし成長しすぎて頭が岩屋の出口につかえて、外に出られなくなってしまった。
最初は外を眺めてメダカ達の不自由さを嘲笑うなどしていたが、次第に自分の境遇に狼狽し、落ち込んでいく。
そんな時に岩屋に1匹のカエルが紛れ込む。
山椒魚は出口を塞ぎカエルを閉じ込めたあと、1年間も口論をする。
さらに1年後の今、山椒魚もカエルも黙り込み、息をひそめあっている。

山椒魚の原文

井伏鱒二の「山椒魚」の著作権はまだ切れていないので、青空文庫などでも読む事は出来ません。

なのでこの記事では、引用の範囲内でご紹介したいと思います。
全文を読みたい方は、下記の書籍で読む事が出来ます。

山椒魚は悲しんだ。
彼は彼のすみかである岩屋から外へ出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることができなかったのである。
今はもはや、彼に取っては永遠の棲家である岩屋は、出入口のところがそんなに狭かった。
そして、ほの暗かった。
強いて出て行こうとこころみると、彼の頭は出入口を塞ぐコロップの栓となるにすぎなくて、それはまる二年の間に彼の体が発育した証拠にこそはなったが、彼を狼狽させ且つ悲しませるには十分であったのだ。
「何たる失策であることか!」

気づかないうちに体が成長し、外に出たくても出られなくなってしまった山椒魚。
その岩屋の中で動こうにも、体を前後左右に動かせるくらいの空間しかありませんでした。

ほの暗い場所から明るい場所をのぞき見することは、これは興味深い事ではないか。
そして小さな窓からのぞき見するときほど、常に多くの物を見ることはできないのである。

山椒魚は、岩屋の中から外の景色を眺めていました。
そして群れで泳ぐことしか出来ないメダカをみて、嘲笑します。

「なんという不自由千万な奴らであろう!」

ある夜、1匹の小エビが岩屋へ紛れ込みます。
産卵期で卵をいっぱい抱えてやってきたエビは、山椒魚の横っ腹にすがりつきました。
振り向いてエビが何をしているか見てみたい山椒魚でしたが、自分が動けばエビは逃げてしまうと思い、我慢します。

そしてしばらく動きのないエビ。
山椒魚のことを岩だと思って卵を生みつけているのか、それとも物思いにふけっているのか。

「くったくしたり物思いに耽ったりするやつは、バカだよ」

そんな言葉を山椒魚はエビに対して得意げに言いました。
そして山椒魚も、どうしても岩屋の外に出なければならないと決心します。
自分こそ、考えてばかりで行動していない事に気づいたのです。

思い切って出口に突進してみますが、やはり頭がつかえて出ることが出来ません。

山椒魚は涙を流し、自身の境遇を神様に訴えました。

そんな時に岩屋の外で、勢いよく動き回るカエルがいました。
山椒魚はそのカエルを感動の瞳で眺めますが、むしろ目を背けた方が良い事に気がつき、目を閉じます。

活発なカエルに対して、自分は岩屋から出ることが出来ない。
自分が悲しく、ブリキの切屑にも思えてきました。

しかしふと、目を閉じればそこに際限のない暗闇が広がる事に気づいたのです。
とはいえ、現実は岩屋のまま。
山椒魚は悲嘆にくれました。

ある日、カエルが岩屋にまぎれこんで来ました。
山椒魚は出口を塞ぎ、カエルを閉じ込めます。

カエルは慌てふためきます。

山椒魚は相手の動物を、自分と同じ状態に置くことのできるのが痛快であったのだ。
「一生涯ここに閉じ込めてやる!」

カエルは岩屋の凹みに入り、山椒魚との口論が始まりました。
それは一年もの間続き、さらに一年が経つと、お互いに黙り続けてしまいました。

お互いに自分の嘆息が相手に聞こえない様に注意していましたが、ある時カエルの嘆息が山椒魚に聞こえてしまいます。

山椒魚がこれを聞きのがす通りはなかった。
彼は上の方を見上げ、かつ友情を瞳にこめてたずねた。
「お前は、さっき大きな息をしたろう?」
相手は自分を鞭撻して答えた。
「それがどうした?」
「そんな返辞をするな。もう、そこから降りて来てもよろしい」
「空腹で動けない」
「それでは、もう駄目なようか?」
相手は答えた。
「もう駄目なようだ」
よほど暫くしてから山椒魚はたずねた。
「お前は今どういうことを考えているようなのだろうか?」
相手は極めて遠慮がちに答えた。
「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」

「山椒魚」で覚えておきたい単語

[狼狽(ろうばい)]
慌てふためくこと。

[嘆息(たんそく)]
嘆き、ため息をつくこと。

[了見(りょうけん)]
考え。こらえること。

[遁走(とんそう)]
逃げ走ること。

「山椒魚」でよく出るテスト問題

井伏鱒二の「山椒魚」は高校現代文の教科書にも掲載されているので、下記の様なテスト問題が出題されます。

○問題:山椒魚が、外の世界の活発なカエルからむしろ目を背けた方が良いと思ったのは何故か。
答え:自由の無い自分が、外の活発さ・自由さを見るとみじめな気持ちになるから。

○問題:この小説の寓意をそれぞれ答えよ。
答え:山椒魚=知識や知性ばかりで行動が伴わない作者自身や、知識人。
メダカ=自分の意思がなく、流されて生きるだけの一般大衆。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は井伏鱒二が書いた短編小説である「山椒魚(さんしょううお)」の原文と解説・テスト対策についてご紹介しました。
高校現代文の教科書にも掲載されるほど、日本を代表する名文の一つとされていますので、是非深く理解して作品を楽しんで下さいね。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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