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鼻のあらすじ・解説|芥川龍之介「鼻」テスト問題と答え

原稿用紙の画像|四季の美
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「鼻」は芥川龍之介による短編の歴史小説です。
『今昔物語集』の「池尾禅珍内供鼻語」および『宇治拾遺物語』の「鼻長き僧の事」を題材としています。

芥川龍之介らが創刊した『新思潮』の創刊号で発表され、夏目漱石に絶賛され才能を認められることとなりました。
今回はそんな鼻について詳しく解説していきます。

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1.鼻のあらすじ

それでは芥川龍之介「鼻」のあらすじを簡潔に解説していきます。
なお、鼻の全文は青空文庫でも読むことが出来ます。

[鼻の主な登場人物]
・禅智内供

禅智内供は五十を超えた高僧で宮中で僧を修行させ、天皇の健康などを祈る読経をさせている。
顎の下まで垂れ下がった五・六寸(十五センチ)ほどの鼻の長さを気にしている。

禅智内供の鼻は池の尾では知らない者はいないくらい特徴的であった。
長さは五・六寸あって上唇の上から顎の下まで下がっている。
形は元も先も太い。
禅師内供は気にしていないように振る舞っていたが、内心ではこの鼻のことで心を悩ませていた。

内供が鼻について悩んでいた理由は二つあった。
一つは実際的に鼻が長いと不便だからだ。食事をするにも一人では食べることができず、弟子に板で鼻を持ち上げてもらっていた。
しかし主な理由はこの鼻によって自尊心を傷つけられたことにある。

池の尾の町の者は、こういう鼻をしている内供の妻になる者は誰もいないだろうから俗(出家していない一般人)でないことを幸せだと言った。
また、あの鼻だから出家したのだろうと批判する者さえあった。

自尊心を傷つけられた内供は長い鼻を短く見せるために様々な方法を試した。
烏瓜を煎じて飲んだり鼠の尿を鼻へ塗ってみたりしたが効果は見られない。

ある年の秋、弟子の僧が長い鼻を短くする方法を教わってきた。
その法というのは、ただ鼻を湯で茹でてその鼻を人に踏ませるという極めて簡単なものであった。

試してみると鼻から粟粒のようなものが出てきて、それを毛抜きで抜くと驚いた事に鼻は短くなっていた。内供は鏡で自分の鼻を見て「もう自分を笑う者は誰もいない」ととても満足した。

しかし、周囲の者は鼻が長かった頃よりも一層、内供を嘲るようになる。
自分の鼻が小さくなったからに違いないと思った内供は人々の意地の悪さに腹が立ったが、しまいには小さくなった自分の鼻を恨めしく思うようになった。

するとある夜、内供は鼻がむず痒くて眠れなくなる。
次の日の朝起きてみると、何か懐かしい感覚が戻ってきてふと鼻を触ってみる。
すると、鼻がもとの長さに戻っているのであった。
内供は鼻が短くなった時と同じような晴れ晴れとした気持ちが戻ってくるのを感じ、こうなればもう誰も自分を笑う者はいないに違いないと心の中で囁くのであった。

2.ここが鼻のポイント

鼻で作者が伝えたかった事(主題)は何か考えましょう。

○なぜ短くなった鼻を人々は笑ったのか?

鼻が長くて笑われていた内供でしたが、鼻を短くする事ができても笑われてしまいます。
それどころか、長い時よりも笑われてしまいます。
なぜでしょうか?

▷着目する文章

鼻の長かった昔とは、笑うのにどことなく容子がちがう。
見慣れた長い鼻より、見慣れない短い鼻の方が滑稽に見えると言えば、それまでである。
が、そこにはまだ何かあるらしい。

→見慣れない鼻が面白くて笑っているだけではないことがわかります。

人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。
勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。
ところがその人がその不幸を、どうにか切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。
少し誇張して言えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気にさえなる。
そうしていつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる。

→人は誰でも他人の不幸に同情するものだが、人がその不幸を乗り越えると何となく物足りないものを感じてもう一度同じ不幸に陥れてみたくなる。
人々は鼻が短くなり喜んでいる内供を見て、おもしろくない気持ちになり馬鹿にするように笑ったのだということがわかります。

○なぜ、内供は鼻が元に戻ってしまったのに晴れ晴れとした気持ちになったのか?

▷着目する文章

ーーこうなれば、もう誰も晒うものはないにちがいない。

→この一文から内供は周囲の反応を特に気にしていることがわかります。
傍観者の利己的な考えに気づいた内供は不快に感じていましたが、鼻が元に戻り、周囲の者から笑われたり馬鹿にされたりする事はなくなるだろうと思い、悩みから解放されたから晴れ晴れとした気持ちになっています。

CHECK
[鼻で作者が伝えたかったこと(主題)]
周囲の利己的な反応を気にしていたら悩みから解放されることはない。
本当に大切なことは周囲の目を気にすることではなく、自分の心の持ちようである。

3.鼻でテストによく出る問題

問題① 次の傍線部の漢字を訓で読んでみましょう。
1.煩雑
2.凝視
3.沸騰
4.浸透
5.蒸発
6.傍観
7.恭順

答え:
1.わずら(う)
2.こ(る)
3.わ(く)
4.ひた(す)
5.む(す)
6.かたわ(ら)
7.うやうや(しい)


問題② 「内供のそういう策略をとる気持ち」とはどういう心持ちでしょうか。

答え:
本当は、鼻を短くするために法を試したいと思っているが鼻を気にしていることを悟られたくないため、乗り気ではない様子をよそおい弟子たちに自分を説得させてその方法を試すように事を運ぼうという気持ち。


問題③ 「愛すべき内供」と言っているのはなぜでしょうか。

答え:
誦経の最中にも、鼻の事を考えては思い悩んでいるということから、高位の僧であるにもかかわらず、内供は煩悩で一杯であることがわかる。
作者な人間らしい内供に対して現代人との共通点を見出し、「高位の僧であるとはいえ、未熟であってもいいではないか」という気持ちを込めて「愛すべき」と言っている。


問題④ 「この傍観者の利己主義」とはどういうことでしょうか。

答え:
当事者でない人は、不幸な人に対しては同情を寄せるが、その人がいったん不幸を脱すると今度は敵意を抱くようになること。


問題⑤ 「はればれした心持ち」とはどういう心持ちでしょうか。

答え:
鼻が短いことに対して、周囲の者に笑われたり馬鹿にされたりすることはもうないだろうと思い、悩みから解放されて喜ぶ気持ち。

4.芥川龍之介「鼻」のまとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は芥川龍之介の鼻の内容解説とテスト問題と答えについてご紹介しました。

歴史文学を題材とした作品ですが、人間のエゴイズムや繊細さなど現代人の心との共通点を見出し描かれているところも面白いですね。
高校の現代文の教科書にも扱われいる作品ですので、学習に役立てていただけると幸いです。

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