近頃、植物のツルなどで作る“かごバッグ”がブームとなっています。
その独特な風合いは他になく、一つとして同じものがないというのも魅力ですよね。
そこで今回は、日本のかごバッグの魅力をご紹介します。
1.豊岡杞柳細工
兵庫県の豊岡市で主に生産されている伝統的工芸品、豊岡杞柳細工(とよおかきりゅうざいく)。
現在でもモダンな製品作りが行われる豊岡杞柳細工の魅力をご紹介します。
豊岡杞柳細工の歴史と成り立ち
豊岡市はカバンの街として有名で、現在でも100を超えるメーカーが点在しています。
その中で豊岡杞柳細工の職人は20人程です。
豊岡杞柳細工の歴史は古く、少なくとも8世紀頃には生産が始まっていました。
近くの円山川の川辺で杞柳細工の原料のコリヤナギが採れることから、杞柳細工作りが発展してきました。
16世紀には豊岡藩の保護のもと、生産を拡大して知名度も上昇したのです。
豊岡杞柳細工は原料の性質によって虫がつきにくく、長く使うことが出来ます。
組み方にも様々な技法があり、それによって多種多様な製品が作られます。
2.奥会津編み組細工
奥会津編み組細工とは福島県(大沼郡三島町)で主に生産される伝統的工芸品です。
野趣あふれる魅力がつまった奥会津編み組細工の魅力をご紹介します。
奥会津編み組細工は18世紀頃から生産が始まったとされています。
しかし最近、新たな発掘があり、約2,400年程前の編み組細工が出土したのです。
古くから人々は編み組細工に関わっていたという事が判明しました。
奥会津編み組細工はまた、雪深く、人里離れた奥会津の地で冬季の間の仕事としても発展してきました。
現在は、点在する集落に暮らす1,700人程のうち、170人程が編み組細工作りに関わっています。
ふるさと会津工人まつり
奥会津編み組細工の産地、三島町で毎年6月に開催されている、「ふるさと会津工人まつり」。
年々来場者が増え続け、現在では2日間で2万人もの人が訪れ、1,000点もの編み組細工が売れる人気イベントとなっています。
その理由の一つは、奥会津編み組細工にあります。
人気工芸品である奥会津編み組細工を買うことが出来る場所は、このお祭りの機会を除くと、町にある三島町生活工芸館で買うしかないのです。
奥会津編み組細工の原料は、蔓性の植物です。
その為、固くねじれてしまっている原料を、まっすぐに伸ばす作業が必要になります。
現在はプレス機を用いて伸ばす事が多いです。
伸ばした原料を編み込み、最後に火で軽くあぶることで毛羽をとり、完成となります。
奥会津編み組細工の特徴
奥会津編み組細工は主にヒロロ細工、山ブドウ細工、マタタビ細工に分類されます。
この中でも特に最近人気になっているのは、山ブドウ細工です。
山ブドウの樹皮は収穫出来る期間が短く貴重で、その作品の中には数十万円という値がつくものもあります。
産地情報
名称 | 奥会津三島編組品振興協議会 |
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住所 | 〒969-7402 福島県大沼郡三島町大字名入字諏訪ノ上395番地 三島町生活工芸館内 |
3.あけび蔓細工
素朴な風合い。
いかにも頑丈そうなたたずまい。
すべて手作業で作られるあけび蔓細工は、雪深い地域の知恵とぬくもりがつまった伝統工芸品です。
あけび蔓細工の歴史と産地
あけび蔓細工が広く作られるようになったのは江戸時代後半から。
しかし、始まりは縄文時代と言われるほど古い歴史があります。
産地としては青森県の津軽地方、秋田県の美郷町、山形県の月山など東北地方のほか、長野県の野沢温泉村が有名です。
雪深いこれらの地域では、冬の農閑期に、あけびの蔓で細工品を作っていました。
元々は農作業や食料品を収納する暮らしの道具でしたが、その美しさが訪れた人の間で評判となり、昭和30年代から50年代には、デパートや民芸品店でこぞって買い求められるになりました。
しかし、ビニールやプラスチック製品が世に出回ると衰退を余儀なくされ、伝統を受け継いだ工房や編み手は今では貴重な存在となっています。
あけび蔓の特徴とは?
あけびは山育ちの方ならなじみ深い植物ではないでしょうか。
日本には古くから自生し、秋には紫色の卵型の果実を実らせます。
あけびの蔓は樹木にもからみつきますが、地面に這うようにまっすぐ長く伸びたものが細工品の材料として使われます。
種類としては、葉が3枚のミツバアケビが最も適していると言われています。
春に生え始めた蔓は、夏の暑さや晩秋の霜を乗り越えてしなやかに強くなります。
地域によって9月頃から、遅くても11月の雪が降り始める前に採集されます。
採集されてから細工品になるまで
山から採集された蔓はどのような工程を経て美しい加工品になるのでしょう?
順を追って見ていきましょう。
- 蔓を一冬以上乾燥させる
- 色や太さごとに選別する
- 水や熱湯に浸し、柔らかくする
- 柔らかくなったら編み始める
なかには3年以上乾燥させる工房も。よく乾かさないとカビが生えてしまいます。
この際、小刀や包丁、節取器で節を取り除き滑らかにする作業も行います。
温泉や川の流水を利用することもあります。水の場合は取り替えながら数日浸します。
カゴの場合は木型を使い、底の部分から胴、上部の縁へと進み、持ち手をつけ、端をきれいに整えて完成です。
とはいえ、蔓の太さや特徴によって縦糸にするか横糸にするか見極め、手ざわりがなめらかになるように編むには熟練の技が必要です。
さまざまな編み方と細工品
編み方によってさまざまな種類の細工品が作られます。
- ざる編み
- かごを編むときの定番の編み方で、縦の蔓は一定間隔に、横の蔓はぎっしりと詰めます。
編み目が隙間なく詰まっているため、強度が高いのが特徴。ゴザ目編みとも呼ばれます。 - こだし編み
- 縦の蔓も横の蔓も一定の間隔を開けるため、中が透けて見え、透かし編みとも呼ばれます。
編みながら横の高さを確認し、ずれを修正しながら進めるため大変手間がかかります。 - 網代編み
- 平たい蔓を一本、または細い蔓を数本組み合わせ、隙間なく縦横交互に編む方法です。
目をずらしながら編むので横の蔓の編み目が斜めに移動していきます。根気のいる難しい編み方です。
ほかにも、波編み、みだれ編み、菊底編みなど30種類以上もあり、製品によっては数種類を組み合わせることも。
職人さんの技と工夫で、手提げかごのほか、花かご、果物かご、バスケット、トレー、スリッパ、おもちゃなど細工品もさまざまです。
製品は産地の工房や道の駅のほか、オンラインショップでも手に入れることができます。
オーダーメイドで編み方を指定できるお店もありますよ。
和のテイストはもちろん、洋服やモダンなインテリアとも相性抜群。
人気の製品は納品まで一年かかることもあるのだとか。
使うほどになじむ、育つ
あけび蔓細工は使えば使うほどなめらかさと艶が出ます。
耐久性にすぐれ、大切にお手入れをすれば何十年ももち、その分愛着も増すことでしょう。
親から子へ、そして孫へと受け継がれ、役目を終えるとまた土に帰る、自然にもやさしいアイテムです。
藪をかき分け、山で蔓を採集するのは危険な重労働。
細工も力が必要で、編み手は指が痛くなると言います。
あけび蔓細工は職人さんたちの多大な時間と手間のうえに成り立っているのです。
古来より受け継がれてきた美しい蔓細工。
私たちの代で途絶えることのないようにしたいものですね。
4.竹細工も魅力的
竹細工とは竹を加工したり、竹ひごを編み込んで作られる細工物のこと。
よく知られているいる物に籠や笊、箸、茶道具、熊手や竹ぼうき、照明や置物などのインテリア、また竹とんぼや水鉄砲といった昔ながらの玩具もあります。
材料として使われるのはマダケが一番多いとされ、
- 伐採したままの青竹
- 火であぶったり苛性ソーダで煮沸し、油抜きをした晒し竹
- 囲炉裏や竈の煙で燻された煤竹
- 炭化させた炭化竹
- 伐採後、数か月~数年間自然に枯らしておいた竹
など、同じ種類の竹でもその用途によって使い分けられています。
4-1.勝山竹細工
勝山の竹細工の技術が確立されたのは1860年頃と言われています。
しかしその殆どが実用品ばかりであったため、当時の物が残っておらず、その起源がはっきりしていません。
古文書等の記載から、江戸時代の末期頃にはこの地域の竹細工が流通していたと想定されます。
勝山の竹製品は丈夫で使い勝手が良いことから、穀物類の運搬や計量に用いられ、農家にとっての必需品でした。
近年は農具だけではなく、花籠やパン籠、盛り籠等も作られています。
勝山の竹細工は表皮の青い部分と内側の黄色い部分を薄く2枚に削いで使います。
竹ひごはこの2色になるため、これで編むと美しい柄が出来上がります。
青い部分は時間が経つと飴色に変化するので、それもまた風情があって良いと言われています。
4-2.別府竹細工
別府で竹工芸品が本格的に作られるようになったのは室町時代。
行商用の籠が生産・販売されるようになり、取引のための市場が整備されたと言われています。
更に江戸時代になると別府温泉が有名になり、その湯治客が滞在中に自炊するための飯籠や笊などの竹製品が販売されました。
別府温泉の人気と共に竹細工の需要も高まり、別府の土産品としても定着。本格的な地場産業として発展しました。
別府竹細工には「四つ目編み」「六つ目編み」「八つ目編み」「網代編み」「ござ目編み」「松葉編み」「菊底編み」「輪弧編み」の技法があり、これらの編み方を組み合わせることによって200種類以上の編み方が可能になると言われています。
別府竹細工を知りたい、見たい、体験してみたい!
JR別府駅から車で10分の所に「別府市竹細工伝統産業会館」という施設があります。
竹細工の歴史や技法、生活との関わりなどを常設展示しているほか、名工と呼ばれる方々の優れた技法による作品、実際に竹細工で使われる道具の数々も見ることが出来ます。
また次のような体験学習も行なっています。
- 竹鈴
-
カラフルな5本のひごを竹鈴に通して作り上げる
小中学生以上が対象
費用は400円
所要時間は30分程度 - 四海波(しかいなみ)
-
ひごを丸く編み込んでいく作業で小物入れを作る
中学生以上が対象
費用は1,000円
所要時間は60分程度 - 竹材や刃物について
- 工芸史
- デザイン
- 工作法
- 染色、塗装法
- 商品開発手法
- マーケティング
- 企業経営
どちらも1週間前までに予約が必要です。
名称 | 別府市竹細工伝統産業会館 |
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入館料 | 高校生以上300円 小・中学生100円 |
国内で唯一!竹細工の職人を育てる学校
別府の伝統工芸のひとつである竹細工の技術を継承していく人を育てる学校があります。
その名も「大分県立竹工芸訓練センター」。
募集対象は高校卒業後~39歳までの人で、適性検査や学科試験、面接等があります。
教科書や実習服などは実費(5万円程度)ですが、授業料は無料。
などについて2年間学習し、修了後は竹製品製造企業への就職や自ら工房を開設する人もいるそうです。
昭和13年に設立されたこの学校は、国内唯一の竹工芸専門訓練校として、竹細工技術の継承に大きく貢献しています。
竹細工の良さを伝えていくために
経済産業大臣指定の伝統工芸品に指定されている別府竹細工と勝山竹細工。
竹ひごを丁寧に編み込んでいく技術は、見ている者を飽きさせません。
しかし職人と呼ばれる技術者が年々少なくなっているため、存続が危ぶまれる地域もあります。
竹細工には繊細で高度な技術が必要ですが、出来上がった品は懐かしさを感じさせるような温もりに満ちています。
竹細工の世界がもっと広く浸透し、若い世代にもその道を志せる機会を作ることが必要です。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。
独特な風合いが楽しい、かごバッグ。
大切に使い続けたい逸品です。
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