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アダチ版画研究所・京増与志夫さん|木版画摺師インタビュー|伝統を繋ぐ人々

浮世絵摺師/京増与志夫さんの作業風景

写真:砺波周平

【プロフィール】
大学院(デザイン科)卒業後、アダチ版画研究所へ入社。入社10年を過ぎ、浮世絵の復刻から現代作品まで一人前の仕事を任されると共に、国内外の美術館での摺りの実演も数多くこなす。

Q.版画の摺りというのはどういう工程なのでしょうか。

彫師が彫った版木を使い、一色ずつ色を摺り重ねることによって完成品を作る作業です。

和紙を平らにして、板に絵の具をのせた後、刷毛でのばし、その上に紙を置いて摺るというのが一連の流れです。

Q.作業の中で気をつけなければならない所はありますか。

全ての作業に注意を払わなければいけません。
紙の置き方もそうですし、見当の合わせ方、バレンの動かし方、絵の具の量や刷毛の動かし方なども気をつけなければいけません。
摺り終わって紙を剥がす時も、剥がし方によっては絵の具が余計な所についてしまったりもします。

Q.職人になろうと思ったきっかけとこれまでの歩みを教えて下さい。

アダチ版画研究所のショールームで定期実演会があり、それをたまたま見る機会があったのがきっかけです。

その後研修生に応募しますが、落ちてしまいました。
それでも諦めずに応募を続け、3年後ようやく摺師になることが出来ました。

最初は基礎の習得から始め、少しずつ仕事を任されるようになります。
それでもまだ始めたばっかりの頃は技術的なこと全てが足りない状態だったので、紙を60枚貰って60枚仕上げて下さいと言われても、ちゃんとした商品に摺れるのは半分も無いような感じでした。

そうなるとやっぱり紙代もタダじゃないし、自分がやった事でゴミを作ってしまっている訳ですから、プレッシャーは感じましたね。

Q.そこから出来るようになったのは、どれくらい経ってからですか。

”しっかり出来る”というのはずっとないんじゃないですかね。
一応今は最低限、商品として出せるレベルは保てるようになってますけど、別にそれで満足しているわけではないし、もっともっと上手くも摺れるだろうし、まだまだだと思います。

浮世絵摺師/京増与志夫さんの作業風景

Q.仕事で大変だったり、つらい点はありますか。

つらい点は、やっぱり若い子とかも見てて思うのは体力面ですね。
今までやってきた、辞めていってしまった人達をみても、やっぱり体力的にきつくて辞めていく人も多いです。
あぐらをかいてずっと前傾姿勢でやるので、腰を痛めちゃうんですね。

Q.この仕事をしていて良かったという点はありますか。

うーん、なんだろう。
日々満足出来ないことが良かった、という感じですかね。
ずっと追求し続けることが出来るので。

Q.今後の展望を教えて下さい。

一番大切なのは、やっぱりずっと続けていくことじゃないですかね。
続けられるようにしていく。

そうなるとやっぱり体のケアとかも大事になってくると思います。

Q.どういう人が職人に向いていると思いますか。

この仕事をやるんだったら、辛抱強い人が良いですかね。

あとやっぱり、ずっと座ってやる仕事なので、集中力とかもないと。
入ってきたばっかりの子はずっと座ってられないので、ちょこちょこ立って歩いたりしないときついんです。
でもそうすると、作業に安定感が出ないんですよね。

Q.大変な事も多いと思いますが、ここまで続けてこれたのはなぜでしょうか。

3年頑張ってやっと入れたというのもありますし、やっぱりまだ満足できないので。
満足してしまったときは辞める時かもしれません。

アダチ版画研究所の画像