高校古典の授業で出てくる漢文「畏饅頭」。
今回は孟母断機の原文と書き下し文・現代語訳を単語の解説と合わせてご紹介したいと思います。
畏饅頭の原文
畏饅頭の書き下し文
貧士あり、餒甚だし。
市に饅頭を鬻ぐ者有るを見る。
偽りて大呼して地に仆る。
主人驚きて其の故を問ふ。
曰はく、「吾が性饅頭を畏る。」と。
主人因りて数十枚を空室中に設け、而して士を内に閉ぢ、相困しめて以て一笑を為さんことを冀ふ。
之を久しくして寂如たり。
乃ち門を啓きて見れば、其の搏食半ばを過ぐ。
之を詰れば則ち曰はく、
「何れの故かを知らず。忽ち畏るる覚えず。」と。
主人怒り叱して曰はく、
「汝尚ほ他に畏るるもの有ること無きを得んや。」と。
曰はく、「他無し。此の際只だ苦茶両腕を畏るるのみ。」と。
畏饅頭の現代語訳
貧乏な男がいて、ひどく腹をすかせていた。
(男は)町で饅頭を売る店があるのを見た。
(すると男は)わざと大声をあげて地面に倒れた。
(店の)主人が驚いてその(=大声をあげて倒れた)理由を問うた。
(男は)「私は生まれつき饅頭が怖いのです。」と言った。
(それを聞いた)主人はそこで数十個(の饅頭)を空き部屋に入れ、その中に男を閉じこめ、苦しめて笑いものにしてやろうと思った。
(男を閉じこめて)しばらくたったが(部屋は)ひっそりしている。
そこで出入り口を開けて(部屋の中を)見ると、(男は)手づかみで(饅頭を)貪り食うこと、半分以上であった。
(主人が男を)問い詰めると、(男は)
「どんな理由かわかりません。急に(饅頭が)怖くなくなったのです。」と言った。
主人は怒りどなって
「おまえはまだ他に怖いものがあるだろう。」と言った。
(すると男は)「他にありません。今はただ苦いお茶二杯が怖いだけです。」と言った。
畏饅頭の単語
因
それが原因で、の意を表す接続詞。
則
…野場合には。
不(レ) 知(二) 何 故
どんな理由であるのかわからない。
忽
不意に。
汝
二人称の代名詞
得(レ) 無(三) 尚 有(二) 他 畏(一) 乎
否定詞を含む反語の構文。
干 空 室 中
空いた部屋に。
而
「而」は順接、逆接の両方に用いる接続詞。
以 為 一 笑
笑いものにしてやろうと思った。
久 之
しばらくの間。
此 際
今。この時。
只 畏 苦 茶 両 腕
ただ苦いお茶二杯が怖いだけだ。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は高校古典の教科書にも出てくる、漢文の「畏饅頭」の原文と書き下し文・現代語訳を単語の解説と合わせてご紹介しました。
ご参考になれば幸いです。