日本の貴石細工のルーツともいえる「めのう細工」。
色鮮やかな赤色が美しい伝統工芸品の一つです。
今回はそんな「めのう細工」についてご紹介していきたいと思います。
めのうとは?
皆さんは「めのう」と聞いて何をイメージしますか?
もしくは、めのうと言う単語を初めて聞く方も多いのではないでしょうか。
そんなめのうについてどんなものなのか初めに説明していこうと思います。
まず、めのうとは【アゲート】と呼ばれる石の和名です。
日本では青森県や石川県などが産地になっています。
海外での主な産出国はブラジルや南アメリカなどが原産国になってきます。
めのうは石に特有の縞模様があり、加工すると美しい模様となって現れます。
石の型さの指針となる※1モースコードは6~7なので、石の硬さ的にはちょうど真ん中くらいの硬さです。
硬すぎず柔らかすぎない性質のため、加工もしやすい石です。
宝石の硬度のことで、1~10までに分けられます。硬度は叩いて壊れるかどうかではなく、石の傷つきやすさを示していると考えてください。因みに10は一番硬度が高く【ダイヤモンド】が硬度10になり1に近づくにつれて石の硬度は低くなります。
鉱物の種類としては【カルセドニー】となり、※2多孔質な性質があり、非常に染色がしやすくなります。
その為人工着色後ジュエリーとなっていることがほとんどです。
(表面に細かく穴が開いている物のことです。めのうの場合、この多孔質のおかげで人工着色がしやすくなっています。)
天然のめのうは色がグレーや褐色系の色をしています。
めのうの歴史は古く、最古のパワーストーンとも呼ばれています。
魔除けの石として用いられることが多い石で、持ち主の邪気を払い外部へ排出してくれる効果があるパワーストーンです。
若狭めのう細工の歴史
めのうについて少し理解できたところで、日本の貴石細工のルーツとなった【若狭めのう細工】について掘り下げてみようと思います。
現在、【めのう細工】は主に福井県が主流です。
奈良時代、福井県にある若狭彦神社で鰐族(わにぞく)という玉を人工している渡来人がやってきました。
鰐族は若狭彦神社の前で玉を作ることを仕事にしていたとされ、その玉造りが現在の若狭めのう細工のルーツとなっているそうです。
現在の若狭めのう細工の技法が確立したのは江戸時代頃となっていて、その後若狭出身の玉屋喜兵衛が眼鏡屋の奉公中にめのうに熱を加えることで鮮やかな赤色に発色させる技術を習得したことでめのう細工はさらに発展を遂げます。
その後明治初期に中川清助がさまざまな彫刻の技術を玉造に取り入れ芸術品として発展しました。
そして、昭和51年に若狭めのう細工として伝統工芸品に指定されたそうです。
若狭めのう細工とは
若狭めのう細工の基本は美しい赤色のめのうを使用した飾り物です。
このめのうの美しい赤色を熱を利用して引き出しているのですが、この熱を加え色を変えることを「火入れ」と言います。
この火入れはただ単に火にかけるのではなく、鉄分を使用し火を入れることで美しい赤色に変化するのです。
熱を加えて美しい赤色に代わるめのうの性質と、彫刻の発展によって最近では鶏や鯉などの縁起物の飾り物や、最近では贈り物としても使える御箸置きやお椀など、日々の生活の中でも親しみやすい貴石になってきていると言えます。
戦前は北海道でも原石が発掘されていたようですが、現在では枯渇しているため日本由来の原石のほかに海外から輸入して加工することが多いようです。
若狭めのう細工の製作工程
めのう細工の製作工程をご紹介します。
①検石
文字通り石の選別です。
この石選びが非常に重要になってきます。
なぜかというと、基本的に宝石は溶岩やマグマの力によってできているものが多いです。
その溶岩が長年の月日をかけてゆっくりと冷やされ、固まり、その月日の中でさまざまな鉱物と結びついて宝石ができていきます。
鉱物以外にも空気なども含まれるため、石の外側からは見えませんが中に穴が開いていて河口に向いていないこともあるため、石選びがとても重要になってくるのです。
また、模様や傷の有無も検石の重要な作業です。
状態のいい石を見つけて加工を始めても実は見えない傷などがある場合もあり、加工中に破損してしまうこともあると言います。
製作工程の中では最も重要な作業と言えますね。
②切断
石に下絵を描いて、大まかに切断していきます。
この切断には専用の切断機を使って切断を行います。
③野晒し・火入れ
前述した火入れを行っていきます。
火入れと聞くと、すぐに火に入れているイメージを持ちますが「野晒し」と言ってしばらく石を放置しておきます。
この「野晒し」のおかげで中が酸化し鮮やかな赤色に変化させられるようになるのです。
その放置が終わったら火に入れて、石の色を変化させていきます。
この火入れは非常に難しく熱し過ぎると割れてしまったり、温度が低すぎると美しい赤色の発色が出ないため熟練の技や技法が必要になってきます。
④彫刻・整形
火入れがしっかりと終わったら彫刻や形を正していく作業が始まります。
⑤磨き
最後にできたものを磨いていきます。
この磨きの作業が非常に神経を使う大事な作業で、美しく滑らかな曲線などを形作る行程になってきます。
最後の磨きの作業中に作品が摩擦熱で壊れてしまうこともあるんだそうです。
非常に神経を使う細かい作業であることがわかります。
まとめ
いかがでしたか?
めのう細工は伝統工芸品の中でも意外と手に取りやすい物もあるので、これを機に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
今回は日本の貴石細工のルーツ、めのう細工についてご紹介しました。
ご参考になれば幸いです。
参考/おすすめ書籍
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・いずもまがたまの里伝承館
・日本伝統文化振興機構
・貴石細工のルーツ!『若狭めのう細工』の特徴・歴史・作り方・体験施設など【福井県の伝統工芸品】|Dearふくい