日本の職人技や伝統工芸品は世界からも注目されていますが、売上や生産高でみると近年は減少傾向にあります。
そこで今回は、伝統工芸品の売上金額の推移や業界規模について、ご紹介したいと思います。
伝統工芸品の生産額
日本の伝統工芸品の生産額がピークを迎えたのは、1984年(昭和59年)の事です。
この頃は生産額が約5,000億円ありました。
そこからは年々減少を続け、近年の調査ではピーク時に比べ5分の1、約1,000億円程度の生産額になっています。
減少の原因
伝統工芸が衰退している要因について、よく言われているのは下記の2点です。
【日本人のライフスタイルの変化】
かつては着物など和服に馴染みのある人が多く居ましたが、洋服が定着したことで、最近の家庭では自分で着物を保有し、着物箪笥に保管しているという人はかなり少なくなってきています。
また昔はおじいちゃんおばあちゃんと3世代で同居していたので、お正月には良い漆器を使って料理を食べる、歳時記に沿って雛祭りには雛人形を出す、という文化は自然と受け継がれてきましたが、最近では核家族化が進み、こういった行事に馴染みのない子どもも増えています。
【安価な大量生産品の普及】
安価な海外製品が入ってくる事で、着物だけでなく漆器や日用品など、様々な工芸品の使用機会が減少してきました。
今後の伝統工芸
年々生産額の減少が続き、伝統が途絶えてしまうという危機的な状況は続いていますが、一方で「もう底を打った」という声も業界関係者からよく聞きます。
安価な大量生産品を消費していく社会が浸透した事で、その生活が環境に与える悪影響や没個性的な生活に嫌気が差した人々が増えてきたのです。
雑誌などでは”丁寧な暮らし”をキーワードに、安くて質が悪い物を使い捨てるよりも、値段は高くてもその分長く使えて、暮らしに彩りを出す事が出来る工芸品に注目が集まりつつあります。
また、岩手県の工芸品である南部鉄器の鉄瓶がヨーロッパで人気になったように、海外で成功する工芸品も出てきています。
そういった点からも、伝統工芸品には明るい兆しが出てきているといえるでしょう。
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