漢文は中学や高校国語の中でも習うものですが、苦手という方も多いですよね。
そこで今回は、漢文が難しくてわからない!という方の為に、入門記事としてわかりやすく解説していきたいと思います。
入試や試験で使える覚えるべき漢字十選
漢文にはよく使われる漢字があるので、まずはその文字と読み方、意味を覚えていきましょう。
これから説明する十個の漢字は再読文字と言われ、まず最初は返り点などは関係なしに文章を読み、その後返り点に従って下から読んでいく漢字の事です。
つまり、その再読文字は文章の中で2回読まれますが1度目に読まれる時と2度目に下から戻って読まれる時は、その読み方が変わるということです。
「未」
現代文では「今後の予定は未定だ」「未だ所在は不明だ」など不確定なことを述べる時に使うことがあります。
では漢文ではどのような役割を担う文字になるのでしょうか。
「未」
読み方:イマだ~ず
訳:まだ~ない
「将・且」
現代文章中で見ることはほとんどないですよね。
おそらく見ることがあるとすれば「~且つ」という使い方です。
「将・且」
読み方:まさニ~(セ)ントす
訳:これから(いまにも)~しようとする。 いまにも~になろうとする。
「当・応」
現代文では「当然のように」「相応な」といった言葉で使われますよね。
漢文ではどのような役割があるのでしょうか?
「当・応」
読み方:まさニ~ベシ
訳:当然~すべきだ。~しなければならない。
「宜」
現代文では一番身近な文章で「宜しくお願いします」と使われますね。
また、「適宜」と言う熟語があるように「~するのが適切である」という意味を表す時になります。
「宜」
読み方:よろシク~スベシ
訳:~するのがよい。
「須」
現代文では「必須」と言う熟語で使われ、非常に重要であることを示します。
「須」
読み方:すべかラク~ベシ
訳:ぜひ~する必要がある。 必ず~しなければならない。
「猶・由」
現代文ではあまり使われることない漢字です。
猶と由は音読みが同じになるため同様の意味で用いられることがあります。
「猶・由」
読み方:なホ~ガごとし
訳:ちょうど~と同じようなものだ。あたかも~のようだ
「盍」
現代文で使われる「蓋」と言う感じに似ていますね。
今では使われない漢字になるので日本古来の歴史を垣間見ることができますね。
「盍」
読み方:なんゾ~ざル
訳:どうして~しないのか
以上が入試や試験でよく使われる十個の再読文字です。
「未・将・且・当・応・宜・須・猶・由」の再読文字がなんとなくわかるだけでも返り点がわからずとも簡単な漢文の文章が読めてきます。
返り点とは
再読文字を説明するにあたって返り点と言う言葉が出てきましたね。
この返り点とは何なのかというと、漢文を並び替えて日本語のように読むための記号です。
漢文はもともと中国語になるため、昔の日本人は中国語の語順を変えて日本語のように読む工夫を施しました。その工夫が返り点です。
漢文を詠むコツは、まず最初に漢文をざっと見て返り点のない文字を見つけその文字から読みます。
次に返り点を含めて読むと、日本の文章として意味の分かる文章に変わっていきます。
①「レ点」
漢文中では一番よく使われる返り点になります。
簡単な例文でどのように使われるか見てみましょう。
【例文】
この漢文には先ほどおぼえた再読文字が含まれていません。
なので、この漢文の注目すべきところは返り点のレ点がついている「好」と言う文字です。
レ点が漢文中に使われている場合、レ点のついている文字とその下にある文字を上下入れ替えて読みます。
例文と現代文に訳した文章を比較してみると、確かに上下逆にして読まれているのがわかりますね。
レ点はこのように【単語を上下逆にする効果がある】返り点と覚えましょう。
☆「レ点」を使った問題A
次の返り点を使った文章を直してみましょう。
最初に注目すべきは「為子」。
為にに返り点がついているのでこの「為子」を抜いた残りの文字で考えてみましょう。
「我 先 行せん」=私は先行する。
なんとなく文章が見えてきました。
次に返り点のついた「為子」を逆にして読んでみます。
「子の 為に」=あなたの為にとなります。
以上を踏まえて改めて問題を読んでみましょう。
この漢文は現代文にすると「私はあなたの為に先に行きます。」という文章になります。
☆「レ点」を使った問題B
次の返り点を使った文章を直してみましょう。
最初に注目すべきはレ点の位置で「漱(レ)石」と「枕(レ)流」で単語と単語の間にレ点があることです。
この場合、両方の単語を上下逆にしてやっと文章として読むことができます。
一つ前の問題と違うのは返り点が掛かっていない単語がないということ。
この場合は最初に出てきた方の単語から読んでいけば文章らしくなってきます。
「漱レ 石」 → 「石に 漱ぎ」 石で口をすすぎ
「枕レ 流」 → 「流に 枕す」 流れを枕にする
以上を踏まえて改めて問題を読んでみましょう。
この漢文は現代文にすると「石で口をすすぎ、川の流れを枕にする。」と言う文章になり、屁理屈や言い訳を並べて言い逃れをするという意味を持つ「漱石枕流」と言う四字熟語になります。
☆「レ点」を使った問題C
次の返り点を使った文章を直してみましょう。
返り点が2かい続く少々難しい文章です。
まずは単純にレ点の性質が【単語を上下逆にする効果がある】と言うのを思い出しましょう。
この文章の場合、「人」と言う文字に返り点が掛かっているのがわかります。
「若(レ) 無(レ) 人 」 → 「若(レ) 人 無(レ) 」 → 「人 若(レ) 無(レ) 」
このように、人が傍らの次に来ます。
最後に忘れてはならないのが、「若(レ) 」のレ点が「無(レ) 」に掛かっていることです。
つまり、この「若(レ) 」のレ点で最後に文字を上下逆転させることで
「人 無(レ) 若(レ) 」 → 人 無が 若し
と言う語順で読むことできるのです。
因みにこの漢文は四字熟語で「傍若無人」と言い、耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか?
意味は他人を無視して身勝手にふるまうことです。
返り点が続いていると少々読むのが厄介ですが問題を解いて慣れてくればすぐに解けるようになります。
苦手だなと感じたら反復練習をして慣れていきましょう。
②一二点
レ点の次によく使われる返り点です。
レ点と混ざって使われることもあるのでここからちょっと複雑になってくるかもしれません。
それでは簡単な文章でどのように使われるか見てみましょう。
【例文】
・悪事千里を行く → 悪い噂はすぐに、広く伝わると言う意味があります。
一二点がある場合、まずは返り点のついていない文字を読み次に一二点の返り点が掛かっている文字を【一の数字から順番に読む】という返り点になります。
☆一二点を使った問題A
次の返り点を使った文章を直してみましょう。
この文章全体を見て見ると、一二点を二回使っていることがわかります。
その場合は一つ目の文章と二つ目の文章と分けて考えるとわかりやすくなります。
①「似(二) 五 十 歩(一)」
まずはこの文章を一二点の返り点に添って直してみます。
・似(二) 五 十 歩(一) → 五 十 歩を 似て
②「笑(二) 百 歩(一)」
次にこの文章を一二点の返り点に添って直してみます
・笑(二) 百 歩(一) → 百 歩を 笑ふ
③最後に二つに分けた文章を元に戻すと「五十歩を似て百歩を笑ふ」と直すことができます。
この漢文の意味は五十歩のものが百歩のものを笑うと言い、大して差がないのに人の言動を笑う、ともに大したことないことを言う例えです。
☆一二点を使った問題B
次の返り点を使った文章を直してみましょう。
最初の問題で出てきた文章よりもシンプルでわかりやすいですね。
注目すべきは返り点のついている「鳥一」と「聞二」の二文字で、他の単語は先に読んでしまいます。
①「処 処 啼」を先に読みます
②次に「鳥(一)」「聞(二)」を数字のとおりに一から読むと、「処 処 啼 鳥を 聞く」となります。
この漢文の意味は所々から鳥の鳴き声が聞こえるという意味で、四字熟語ではなく孟浩然の「春暁詩」に使用されている文章の一部です。
一二点はほとんどが一、二ですが稀に三の返り点がつく文章も出てきます。
出題数として頻度は少ないですが三が出てきてもあわてずに、返り点のついていないところから読んで一から順番に読んでください。
③上下点
一二点と一緒に使用されることが多い返り点で、一二点と混ざることでこんがらがってしまうことがありますが順番さえ覚えて入れば意外と文章がわかってきます。
それでは簡単な文章でどのように使われるのか見て見ましょう。
【例文】
・常馬与等しからんと欲す → 普通の馬でありたいと望むという意味があります。
上下点が含まれた文章で押さえるべきは返り点の優先順位になります。
【一二点のついている単語から先に読み、上下点のついた単語は後に読む】ようにしましょう。
☆上下点を使った問題A
次の上下点を使った文章を直してみましょう。
まず文章をざっと見て返り点のついていない文字から読みます。
①「客 能 狗」
②つぎに、返り点のついている文字を確認して返り点の指示通りにまずは一二点から読みます。
「客 能 狗 盗一 為ニ」
③一二点まで読み終わったら最後に上下点の単語をつなげていきます。
「客 能 狗 盗一 為ニ 者上 有下」となります。
この漢文は食客の中に、こそ泥のうまい者がいたという意味で日本のことわざで「鶏鳴狗盗」といいます。
立派な人とはいえないが器用な才能の持ち主のことを指します。
☆上下点を使った問題B
次の上下点を使った文章を直してみましょう。
まず文章をざっと見て返り点のついていない文字、「漚」が最初に来ることがわかります。
①では返り点の指示に従って、一二点から読んでみます。
「漚 鳥(一) 好(二)」
②一二点の次に読む上下点を読んでみます。
「漚 鳥(一) 好(二) 者(上) 有(下)」となります。
この漢文の漚鳥とはカモメの事で「カモメのことが好きな人がいた」と言う訳になり、通常は「海上之人」と言う一文がつきます。
この漢文は列子の従漚鳥游の抜粋で、全てを訳すと海辺の人で、カモメのことが好きな人がいたとなります。
③一レ点と上レ点
応用として文章中に一レ点や上レ点が使われる場合もあります。
この返り点が使われている場合は返り点のついていない文字の次にレ点を優先して読みます。
その次に一レ点・上レ点の一や上を読んでいきます。
順番さえ間違えなければしっかりと漢文を読み取ることができますよ。
☆一レ点・上レ点を使った問題A
①まず最初に「睨レ 柱」を返り点の指示に従って上下入れ替えます。
・「柱 睨(レ) 」
②次に読むのは返り点のついていない「似」になるので
・「柱 睨(レ) 似」
③次は「撃一レ 柱」の一レ点を解いていきます。
最初にレ点を読むため、上下を入れ替えます。
・「柱 撃(一レ)」
④最後に一二点を読んでいきます。
・「柱 撃(一レ) 欲(二)」
「柱を 睨み 似て 柱に 撃たんと 欲す」となります。
この漢文は史記の完璧帰趙の一文を抜粋したもので、柱を睨んで、(壁を)柱にぶつけようとしたという意味になります。
☆一レ点・上レ点を使った問題B
①まず最初に返り点のついていない「悪」を読んでから、一二点の返り点がついた文字を読みます。
・「悪 小(一) 似(二)」
②次に「為(上レ)」の返り点を確認し、まずはレ点で上下を逆にして読んだら上下点の指示に従って順番に読みます。
・「之 為(上レ) 勿(下)」
「悪の 小なるを 似って 之を 為すこと 勿れ」となります。
この漢文はたとえ小さな悪事であっても悪いことは行ってはならないという意味があります。
レ点・一二点・上下点が漢文を読んでいくうえで基本の返り点になります。
単語や文章を読んでいく上で覚えることも多く感じるかもしれませんが問題を解いていくに従ってだんだん慣れてくるので根気よく続けていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は漢文の解説とテスト問題と答えをご紹介しました。
ご参考になれば幸いです。
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