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唐物語「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」原文と現代語訳・解説・問題|説話集

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中国の故事を翻案して歌物語形式にした説話集、唐物語(とうものがたり)。
成立は12世紀後半で、作者は藤原成範といわれています。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる唐物語の中から「王昭君(わうしやうくん)、絵姿を醜く写され、胡(えびす)の王に嫁ぐ語」について詳しく解説していきます。

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唐物語「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」の解説

唐物語でも有名な、「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」について解説していきます。

唐物語「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」の原文

昔、漢の元帝と申す帝おはしましけり。

三千人の女御・后の中に、王昭君と聞こゆる人なむ、はなやかなることはたれにもすぐれ給へりけるを、この人、帝に間近くむつれつかうまつらば、我ら定めてものの数ならじと、あたまの御心にいやましくおぼしけり。
このときに、胡の王なりける者参りて申さく、

「三千人まで候ひ合ひ給へる女御・后いづれにても一人給はらむ。」

と申すに、上自ら御覧じ尽くさむこともわづらひありければ、そのかたちを絵に描きて見給ふに、人の教へにやありけむ、この王昭君のかたちをなむ、醜きさまに写したりければ、胡の王給はりて喜び開けつつ、わが国へ具して帰るに、ふるさとを恋ふる涙は道の露にもまさり、慣れし人々に立ち別れぬる嘆きは、しげき深山の行く末はるかなり。

かかるままには、ただ音をのみ泣けども、何のかひかはあるべき。

憂き世ぞとかつは知る知るはかなくも 鏡のかげを頼みけるかな

あはれを知らず情け深からぬ者なれども、らうたき姿にめでて、かしづき敬ふこと、その国の営みにも過ぎたり。
かかれども、古りにし都を立ち別れにしより今に至るまで、憂への涙乾く間もなし。

この人は鏡のかげの曇りなきをのみ頼りみて、人の心濁れるを知らず。

唐物語「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」の現代語訳

昔漢の元帝という名の帝がいらっしゃった。

三千人の女御や后がいる中に、王昭君と申し上げた方が、美しい容貌であることは、誰よりもまさっていらっしゃったので、「この人(王昭君)が帝のお近くで慣れ親しんでお仕え申し上げたら、私たちはきっと問題にもされないであろう。」と、たくさんの(女御や后の)お心に、いとわしいと思いになった。
そういう時期に匈奴の王であった人が(元帝に)参上して申し上げることは、

「三千人もの人がお仕えしている女御や后の中から、誰でもよいから一人頂戴しましょう。」

と申し上げると、帝はご自分で(三千人もの女性を)御覧になって調べ尽くすようなことは面倒なことであったので、(女性たちの)姿を絵に描かせて御覧になると、誰かが指示したことでもあろうか、この王昭君を醜い形に描いたので(元帝は与えてしまい)、匈奴の王は(王昭君を)頂戴して晴れやかな気持ちになって、自分の国へ連れて帰ったが、(王昭君が)故郷を慕う涙は道を濡らす露よりも多く、長年親しくしてきた人々と別れてしまった嘆きは、草場が生い茂る深い山を越え、はるか遠くまで続く。

このような中で、ひたすら声をあげて泣くだけであったが、それがどういう効果があるというのであろう。

この世の中がつらいものとは知っていたけれど、むなしいことに、鏡に映るこの自分の容姿を、信じ過ぎてしまったことだ。

(匈奴の王は)情趣もわきまえず、思いやりも浅い者ではあったが、(王昭君の)美しい姿をほめたたえ、大切に世話をし、尊敬することは、その国の政治的な行事よりも重要なものとなっていた。
このようであっても、(王昭君は)長年住みなじんできた都を離れてきてから現在に至るまでの間、悲しみの涙が乾いたことはなかった。

この人(王昭君)は、鏡に映る自分の容姿の美しさだけを信用して、他人の心が(その美貌を嫉妬して)濁っていることに気づかなかったのである。

唐物語「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」の単語・語句解説

[おはしましけり]
いらっしゃった。

[王昭君と聞こゆる人なむ]
王昭君と申し上げた方が。

[はなやかなることは]
美しい容貌であることは。

[定めてものの数ならじ]
きっと、問題にもされないであろう。

[女御・后いづれにても一人給はらむ]
女御や后の中から、誰でもよいから一人頂戴しましょう。

[御覧じ尽くさむこと]
御覧になって調べ尽くすようなことは。

[わづらひ]
面倒なこと。

[しげき深山の行く末はるかなり]
草木が生い茂る深い山を越え、はるか遠くまで続く。

[何のかひかはあるべき]
どういう効果があるというのであろう。

[はかなくも]
むなしいことに。

[鏡のかげ]
鏡に映る自分の容姿。

[あはれを知らず情け深からぬ者]
情趣もなく、思いやりも浅い者。

[らうたき姿にめでて]
(王昭君の)美しい姿をほめたたえ。

[かしづき敬ふ]
大切に世話をし尊敬する。

[かかれども]
このようではあっても。

[古りにし都]
長年住みなじんできた都。

*唐物語「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」でテストによく出る問題

○問題:「人の教へにやありけむ」とはどういう事か。
答え:「誰かが指示した事でもあろうか。」の意味。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は唐物語でも有名な、「王昭君、絵姿を醜く写され、胡の王に嫁ぐ語」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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