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漆器とは?漆の種類から手入れ、保管方法と、日本の漆器産地別特徴一覧も!

漆器のお屠蘇の画像
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漆器のお屠蘇の画像
漆器は、日本を象徴する工芸品です。
その美しい風合いや手触りは、使う度に我々日本人の心を癒してくれます。

しかし今、生活様式の変化によって、漆器を使う家庭が減少しています。
漆器は取り扱いが難しそうなイメージが先行していますが、実は非常に優れた塗料なのです。

今回は日本の漆と漆器についてと、各産地の漆器の特徴をご紹介します。

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1.漆・漆器の歴史

石川県七尾市にある三引遺跡から6000年前のものと思われる漆塗りの櫛が出土していることから、我が国では縄文時代の頃から漆の利用が始まっていたと考えられています。
また、現代にも伝わる漆工芸の技術は、平安時代初期の皇族である惟喬親王が考案したという伝説も残っています。

この伝説は虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)から木地の製造・漆器の工芸技術を教えてもらい、各地に広めていったというもので、越前漆器の産地である福井県には惟喬親王(これたかしんのう)を祀った漆器神社もあります。

津軽塗、浄法寺塗、金沢漆器、香川漆器など、各地の漆器が伝統的工芸品に指定されていますが、我が国の漆器工芸技術は独自の発展を遂げていき、西洋諸国との交易が始まった16世紀中頃には日本を代表する工芸品として輸出されていきました。

美しい細工が施された漆器は西洋諸国の工芸作家にも影響を与え、漆・漆器は日本を代表する工芸品となりました。

2.漆の種類

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漆ってどんなもの?

[漆]
➀山や生える落葉樹の名。葉はフジに似て大きくて、秋、赤くもみじする。
さわると、かぶれる。
➁「うるし➀」の皮からとった、しる。無色だが、色をまぜて、塗り物に使う。
(三省堂 国語辞典より)

食器をはじめ、家具や楽器などにも使われている、漆器。

漆は湿気や熱、酸、アルコール、塩分にも強く、耐水性や防腐性、防虫効果まであります。
また、接着剤としても用いることが出来るので昔から重宝されてきました。

漆の木は日本や中国、韓国など、東南アジアに広く分布しています。
その中でも日本の漆が最も上質と言われています。

その理由は、漆が採取されるウルシノキの主成分、ウルシオールの含有量にあります。
ウルシオールの含有量が高い程良質な漆の目安とされますが、日本の漆はこの含有量が高く、ゴム質が少ないという特徴がある為、他の国の漆器に比べ美しい漆器が出来上がるのです。

漆は6月中旬~10月下旬にかけて採取されます。
漆の木の幹に傷を付け、分泌してくる乳白色の樹液を採取。
これをろ過して、樹皮や木屑などを取り除いたものが生漆です。
このままでも摺り漆(木地が見えるくらいに漆を薄く塗る技法)として使えます。

採取された漆の用途

生漆
漆の木から採取した樹液から樹皮や木屑や塵、ゴミ等を取り除いただけの無精製のもの。
水分が多く含まれている。
乾燥が早く、乾くと薄い褐色の透明な被膜ができる。
仕上げ用の摺り漆(拭き漆)、艶つけにも使う。
透漆
熱を加えて生漆の水分を蒸発させた飴色の漆。
木地の見える透明塗り、金箔などの下地にも使う。
様々な色の顔料を混ぜて彩漆を作る。
黒漆
鉄粉を加えて、その酸化作用で真っ黒に変化させた漆。
精製の段階で漆自体が黒くなるので、深みのある独特の黒色が出来上がる。


ろ過を行ない、樹皮や木屑などを取り除く

生漆

精製→鉄粉を混ぜると黒漆になる

透漆

顔料を混ぜる

様々な色漆になる

様々な使われ方をする漆ですが、長所もあれば短所もあります。

◯漆の長所

  • 漆は一度固まってしまえば高熱や薬品などへの耐久性がある。
  • 漆は接着効果が高い。
  • 塗り重ねが可能。
  • 水となじむ。
  • 鉄分に反応し、黒色に変化する。

◯漆の短所

  • 皮膚がかぶれる。
  • 紫外線に弱い。
  • ペンキなどに比べると非常に高価である。
  • 乾くのに時間がかかる。

色漆の種類

  • 本朱(古代朱ともいう)
  • 通常の朱色ではなく、茶色っぽい落ち着いた赤の漆。

  • 洗朱(あらいしゅ)
  • 本朱から作られる赤みの強い朱色からオレンジに近い朱色まで様々。

  • うるみ
  • 朱合漆に赤口の顔料を混ぜたり、赤口の顔料に黒漆を混ぜたりして作られる色。

  • 紅柄(べんがら)
  • インドにあるベンガル土の色。茶色に近い朱色。

  • 白漆
  • チタン白を利用。真っ白ではなくベージュに近い。

  • 青漆(緑)
  • 藍草から取り出した藍蝋を加えた漆。もしくは黒漆に黄漆を混ぜて作られたもの。

  • 黄漆
  • 石黄を混ぜたもの。

黒以外の色は透漆に顔料を混ぜて作ります。
透漆といっても透明ではなく飴色のため、顔料を混ぜても淡い色合いにはなりません。

そのため、どの色も濃く落ち着いた風合いになります。
特に白は私達が想像する白ではなく、ベージュのような色になります。

全く同じ色は出せないというほど繊細でもある漆。
季節や天気などの条件によっても、その色の出方は変わってきます。
また使っているうちに艶が出て来たり、微妙に色合いが変化するのも漆器の魅力と言えるでしょう。

3.国産漆の現状

江戸時代に入ると各藩の殖産政策もあり、漆の採取・漆器の製造は盛んに行われました。
当時の百科事典である「和漢三才図会」にも陸奥、出羽、下野、日向米良、和州吉野、越前と多くの漆産地が紹介されています。

和漢三才図会より「漆」
[和漢三才図会より「漆」]

しかし、明治維新後にこれらの漆産地は徐々に衰退していきます。
その一因となったのは、海外との交易再開に伴う漆器の輸出量増加です。

国産漆だけでは需要を賄いきれなくなり、中国からの輸入が増えていったのです。
海外での漆器の人気が高まるにつれ、原材料である漆は外国産に切り替わっていくという皮肉な結果でもあります。

戦後になると安価な漆器を求める声が高まっていき、カシューの実から作られた合成塗料による漆器も広まっていきました。
市街地化が進んで漆の樹を育てる場所が少なくなったこともあり、漆の国内生産量は急減していきます。
1959年には25トン程あった国内での漆生産量は現在1トンにまで落ち込み、更に国内消費の98%は輸入漆で賄われているというのが現状です。

国産漆を受け継いでいく

漆は古くからの工芸材料であり、様々な文化財や伝統建築物にも使われています。
これらを補修していく上では、なるべく製造当時と同じ材料、すなわち国産の漆を使っていくことが求められます。
国産漆の生産量が少なっていく中で、文化財や伝統建築物の維持ができなくなっていくのではないかと危惧されています。

このような事態を受け、文化庁では文化財や伝統建築物の保存に必要な資材を供給していくための「ふるさと文化財の森」運動を進めています。
2016年3月現在、岩手県の浄法寺漆林、山形県の村木沢漆林、草岡漆林、西川町漆林、京都府の夜久野丹波漆林が漆の森に設定されています。

また、漆の採取には、漆掻きという技術が必要ですが、この漆掻きを行える職人の数も減少してきています。
浄法寺漆林を有する岩手県二戸市では漆掻き研修を実施するなどして、技術の伝承を急ピッチで進めています。

国産漆を次世代に残していくためには、消費者側でも国産漆の魅力を理解した上で適正な価格で漆器を買う、職人を応援していくという気持ちを強く持つことが求められます。

4.漆器の装飾技法

4-1.蒔絵(まきえ)

蒔絵は漆器の加飾の中で最も有名で、古くは平安時代から存在したとされています。
細かく分けると研出蒔絵・平蒔絵・高蒔絵などいくつか種類がありますが、大まかに蒔絵の技法を説明します。

まず、漆を塗り完成された漆器の表面に、さらに漆で絵や模様を描きます。そこに金粉や銀粉を蒔き接着させ、模様を描く技法です。

最近では「蒔絵シール」という、手軽に蒔絵のような雰囲気が出せるシールも販売されていますね。
シールの登場で「蒔絵」という伝統技法が身近なものになったのではないでしょうか。

4-2.螺鈿(らでん)

螺鈿は奈良時代に日本にやってきて、平安時代以降は蒔絵と組み合わせて作品を作ることが多くなりました。
小物だけでなく、寺院の装飾などにも蒔絵とともに使われてきました。

夜行貝・白蝶貝・黒蝶貝などの貝殻の内側に、虹色をした真珠層の部分があります。
そこを切り出し、漆器の表面に作った模様に合わせて、接着剤代わりの漆を塗り細かく貼り付けていく技法です。

4-3.沈金(ちんきん)

沈金はまず、漆器の表面に模様を彫刻します。そして、その溝に漆を再度塗り、金箔や金粉を入れ込んで接着させていく技法です。
特に輪島塗で多く使われています。

4-4.平文(ひょうもん)


平文は奈良時代に伝わり、平安時代に発展し広まっていきました。

まず金属の板を作りたい模様に切り取り、漆器の表面に貼り付けます。
そして上から漆を塗り模様をいったん埋め、それを研いで模様部分を再び表面に出す技法です。

最後に磨き上げるため、蒔絵・螺鈿・沈金と違い最終的に表面は平らになります。
これが「平文」という名称にも表れています。

4-5.彫漆(ちょうしつ)

彫漆は、中国を代表する漆器加飾技法です。
使う漆の色によって、堆朱、堆黒などの種類があります。

まずは表面に何層も何層も漆を塗り重ね、厚みを増した漆の層を作ります。それを彫刻して模様を浮かび上がらせる技法です。レリーフのような深い彫りが特徴です。

4-6.色絵(いろえ)


色絵は、顔料を加え色を付けた漆を使って、漆器の表面に絵を描いていく技法です。
漆器をキャンバスとして絵の具で絵を描いていくような感覚です。カラフルな色を使えるので、多彩な表現をすることができます。

4-7.箔押し(はくおし)

箔押しは、漆器の表面の絵に合わせて漆を塗り、金箔を押し貼ることで絵を描きます。
金粉など細かい金ではなく金箔を使うので、金の質感を表現しやすい技法です。

4-8.体験施設

漆器の加飾を体験できる施設は全国各地にたくさんあります。さまざまな加飾をぜひ実際に体験して伝統技法に触れてみてください。

名称 地域観光情報研究社・京の手創り体験
住所 京都府京都市中京区堺町通り錦小路上る菊屋町513
技法 蒔絵・螺鈿・沈金・色絵・箔押し
名称 嵯峨螺鈿野村
住所 京都市右京区嵯峨釈迦堂大門町26
技法 蒔絵・螺鈿
名称 蒔絵スタジオ祥幹
住所 [横浜教室]横浜市中区万代町2丁目4番地7
[深川教室]江東区越中島1-3-1
技法 蒔絵
名称 木之本漆器店
住所 福島県喜多方市字天満前8859
技法 蒔絵
名称 鈴善漆器店
住所 福島県会津若松市中央1-3-28
技法 蒔絵
名称 Factory HAN BUN KO (はんぶんこ)
住所 富山県高岡市小馬出町63
技法 螺鈿

一口に漆器の加飾と言っても、こんなにたくさんの技法があるのです。
これから漆器を見るときには、どの部分がどんな加飾技法になっているのかも注目してみてください。

関連記事:伝統工芸を体験出来る施設一覧

5.漆器の表示を見てみよう

漆器
会津塗、金沢漆器など日本各地で漆器が製造され、私たちの目を楽しませてくれています。
日常使いはもちろんのことお土産品としても人気のある漆器ですが、購入する際は価格だけではなく表示内容も気にしてみると良いでしょう。

家庭用品品質表示法のルール

漆器の品質表示については、家庭用品品質表示法で義務付けされています。
美術品や中古品は別として、そもそも品質表示がされていない漆器は法律上の義務を守っていないことになります。

家庭用品品質表示法では、漆器について、「品名」「表面塗装の種類」「素地の種類」を表示するように定められています。
まず、「品名」ですが、表面の塗装すべてに天然の漆のみを使用したものだけが「漆器」と表示することができます。
カシュー塗料やウレタン塗料で塗ったものは「合成漆器」と表示していきます。

漆器の品質表示
品質表示の例 出典:消費者庁webサイト

「表面塗装の種類」についても、漆を塗装したものだけが「漆塗装」と表示でき、カシュー塗料を用いたものは「カシュー塗装」、ウレタン塗料を用いたものは「ウレタン塗装」と表示していきます。

そして、「素地の種類」も、天然木を用いたものは「天然木」、プラスチック素地を用いたものはメラミン樹脂、フェノール樹脂といったように表示していくことになります。
このため、昔ながらの漆器を買いたいというときは、表面塗装の種類が「漆塗装」、素地の種類が「天然木」と表示されてみるものを選ぶと良いでしょう。

日本漆器協同組合連合会のルール

家庭用品品質表示法では漆のみを使って塗装したものを漆器と表示して良いルールになっていると説明してきましたが、伝統的な技法の中にも漆の中に顔料を混ぜて色を付けたり、細工をしやすくするために油を混ぜて粘度を調整することがあるところです。

家庭用品品質表示法ではこのような漆の扱いが曖昧になっていることもあり、一時期は、漆に合成塗料を混合したものまで「漆」と表示するところもありました。

このため、日本各地の漆器組合で結成された日本漆器協同組合連合会では、表示のガイドラインを定めています。
ガイドラインでは、着色剤、乾性油、天然の補助剤を加えたものは「漆」と表示して良いこととする一方で、硬化剤の量については漆に対して10%以内に抑えるように求めています。

また、合成塗料を混合した漆については、漆の比率が50%以上のものについては、塗装方法を「漆と合成塗料」、比率が50%未満のものは「合成塗料と漆」と表示し、それぞれ漆の比率も記載するように求めています。

伝統的工芸品としてのルール

伝統的工芸品に指定されている漆器については、家庭用品品質表示法や日本漆器協同組合連合会のガイドラインに加えて、伝統証紙を貼りつけるためのルールも守っていく必要があります。
伝統証紙とは、経済産業大臣から指定を受けた技法を守っていることを証明するためのものです。

漆器の産地組合では、「伝統的工芸品統一表示事業実施規程」に従って、伝統的工芸品産業振興協会と伝統証紙使用許諾契約を結び、組合員が作成した漆器のうち検査基準に合致したものに伝統証紙を貼付していきます。

このため、機械での大量生産品など、伝統的工芸品としての技法が守られていないものに伝統証紙を貼付することができず、職人手作りの漆器との差別化が図られているのです。

伝統証紙には、検査を行った組合の名称と管理番号も入っていますので、問題が生じた際にはすぐに対応ができる体制も整えられています。
各地の民芸店、お土産物屋には様々な漆器が並んでいますが、表示の意味を知っておくことによって、お気に入りの逸品を探し当てやすくなるかもしれません。

6.漆器の取り扱いとお手入れ、保管方法

美しく、手にもよく馴染む漆器。

漆器には少し扱いにくいイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。
昔から日用品として使われてきたものですし、非常に長持ちするものです。

より良い状態で長く使うためにはコツがありますので、下記にまとめてみました。

漆器を使うときに避けるべきもの

  • 直射日光
  • 煮沸
  • スチールウールやスチールたわし
  • 過度な乾燥
  • 湯水に長時間浸す
  • 極端に湿度や温度の高い所
  • 電子レンジやオーブン、そして食洗機
  • 沸騰した直後の熱湯(色が微妙に変色する可能性があります)

漆器の洗い方

漆器の使用後はなるべく早く汚れを落としてください。
油物以外の軽い汚れであれば、ぬるま湯でさっと洗う程度で大丈夫です。

洗剤を使用する場合は、台所用中性洗剤を薄めて使用して柔らかいスポンジで優しく洗って下さい。
洗い終わったら自然乾燥よりもふきんで拭いたほうが水滴の跡も残らず良い状態を保てます。
ご飯がこびりついてしまった場合は、ぬるま湯を10分程貼ってから洗い流して下さい。

蒔絵のある漆器について

通常の漆器に比べると丁寧な扱いが必要です。
洗う際はガーゼの布などを使い、柔らかい布巾で拭き取ってください。

漆器のにおいについて

できあがったばかりの漆器は、独特のにおいがする場合があります。
気になる方は、風通しの良い場所に陰干しして下さい。
すぐに取りたい場合は、米びつの中に入れておくか、酢または酒を含ませた柔らかい布で軽く拭いて、ぬるま湯で洗ってください。

保管方法

重ねて収納する場合、万全を期す為には器と器の間に紙や布切れをはさむと良いです。
乾燥対策の為、水の入ったコップなどを一緒に食器棚に入れておくと完璧です。

漆器は塗り直しなど、修理も出来ますので、何世代にも渡って使用していくことが出来ます。
安いものを使い捨てるよりも、大切に使うことで暮らしも豊かになるのではないでしょうか。

7.日本全国、漆器産地別の特徴

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