”秋の夜長”という言葉があるように、徐々に夜の時間が長くなる秋は、物思いに耽る時間も増えてきます。
昔の人々も、秋を題材にした和歌を多く詠んできました。
今回は四季の中でも”秋”をテーマにした和歌を一覧でまとめてご紹介します。
秋の和歌一覧
秋を題材にした和歌を一覧でまとめてご紹介します。
(和歌は古今和歌集より選出しています。)
多かる野辺に寝なましものを
【意味】
花に充分満足しないでどうして帰るのだろう。女郎花が多く咲く野辺に寝てしまおうと思うのに。
鹿の鳴く音に目を覚ましつつ
【意味】
山里は秋が特に寂しいのだ。鹿の鳴く声に、毎晩何度も目を覚ましているよ。
風の音にぞおどろかれぬる
【意味】
秋がやって来た、と目にははっきりと見えないけれども、風の音でそれと気付かされた。
物思ふことの限りなりける
【意味】
物思いは何時というように時節によって違いがあるわけではないが、秋の夜こそは物思いの極みであることだ。
我かと行きていざ訪(とぶら)はむ
【意味】
秋の野に人を待つという松虫の声がする、私を待っているのかと、さあ尋ねて行ってみよう。
今ぞ鳴くなる秋霧の上に
【意味】
春霞の中をかすんで去って行った雁が、今またやって来て鳴いている、秋霧の上に。
尾上の鹿は今や鳴くらむ
【意味】
秋萩の花が咲いた高砂の峰に住む鹿は、今頃鳴いているだろうか。
男山にし立てりと思へば
【意味】
女郎花を気懸かりで何度も見ながら通り過ぎたことだ。とにかく女という名を持ちながら、選りに選って男という名を持つ男山に立っていると思うので。
忘られがたき香に匂ひつつ
【意味】
泊まっていった人の形見の品か、この藤袴という袴は。忘れることができないような懐かしい香で匂い続けている。
穂に出てて招く袖と見ゆらむ
【意味】
秋の野の草の衣の袂なのか、この花薄は。だから穂が出ると、恋の思いをあらわに出して、慕う人を招く袖と見えるのだろう。
鳴く夕影の大和撫子
【意味】
私だけが可憐と思うのだろうか、蟋蟀が鳴く夕方の日の光に映える撫子の花を。
秋の木の葉を千ぢに染むらむ
【意味】
白露の色は白一色なのに、どのようにして秋の木の葉を色とりどりに染めるのだろうか。
山の木の葉の千くさなるらめ
【意味】
秋の露が色とりどりに置くからこそ、山の木の葉が様々に色づくのだろう。
柞の黄葉よそにても見む
【意味】
秋霧は今朝は立たないでほしい、佐保山の柞の黄葉を、せめて遠くからでも見ようと思うから。
天つ星とぞあやまたけれる
【意味】
宮中で拝見する菊は、雲の上ということで、天空の空と見まがうばかりだ。
渡らば錦中や絶えなむ
【意味】
龍田川には紅葉が散り乱れて流れているようだ。川を渡ったならば、紅葉の錦が真中から断ち切れてしまうだろうか。
三室の山に時雨降るらし
【意味】
龍田川に紅葉の葉が流れている、上流の神なびの三室山に時雨が降って、紅葉を散らしているらしい。
秋の木の葉の幣と散るらめ
【意味】
龍田姫が手向けをする神があるからこそ、秋の木の葉が幣となって散るのだろう。
散らぬ影さへ底に見えつつ
【意味】
風が吹くと散り落ちて、池の水面に浮かぶ紅葉の葉、それに水が清く澄んでいるので、まだ散らぬ紅葉が映って、水底にずっと見えている。
稲葉の露に濡れぬ日はなし
【意味】
まだ穂も出ない山田の番をするということで、この粗末な衣が、稲葉の露で濡れない日はない。
声のうちにや秋は暮るらむ
【意味】
ほの暗い小倉山にわびしげに鳴く鹿の声と共に、秋は暮れてゆくのだろうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は季節の中でも秋を題材にした日本の和歌を一覧でまとめてご紹介しました。
その他については下記の関連記事をご覧下さい。
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