古今和歌集の内容と解説、四季の歌一覧|古今集

日本で最初の勅撰和歌集である、古今和歌集。
通称を古今集とも言います。

勅撰集とは国家の繁栄や天皇の権威を示す為の文化的事業で、天皇の下命によって編纂する公的な撰集です。
和歌に限らず、漢詩を集めた勅撰漢詩集などもあります。

今回はそんな古今和歌集の歴史や成り立ち、内容についてご紹介したいと思います。


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古今和歌集の歴史と成り立ち

醍醐天皇の勅命によって古今和歌集が編纂されたのは、平安時代前期。
撰者は紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑の四名です。

古今集は全二十巻からなっており、総歌数は1111首。
中でも四季の歌が342首、恋の歌が360首と、この2つが古今集の中心となっています。

古今集の部立て

【古今集の部立て】
巻第一 春歌 上
巻第二 春歌 下
巻第三 夏歌
巻第四 秋歌 上
巻第五 秋歌 下
巻第六 冬歌
巻第七 賀歌 (御代の永続を予祝する歌、出生や長寿を祝う歌)
巻第八 離別歌 (人との別れの歌)
巻第九 羈旅歌 (旅に関する歌)
巻第十 物名 (事物の名前を歌に隠し詠むという遊戯性の強い歌)
巻第十一 恋歌 一
巻第十二 恋歌 二
巻第十三 恋歌 三
巻第十四 恋歌 四
巻第十五 恋歌 五
巻第十六 哀傷歌 (人の死に関する歌)
巻第十七 雑歌 上
巻第十八 雑歌 下
巻第十九 雑体(長歌や旋頭歌など、形式の異なる歌)
巻第二十 大歌所御歌・神遊びの歌・東歌

歌人別歌数

撰者の紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑の四名で全体の2割を占めています(合計244首)。
そして全体の4割は作者不明の”読人知らず”で、450首となっています。

その他も含めた歌人別の歌数については、下記の通りです。

【歌人別歌数】
紀貫之 102
凡河内躬恒 60
紀友則 46
壬生忠岑 36
素性法師 36
在原業平 30
伊勢 22
藤原敏行 19
小野小町 18
僧正遍昭・藤原興風・清原深養父 17
在原元方 14
大江千里 10
平貞文 9
坂上是則 8
源宗于 6
小野篁・文屋泰秀・兼覧王 5
読人知らず 450

真名序と仮名序

古今集には、漢文で書かれた真名序と、仮名文で書かれた仮名序が添えられています。
真名序が紀淑望、仮名序が紀貫之の執筆であると言われています。

特に仮名序は、仮名文で書かれたものとしては日本で最初の文学論となっており、歌学・歌論史的にも重要な位置を占めています。

[仮名序 冒頭]
やまと歌は、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。
世の中にある人、事業(ことわざ)繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの聞くものにつけて言ひ出いだせるなり。
花に鳴く鶯、水にすむ蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける。
力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女の仲をも和らげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり。

二十一代集

古今和歌集は、二十一代集の内の一つです。

二十一代集…古今和歌集から新続古今和歌集までの二十一の勅撰和歌集の事。新古今集までの八代集と、新続古今集までの十三代集に分けられる事が多い。
【二十一代集】
[八代集]
古今集
後撰集
拾遺集
後拾遺集
金葉集
詞花集
千載集
新古今集
[十三代集]
新勅撰集
続後撰集
続古今集
続拾遺集
新後撰集
玉葉集
続千載集
続後拾遺集
風雅集
新千載集
新拾遺集
新後拾遺集
新続古今集

古今和歌集の四季の歌

古今和歌集の春の歌

袖ひちてむすびし水のこほれるを
春立つ今日の風や解くらむ

紀貫之

【意味】
袖が濡れて、すくって飲んだ水が凍っていたのを、立春の今日の風が解かしているだろうか。

雪立ち木の芽もはるの雪降れば
花なき里も花ぞ散りける

紀貫之

【意味】
霞が立ち木の芽もふくらむ春になって、冬の名残の雪が降れば、まだ花の咲かぬ里も、花が散っているように見える。

春来ぬと人は言へども鶯の
鳴かぬ限りはあらじとぞ思ふ

壬生忠岑

【意味】
春が来たと人は言うけれども、鶯が鳴かない間はまだ春ではあるまいと思う。

春日野の若菜摘みにや白妙の
袖ふりはへて人の行くらむ

紀貫之

【意味】
春日野の若菜を摘みに行くのか、白妙の袖を振りながら人々はわざわざ出かけて行くようだ。

青柳の糸よりかくる春しもぞ
乱れて花のほころびにける

紀貫之

【意味】
青柳が糸を縒って掛けている春、そのような折も折、かえって糸が乱れて花も綻び開いたことだ。

浅緑糸よりかけて白露を
玉にも貫ける春の柳か

僧正遍昭

【意味】
浅緑色の糸を縒って掛けて、白露を玉として貫いている春の柳よ。

色よりも香こそあはれと思ほゆれ
誰が袖触れし宿の梅ぞも

読人知らず

【意味】
花の色よりも香の方が素晴らしいと思われる、いったい誰の袖が触れて、その移り香の薫るこの家の梅なのだろうか。

梅の花にほふ春べはくらぶ山
闇に越ゆれどしるくぞありける

紀貫之

【意味】
梅の花が香る春の頃には、暗いという名を持つくらぶ山を闇夜に越えても、かぐわしい香でその在り処がはっきりと知られることだ。

月夜にはそれとも見えず梅の花
香を尋ねてぞ知るべかりける

凡河内躬恒

【意味】
月夜には白い光にまぎれて、梅の花はそれと見分けがつかない。香りを探し求めていって、その在り処を知ることが出来るのだ。

山桜我が見に来れば春霞
峰にも尾にも立ち隠しつつ

読人知らず

【意味】
山桜の花を私が見に来ると、春霞が山にも山裾にもたなびいて花をずっと隠している。

世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし

在原業平

【意味】
この世の中にまったく桜というものが無いとするならば、春の人の気分はどれほどかのんびりとしたものだろうに。

見渡せば柳桜をこきまぜて
都ぞ春の錦なりける

素性法師

【意味】
眺め渡すと、柳と桜とをしごき取り、混ぜ合わせて、都は春の錦そのものの美しさだったよ。

桜花咲きにけらしなあしひきの
山のかひより見ゆる白雲

紀貫之

【意味】
桜の花がどうやら咲いたらしい、山の谷あいから見える白雲は。

み吉野の山辺に咲ける桜花
雪かとのみぞあやまたれける

紀友則

【意味】
吉野山に咲いている桜の花は、まるで雪かとばかり見まがうことだ。

春雨の降るは涙か桜花
散るを惜しまぬ人しなければ

大伴黒主

【意味】
春雨の降るのは涙なのか、桜の花が散るのを惜しまない人は、誰一人としていないのだから。

桜花散りぬる風のなごりには
水なき空に波ぞ立ちける

紀貫之

【意味】
桜の花が散っていった風の名残には、水のない空に花びらの余波がたっていることだ。

花の散ることやわびしき春霞
龍田の山の鶯の声

藤原後蔭

【意味】
花の散ることがつらくてたまらないのか、春霞が立っている龍田の山の鶯の鳴き声は。

蛙鳴く井手の山吹散りにけり
花の盛りに逢はましものを

読人知らず

【意味】
蛙の鳴く井手の山吹が散ってしまった。花の盛りに出逢いたかったのに。

古今和歌集の夏の歌

五月待つ花橘の香をかげば
昔の人の袖の香ぞする

読人知らず

【意味】
時鳥のやって来る五月を待っている橘の花の香をかぐと、かつて親しくしていた人の懐かしい袖の香がするように思われ、その頃の事がしみじみと思い出される。

時鳥汝が鳴く里のあまたあれば
なほ疎まれぬ思ふものから

読人知らず

【意味】
時鳥よ、お前が訪れて鳴く里は、ここだけではなくてあちこちにあるので、いとしく思うものの、やはり疎ましく思われることだ。

五月雨に物思ひをれば時鳥
夜深く鳴きていづち行くらむ

紀友則

【意味】
うっとうしい五月雨の降り続く頃、物思いに耽っていると、時鳥がまだ夜深い空を鳴きながら飛んで行くが、いったいどこに行くのだろう。

夏の夜のふすかとすれば時鳥
鳴く一声に明くるしののめ

紀貫之

【意味】
夏の夜の横たわったと思うのもつかの間、時鳥の鳴く一声にほのぼのと空が白んできたこの明け方よ。

塵をだに据ゑじとぞ思ふ咲きしより
妹と我が寝るとこなつの花

凡河内躬恒

【意味】
咲き始めてから塵一つさえ付けて置くまいと思っている、とにかく妻と私とが共寝をする床という名の常夏の花なのだから。

古今和歌集の秋の歌

秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる

藤原敏行

【意味】
秋がやって来た、と目にははっきりと見えないけれども、風の音でそれと気付かされた。

いつはとは時は分かねど秋の夜ぞ
物思ふことの限りなりける

読人知らず

【意味】
物思いは何時というように時節によって違いがあるわけではないが、秋の夜こそは物思いの極みであることだ。

秋の野に人まつ虫の声すなり
我かと行きていざ訪(とぶら)はむ

読人知らず

【意味】
秋の野に人を待つという松虫の声がする、私を待っているのかと、さあ尋ねて行ってみよう。

春霞かすみて去にし雁は
今ぞ鳴くなる秋霧の上に

読人知らず

【意味】
春霞の中をかすんで去って行った雁が、今またやって来て鳴いている、秋霧の上に。

秋萩の花咲きにけり高砂の
尾上の鹿は今や鳴くらむ

藤原敏行

【意味】
秋萩の花が咲いた高砂の峰に住む鹿は、今頃鳴いているだろうか。

女郎花憂しと見つつぞ行き過ぐる
男山にし立てりと思へば

布留今道

【意味】
女郎花を気懸かりで何度も見ながら通り過ぎたことだ。とにかく女という名を持ちながら、選りに選って男という名を持つ男山に立っていると思うので。

宿りせし人の形見か藤袴
忘られがたき香に匂ひつつ

紀貫之

【意味】
泊まっていった人の形見の品か、この藤袴という袴は。忘れることができないような懐かしい香で匂い続けている。

秋の野の草の袂か花薄
穂に出てて招く袖と見ゆらむ

在原棟梁

【意味】
秋の野の草の衣の袂なのか、この花薄は。だから穂が出ると、恋の思いをあらわに出して、慕う人を招く袖と見えるのだろう。

我のみやあはれと思はむきりぎりす
鳴く夕影の大和撫子

素性法師

【意味】
私だけが可憐と思うのだろうか、蟋蟀が鳴く夕方の日の光に映える撫子の花を。

白露の色は一つをいかにして
秋の木の葉を千ぢに染むらむ

藤原敏行

【意味】
白露の色は白一色なのに、どのようにして秋の木の葉を色とりどりに染めるのだろうか。

秋の露色々異に置けばこそ
山の木の葉の千くさなるらめ

読人知らず

【意味】
秋の露が色とりどりに置くからこそ、山の木の葉が様々に色づくのだろう。

秋霧は今朝はな立ちそ佐保山の
柞の黄葉よそにても見む

読人知らず

【意味】
秋霧は今朝は立たないでほしい、佐保山の柞の黄葉を、せめて遠くからでも見ようと思うから。

久方の雲の上にて見る聞くは
天つ星とぞあやまたけれる

藤原敏行

【意味】
宮中で拝見する菊は、雲の上ということで、天空の空と見まがうばかりだ。

龍田川紅葉乱れて流るめり
渡らば錦中や絶えなむ

読人知らず

【意味】
龍田川には紅葉が散り乱れて流れているようだ。川を渡ったならば、紅葉の錦が真中から断ち切れてしまうだろうか。

龍田川もみぢ葉流る神なびの
三室の山に時雨降るらし

読人知らず

【意味】
龍田川に紅葉の葉が流れている、上流の神なびの三室山に時雨が降って、紅葉を散らしているらしい。

龍田姫手向くる神のあればこそ
秋の木の葉の幣と散るらめ

兼覧王

【意味】
龍田姫が手向けをする神があるからこそ、秋の木の葉が幣となって散るのだろう。

風吹けば落つるもみぢ葉水清み
散らぬ影さへ底に見えつつ

凡河内躬恒

【意味】
風が吹くと散り落ちて、池の水面に浮かぶ紅葉の葉、それに水が清く澄んでいるので、まだ散らぬ紅葉が映って、水底にずっと見えている。

穂にも出でぬ山田を守ると藤衣
稲葉の露に濡れぬ日はなし

読人知らず

【意味】
まだ穂も出ない山田の番をするということで、この粗末な衣が、稲葉の露で濡れない日はない。

夕月夜小倉の山に鳴く鹿の
声のうちにや秋は暮るらむ

紀貫之

【意味】
ほの暗い小倉山にわびしげに鳴く鹿の声と共に、秋は暮れてゆくのだろうか。

古今和歌集の冬の歌

雪降れば冬籠りせる草も木も
春に知られぬ花ぞ咲きける

紀貫之

【意味】
雪が降ると、冬籠りをしている草にも木にも、春には知られない花が咲いたことが。

み吉野の山の白雪積もるらし
故里寒く成りまさるなり

坂上是則

【意味】
吉野山の白雪が降り積もったらしい、ここ古京奈良では寒さが一段と募っている。

浦近く降りくる雪は
白波の末の松山越すかとぞ見る

藤原興風

【意味】
海岸近く降ってくる雪は、白波が末の松山を越しているのかと思うばかりに見えることだ。

み吉野の山の白雪踏み分けて
入りにし人のおとづれもせぬ

壬生忠岑

【意味】
吉野山の白雪を踏み分けて、山奥に入って行ったあの人からは、その後、便り一つとてもない。

雪降れば木毎に花ぞ咲きにける
いづれを梅と分きて折らまし

紀友則

【意味】
雪が降ると、どの木にも花が咲いているように見える、どれを梅の花と見分けて折ったらよいのだろうか。

昨日といひ今日とくらしてあすか川
流れて早き月日なりけり

春道列樹

【意味】
昨日はどうだった今日はこうだったと言いながら暮らしているうちに、明日となる、その飛鳥川の流れではないが、早く過ぎ去る月日だったよ。

まとめ|おすすめ書籍

いかがでしたでしょうか。
日本の和歌史、そして日本文化としても重要な位置を占める、古今和歌集。
お気に入りの歌が見つかれば幸いです。


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