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栄花物語「世の響き」原文と現代語訳・解説・問題|高校古典

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栄花物語(えいがものがたり)は作者未詳の歴史物語で、平安時代に書かれました。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる栄花物語の中から「世の響き(よのひびき)」について詳しく解説していきます。

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栄花物語「世の響き」の解説

栄花物語でも有名な、「世の響き」について解説していきます。

栄花物語「世の響き」の原文

中宮は若宮の御事の定まりぬるを、例の人におはしまさば、ぜひなくうれしうこそは思し召すべきを、

「上は道理のままにとこそは思しつらめ。かの宮も、さりともさようにこそはあらめと思しつらむに、かく世の響きにより、引き違へおぼし掟つるにこそあらめ。さりともと御心の中の嘆かしうやすからぬことには、これをこそ思し召すらむに、いみじう心苦しういとほしう、若宮はまだいと幼くおはしませば、おのづから御宿世にまかせてありなむものを。」

など思し召いて、殿の御前にも、

「なほこのこと(*)いかでさらでありにしがなとなむ思ひ侍る。かの御心の中には年ごろ思し召しつらむ事の違ふをなむ、いと心苦しうわりなき。」

など、泣く泣くといふばかりに申させ給へば、殿の御前、

「げにいとありがたきことにもおはしますかな。またさるべきことなれば、げにと思ひ給へてなむ掟て仕うまつるべきを、上おはしまして、あべいことどもをつぶつぶと仰せらるるに、『いな、なほ悪しう仰せらるることなり。次第にこそ。』と奏し返すべきことにも侍らず。世の中いとはかなう侍れば、かくて世に侍るをり、さやうならむ御ありさまも見奉り侍りなば、後の世も思ひなく心やすくてこそ侍らめとなむ思ひ給ふる。」

と申させ給へば、またこれも理の御事なれば、返し聞こえさせ給はず。

栄花物語「世の響き」の現代語訳

中宮は若宮(=敦成親王)が東宮になることが決まったことを、普通の人でいらっしゃるならば、言うまでもなくうれしくお思いになるはずだが、

「一条天皇は兄が弟よりも優先される(=第一皇子の敦康を東宮に)ということにとお思いになっているだろう。
あちらの宮(=敦康親王)も、そうはいってもやはりそのよう(=自分が東宮になる)だろうと思っていらっしゃるであろうのに、このような世間での評判のために、(天皇は)予定を変えて(敦康親王を東宮にと)心にお決めになったのであろう。
そうはいってもと(敦康親王は)お心の中で嘆かわしく心穏やかでないことだと、この事をお思いになっているだろうから、とても心苦しく気の毒で、若君はまだとても押さなくていらっしゃるので、自然と前世からの因縁に任せているのがよいのに。」

などとお思いになって、殿(=父藤原道長)にも、

「やはりこのことはなんとかしてそうならないようにしたいものだなぁと思っています。
あの(敦康親王の)お心の中では、長年(自分が東宮になると)お思いになっていたようなことが食い違うことを、とても心苦しくてやりきれない。」

などと、泣きながらといっていいほど申し上げなさるので、殿は、

「本当にとてもめったにないことでいらっしゃるなあ。
やはりそうなる(=敦康親王が東宮になる)はずのことであるので、本当に思い申しあげてお取決め申しあげるべきだが、一条天皇がいらっしゃって、そうなる(=敦成親王が東宮になる)はずのことを詳しくおっしゃるので、『いや、やはりよろしくないおっしゃりごとです。順序通りに。』と言い返し申しあげるべきことでもありません。
世間はとても頼りなくございますので、(私が)このように世におります(=執政でいます)時、そのようなご様子もお見申しあげておりましたならば、後世も心配なく安心でしょうと思います。」

と申しあげなさると、やはりこれも道理にかなったことなので、言い返し申しあげなさらない。

栄花物語「世の響き」の単語・語句解説

[例の人]
普通の人。

[ぜひなくうれしう]
言うまでもなくうれしく。

[世の響き]
世間での評判。

[嘆かしうやすからぬこと]
嘆かわしく心穏やかでないこと。

[心苦しういとほしう]
心苦しく気の毒で。

[年ごと]
ここでは”長年”や”多くの歳月”という意味。

[つぶつぶと]
ここでは”詳しく”や”つぶさに”といった意味。

[奏し返す]
言い返し申しあげる。

*栄花物語「世の響き」でテストによく出る問題

○問題:「このこと(*)」とはどのような事を指しているか。
答え:兄ではなく弟を先に東宮にすると一条天皇がこことにお決めになっていること。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は栄花物語でも有名な、「世の響き」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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