栄花物語「今さらのご対面」原文と現代語訳・解説・問題|平安時代の歴史物語

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栄花物語(えいがものがたり)は平安時代後期の歴史物語で、作者は未詳となっています。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる栄花物語の中から「今さらのご対面」について詳しく解説していきます。

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栄花物語「今さらのご対面」の解説

栄花物語でも有名な、「今さらのご対面」について解説していきます。

栄花物語「今さらのご対面」の原文

はかなく秋にもなりぬれば、世の中いとどあはれに、萩吹く風の音も、遠きほどの御けはひのそよめきに思しよそへられけり。

播磨よりも但馬よりも、日々に人参り通ふ。
北の方の御心地いやまさりに重りにければ、ことごとなし、

「帥殿今一度見奉りて死なむ、帥殿今一度見奉りて死なむ。」

といふことを、寝ても覚めてものたまへば、宮の御前もいみじう心苦しきことに思し召し、この御はらからの主たちも、いかなるべきことにかと思ひまどはせど、なほいと恐ろし。
北の方は切に泣き恋ひ奉り給ふ。
見聞き奉る人々も、やすからず思ひ聞こえたり。

播磨にはかく(*)と聞き給ひて、いかにすべきことにかはあらむ、事の聞こえあらば、わが身こそはいよいよ不用の者になりはてて、都を見でやみなめなど、よろづに思しつづけて、ただとにかくに御涙のみぞ隙なきや。

さはれ、この身はまたはいかがはならむとする、これにまさるやうはと、思しなりて、親の限りにおはせむ見奉りたりとて、公もいとど罪せさせ給ひ、神仏も憎ませ給はば、なほさるべきなめりとこそは思はめと、思したちて、夜を昼にて上り給ふ。

さて宮の内には事の聞こえあるべければ、この西の京に西院といふ所に、いみじう忍びて夜中におはしたれば、上も宮もいと忍びてそこにおはしましあひたり。
この西院も、殿のおはしまししをり、この北の方のかやうの所をわざと尋ねかへりみさせ給ひしかば、そのをりの御心ばへどもに思ひて、洩らすまじき所を思しよりたりけり。

母北の方も、宮の御前も、御方々も、殿も見奉りかはさせ給ひて、また今さらのご対面の喜びの御涙も、いとおどろおどろしういみじ。
上はかしこく御車に乗せ奉りて、おましながらかきおろし奉りける。
いと不覚になりにける御心地なりけれど、よろづ騒がしう泣く泣く聞こえ給ひて、

「今は心やすく死にもし侍るべきかな。」

と、喜び聞こえ給ふも、いかでかはおろかに、あはれに悲しとも世の常なりや。

栄花物語「今さらのご対面」の現代語訳

あっけなく秋になってしまったので、世間はいっそう趣深く、萩の葉に吹く風の音も、遠いところ(=流刑の地)のご様子のそよめきに(北の方は)自然となぞらえなさった。

播磨からも但馬からも、(北の方のいる京に)毎日人が頻繁に参上する。
北の方のご病気がますます重くなってきたので、他のことはなく、

「師殿をもう一度お見申し上げて死にたい、師殿をもう一度お見申し上げて死にたい。」

ということを、寝ても覚めてもおっしゃるので、宮の御前(=中宮定子)もたいそう気の毒なこととお思いになって、(北の方の)ご兄弟たちも、どうしたらよいことだろうかと思い悩むけれど、(伊周にあわせることは)やはりとても恐ろしい。

北の方はひたすら(師殿を)泣いて恋い慕い申しあげなさる。
(それを)見聞き申しあげる人々も、心穏やかでなく思い申しあげている。

播磨(の師殿)はこのようだとお聞きになって、どうしたらよいことだろうか、(この)ことがもしうわさになれば、私の身はますます役に立たない者になってしまって、都を見ないで終わってしまうだろうなどと、何事につけても思い続けなさって、ただ何かにつけてお涙だけが絶え間なく流れるよ。

どうにでもなれ、この身はこれ以上どうなろうと思うのか、これにまさるような(悲しくつらい)ことがあるだろうかと、お思いになって、親が臨終でいらっしゃるのにお会い申しあげたからといって、朝廷もいっそう罪をおとがめなさり、神仏も憎みなさるのならば、やはり(それは)そうあるはず(の運命)であるようだと思おうと、お思い立ちなさって、昼夜兼行で上京なさる。

そうして(中宮のいらっしゃる)宮中ではこの事がうわさになりそうなので、この(都の)西の京の西院というところに、たいそうこっそりと夜中に(師殿が)いらっしゃったので、母上も中宮にたいそう人目を避けてそこにいらっしゃって対面なさった。

子の西院も、殿(=父の故関白藤原道隆)がいらっしゃった時、この北の方がこのようなところを特に訪ねてお世話をなさっていたので、その時の(北の方の)お心遣いなどを思って(感謝して)、(この秘密を)洩らすはずがない所(としてこの西院)を思いつきなさった。

母北の方も、中宮も、中宮定子の妹原子らも、殿(=伊周)もお互いの顔を見交わし申しあげなさって、やはり今改めてのご対面の喜びで流すお涙も、たいそう驚くほど激しい。

母上は上手にお車にお乗せ申しあげて、御座所にのせたまま(お車から)降ろし申しあげた。
たいそう気を失ってしまうほどの(うれしい)お気持であったけれど、いろいろ(なことを)騒がしいほど泣きながら申しあげなさって、

「もう今では安心して死ぬこともできますよ。」

と、お喜び申し上げなさるのも、どうして普通のことだろうか(、いや、ふつうのことではない)、しみじみ悲しいというのも平凡すぎて(言うもおろか)であるよ。

栄花物語「今さらのご対面」の単語・語句解説

[はかなく]
あっけなく。

[参り通ふ]
ここでは”頻繁に参上する”という意味。

[ことごと(異事)]
”他のこと”や”別のこと”という意味。

[いかなるべきことにか]
どうしたらよいことだろうか。

[なほ]
ここでは”やはり”や”なんといっても”という意味。

[御涙のみぞ隙なきや]
お涙だけが絶え間なく流れるよ。

[限り]
ここでは”臨終”や”死に際”という意味。

[さるべきなめり]
そうあるはず(の運命)であるようだ。

[おはしましあひたり]
いらっしゃって対面なさった。

[わざと]
ここでは”特に”や”特別に”、”とりわけ”といった意味。

[訪ねてお世話をなさっていたので]
訪ねてお世話をなさっていたので。

[思しよりたりけり]
思いつきなさった。

[おどろおどろしういみじ]
驚くほど激しい。

[不覚になりける御心地]
気を失ってしまうほどの気持ち。

*栄花物語「今さらのご対面」でテストによく出る問題

○問題:「かく(*)」は何を指しているか。
答え:

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は栄花物語でも有名な、「今さらのご対面」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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