こころのあらすじと内容解説|心理解釈や意味も|夏目漱石|テスト出題傾向

「こころ」は、夏目漱石による小説作品です。
高校の教科書などで読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。

今回はそんな「こころ」の作品内容の解説やあらすじについてご紹介したいと思います。

【目次】
こころとは
解説・出題のポイント
まとめ

こころとは

こころは1914年に発表された夏目漱石の晩年を代表する小説で、上「先生と私」中「両親と私」下「先生と遺書」の三部で構成されています。

エゴイズム(利己主義)と人間の心の機微、犯した罪との葛藤が描かれたこの作品は今でも多くの人に読まれ続け、高校の教科書にも掲載されています。

登場人物は下記の4人です。

○私
上・中の語り手で、田舎から出てきた学生。

○先生
仕事もせず、妻と2人で暮らしている。

○先生の妻
下の前半では「お嬢さん」と書かれている。名前は「静(しず)。

○K
先生の親友で、故郷も同じ。僧侶の次男。

【こころのあらすじ】
大学を卒業して帰省した私のもとに先生から遺書が届き、その生涯を打ち明ける。
先生は学生時代、美しいお嬢さんのいる下宿に、生活に困窮していた友人のKを同居させた。
やがてKからお嬢さんへの恋心を打ち明けられると、Kの信条につけこんで恋を妨げようとし、更にKを出し抜いて奥さんからお嬢さんとの結婚の許しを得る。
それを知ったKは自殺し、その後お嬢さんと結婚した先生は妻にも真実を打ち明けられず、罪の意識を背負ったまま生き続ける。
そして時代が明治から昭和の新しい時代に変わる時、先生も自殺をする。

解説

この章では「こころ」の作品解説をしていきたいと思います。

出題のポイント

高校の教科書などに載っているという事は、学校のテストにも出題されるという事です。
そこでまずは、この「こころ」についてどんなテスト問題が出されやすいか、という傾向をご紹介します。

【こころの出題傾向】
・お嬢さんに恋をする前と後では、Kはどのように変わったか。
・「精神的に向上心のないものはばかだ」という言葉を私はどんな意図で口にしたか。Kはどう受け止めたか。
・Kの自殺の原因

上記のような設問の他、読書感想文などを提出する事もあります。

抑えておくべき点

「こころ」で抑えておくべき点は、私とKの心理推移です。
最低限、下記の3つの場面での心理を理解しておく必要があります。

①散歩中、この恋についての意見を求められる
②お嬢さんとの結婚を申し込む
③Kの自殺

①散歩中、この恋についての意見を求められる

私がKに向かって、この際なんで私の批評が必要なのかと尋ねた時、彼はいつもにも似ない悄然(しょうぜん)した口調で、自分の弱い人間であるのが実際恥ずかしいといいました。
そうして迷っているから自分で自分が分らなくなってしまったので、私に公平な批評を求めるより外に仕方がないといいました。

私はすかさず迷うという意味を聞きただしました。
彼は進んでいいか退いていいか、それに迷うのだと説明しました。

私はすぐ一歩先へ出ました。そうして退こうと思えば退けるのかと彼に聞きました。
すると彼の言葉がそこで不意に行き詰りました。彼はただ苦しいといっただけでした。
実際彼の表情には苦しそうなところがありありと見えていました。

もし相手がお嬢さんでなかったならば、私はどんなに彼に都合のいい返事を、その渇き切った顔の上に慈雨(じう)の如く注いでやったか分りません。
私はそのくらいの美しい同情をもって生れて来た人間と自分ながら信じています。
しかしその時の私は違っていました。

Kが私に対して意見を求めると、私はKに対して「退こうと思えば退けるのか」と質問します。
しかしKは言葉に詰まり「ただ苦しい」とだけ答えます。

この時のKの心情は、「お嬢さんとの恋を成就させる方向に進むと、これまでの自分の生き方に反してしまう。しかし恋を諦める事も出来ず、苦しい」という様に考えられます。

その後私は「精神的に向上心のないものはばかだ」とKに言います。
これは以前2人で行った旅行中にKから言われた言葉で、Kが信念とする言葉を言い返す事によってKの恋を批判し、完全に諦めさせようとしたのです。

②お嬢さんとの結婚を申し込む

「もうその話は止めよう」と彼がいいました。
彼の眼にも彼の言葉にも変に悲痛なところがありました。私はちょっと挨拶ができなかったのです。

するとKは、「止めてくれ」と今度は頼むようにいい直しました。
私はその時彼に向って残酷な答を与えたのです。狼が隙を見て羊の咽喉笛(のどぶえ)へ食い付くように。

「止めてくれって、僕がいい出した事じゃない、もともと君の方から持ち出した話じゃないか。しかし君が止めたければ、止めてもいいが、ただ口の先で止めたって仕方があるまい。君の心でそれを止めるだけの覚悟がなければ。一体君は君の平生の主張をどうするつもりなのか」
私がこういった時、背の高い彼は自然と私の前に萎縮して小さくなるような感じがしました。

彼はいつも話す通りすこぶる強情な男でしたけれども、一方ではまた人一倍の正直者でしたから、自分の矛盾などをひどく非難される場合には、決して平気でいられない質だったのです。

私は彼の様子を見てようやく安心しました。すると彼は卒然「覚悟?」と聞きました。
そうして私がまだ何とも答えない先に「覚悟、――覚悟ならない事もない」と付け加えました。
彼の調子は独言のようでした。また夢の中の言葉のようでした。

私に責められたKは「覚悟ならないこともない。」と返します。
これを聞いた私は、Kがお嬢さんへの恋心を諦める覚悟の事だと理解しました。

しかし徐々に、覚悟とは恋に対して進んで行く覚悟の事ではないか、と思い始めます。
そうして私も覚悟を決めると、奥さんに対してお嬢さんとの結婚の承諾を求め、無事認められたのです。

彼は「病気はもう癒いのか、医者へでも行ったのか」と聞きました。
私はその刹那に、彼の前に手を突いて、あやまりたくなったのです。

しかも私の受けたその時の衝動は決して弱いものではなかったのです。
もしKと私がたった二人曠野(こうや)の真中にでも立っていたならば、私はきっと良心の命令に従って、その場で彼に謝罪したろうと思います。

しかし奥には人がいます。私の自然はすぐそこで食い留められてしまったのです。
そうして悲しい事に永久に復活しなかったのです。

私はKの普段どおりの優しさに触れ、自身がKを出し抜いた事を謝ろうとしますが、言い出せません。
その後も打ち明けることも出来ずに数日が経ち、奥さんがKに結婚の事を話した事を知ります。

奥さんのいうところを総合して考えてみると、Kはこの最後の打撃を、最も落ち付いた驚きをもって迎えたらしいのです。
Kはお嬢さんと私との間に結ばれた新しい関係について、最初はそうですかとただ一口いっただけだったそうです。

しかし奥さんが、「あなたも喜んで下さい」と述べた時、彼ははじめて奥さんの顔を見て微笑を洩らしながら、「おめでとうございます」といったまま席を立ったそうです。
そうして茶の間の障子を開ける前に、また奥さんを振り返って、「結婚はいつですか」と聞いたそうです。
それから「何かお祝いを上げたいが、私は金がないから上げる事ができません」といったそうです。

奥さんの前に坐っていた私は、その話を聞いて胸が塞るような苦しさを覚えました。

奥さんの話を聞いて私が「胸が塞るような苦しさ」を覚えたのは、Kが親友に裏切られお嬢さんも奪われた事を知った時のKの心情を想い、自責の念にかられたからでした。

その後もKは私に対して以前通りに接します。
その様子を見て私は「おれは策略で勝っても人間としては負けたのだ」と、策略で恋の争いに勝ったものの、裏切られてなお私を責めないKの方が人間としても立派である事を感じます。

③Kの自殺

Kに話そうか迷う私でしたが、ともかくも翌日まで待とうと先延ばしにします。
しかしその晩、Kが私宛の遺書を遺して自殺してしまいました。

遺書には私に対する文句が書かれているのではないか、と恐る恐る読み始めますが、そのような言葉は書かれておらず、これで奥さんやお嬢さんに軽蔑されずに済む、助かったと安心します。

必要な事はみんな一口ずつ書いてある中にお嬢さんの名前だけはどこにも見えません。
私はしまいまで読んで、すぐKがわざと回避したのだという事に気が付きました。

しかし私のもっとも痛切に感じたのは、最後に墨の余りで書き添えたらしく見える、もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろうという意味の文句でした。
私は震える手で、手紙を巻き収めて、再び封の中へ入れました。私はわざとそれを皆なの眼に着くように、元の通り机の上に置きました。

私宛の手紙をわざと目につくように置いたのは、Kの自殺と私が無関係であると示せるからでした。
そしてここでKの言っていた「覚悟」とは自殺する覚悟だったのだと気づくのです。

私は、「眼の前の光景が官能を刺激して起る単調な恐ろしさ」ばかりではなく、「忽然(こつぜん)と冷たくなったこの友達によって暗示された運命の恐ろしさ」を深く感じます。
この先も友達を死に追いやったという事実を背負って生きていかなければいけない、という事を感じたのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は夏目漱石の小説作品「こころ」の内容解説・あらすじについてご紹介しました。
高校の教科書などにも載っている作品ですので、テスト対策とより深い理解に繋がれば幸いです。

こころの全文については青空文庫にて読む事も出来ます。
その他については下記の関連記事をご覧下さい。

[関連記事]
夏目漱石の生涯と作品年表|近代文学を代表する作家
山月記羅生門
近代文学作品年表
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最後に、漱石自身が書いた「こころ」の広告文をご紹介します。

自己の心を捕へんと欲する人々に、
人間の心を捕へ得たる此作物を奨む。


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