今昔物語集「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」原文と現代語訳・解説・問題

すすき
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今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)は平安時代末期に書かれた説話集で、作者はわかっていません。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる今昔物語集の中から「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」について詳しく解説していきます。

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今昔物語集「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」の解説

今昔物語集でも有名な、「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」について解説していきます。

今昔物語集「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」の原文

今は昔、藤原為時といふ人ありき。
一条院の御時に、式部丞の労によりて受領にならむと申しけるに、除目の時、闕国なきによりてなされざりけり。

そののちに、このことを嘆きて、年を隔てて直し物行はれける日、為時、博士にはあらねどもきはめて文花ある者にて、申し文を内侍につけて奉り上げてけり。
その申し文にこの句あり。

苦学寒夜紅涙霑襟
除目後朝蒼天在眼

と。
内侍これを奉り上げむとするに、天皇のそのときに御寝なりて、御覧ぜずなりにけり。

しかる間、御堂、関白にておはしましければ、直し物行はせ給はむとて内裏に参らせ給ひたりけるに、この為時がことを奏せさせ給ひけるに、天皇、申し文を御覧ぜざるによりて、その御返答なかりけり。
しかれば関白殿、女房に問はしめ給ひけるに、女房申すやう、

「為時が申し文を御覧ぜしめむとせしとき、御前御寝なりて御覧ぜずなりにき。」

しかれば、その申し文を尋ね出でて、関白殿、天皇に御覧ぜしめ給ひけるに、この句あり。
しかれば、関白殿、この句微妙に感ぜさせ給ひて、殿の御乳母子にてありける藤原国盛といふ人のなるべかりける越前守をとどめて、にはかにこの為時をなむなされにける。

これ、ひとへに、申し文の句を感ぜらるるゆゑなりとなむ、世に為時をほめけるとなむ、語り伝へたるとや。

今昔物語集「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」の現代語訳

今となっては昔のことだが、藤原為時という人がいた。
一条院の御代に、式部丞として(長年務めた)功労を理由として、国司になりたいと申請したが、地方官の任命式のときに、国司が欠員になっている国がなかったので、(朝廷は)任命なさらなかった。

その後、(為時は)国司になれなかったことを嘆いて、翌年になって除目の修正が行われた日に、為時は、文章博士ではなかったが、きわめて詩文に長じた人であって、(朝廷に)奉呈したのであった。
その申請書には、次の句があった。

苦労して学問に励んだ寒い夜には、血の涙が襟を濡らすほどつらい思いをして勉強しました。
(それなのに)除目の翌朝は、期待を裏切られて大空を仰いで嘆息したことです。

と。
内侍はこの申請書を奉呈しようとしたが、御覧にならないままになってしまった。

さて、道長公は(当時)関白でおいでだったので、除目の修正のことをなさろうとして、宮中に参内なさったときに、この為時のことを奏上なさったけれども、天皇は、申請書をご覧になっていらっしゃらなかったので、そのご返事がなかった。
関白殿が女房に問いただしなさったところ、女房が申すには、

「為時の申請書をお目にかけようとしたとき、帝はお休みになって(いらっしゃって)御覧にならなかったのです。」

そこで、その申請書をさがし出して、関白殿が天皇にお目にかけたところ、詩句が書いてあった。
関白殿は、この詩句をすばらしいものであると感心なさって、関白殿の乳母の子であった藤原国盛という人がなるはずであった越前守(に任命するの)を中止して、急にこの為時を任命されたのであった。

これはまったく(道長公が)申請書にあった句に感心なさったからだと、世間で為時(の文才)をほめたと語り伝えているということだ。

今昔物語集「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」の単語・語句解説

[一条院の御時に]
一条院の御代に。

[受領ならむ]
国司になりたい。

[なされざりけり]
任命なさらなかった。

[奉り上げてけり]
奉呈したのであった。

[蒼天在眼(そうてんまなこにあり)]
期待を裏切られて大空を仰いで嘆息するという気持ちを表す。

[御寝なりて]
お休みなさっていて。

[御覧ぜずになりけり]
御覧にならないままになってしまった。

[直し物行はせ給はむ]
除目修正のことをなさろうとして。

[内裏に参らせ給ひたりけるに]
宮中に参内なさったときに。

[奏させ給ひけるに]
奏上なさったけれども。

[問はしめ給ひける]
問いただしなさった。

[御覧ぜしめむ]
お目にかけよう。

[殿の御乳母子にてありける]
関白殿の乳母の子であった。

[越前守をとどめて]
越前守(に任命するの)を中止して。

*「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」でテストによく出る問題

○問題:道長が果たした役割は何か。
答え:為時の漢詩に感動し、希望通り国司にした。それによって為時は世の人々から詩才を褒められるようになった。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は今昔物語集でも有名な、「藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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