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増鏡「時頼と時宗」原文と現代語訳・解説・問題|高校古典

オキザリス
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増鏡(ますかがみ)は作者不明の歴史物語で、南北朝時代に書かれました。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる増鏡の中から「時頼と時宗」について詳しく解説していきます。

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増鏡「時頼と時宗」の解説

増鏡でも有名な、「時頼と時宗」について解説していきます。

増鏡「時頼と時宗」の原文

故時頼朝臣は康元元年にかしら下ろしてのち、忍びて諸国を修行しありきけり。
それも国々のありさま、人の愁へなど、詳しくあなぐり見聞かんのはかりことにてありける。

あやしの宿りに立ち寄りては、その家主がありさまを問ひ聞く。
理ある愁へなどの埋もれたるを聞きひらきては、

「我はあやしき身なれど、昔、よろしき主持ち奉りし、いまだ世にやおはすると、消息奉らん。持てまうでて聞こえ給へ。」

など言へば、

「なでふことなき修行者の、何ばかり。」

とは思ひながら、言ひ合はせて、その文を持ちて東へ行きて、しかじかと教へしままに言ひて見れば、入道殿の御消息なりけり。

「あなかま、あなかま。」

とて、長く愁へなきやうにはからひつ。
仏神の現れ給へるかとて、みな額をつきて喜びけり。

かやうのこと、すべて数知らずありしほどに、国々も心づかひをのみしけり。
最明寺の入道とぞいひける。

それが子なればにや、今の時宗朝臣もいとめでたき者にて、

「本院のかく世をおぼし捨てんずる、いとかたじけなくあはれなる御ことなり。故院の御おきては、やうこそあらめ。なれど、そこらの御兄にて、させる御誤りもおはしまさざらん。いかでかたちまちに名残なくはものし給ふべき。いとたいだいしきわざなり。」

とて、新院へも奏し、かなたこなたなだめ申して、東の御方の若宮を坊に奉りぬ。
十月五日、節会行はれて、いとめでたし。

かかれば、少し御心慰めて、このきはに強ひて背かせ給ふべき御道心にもあらねば、おぼしとまりぬ(*)。
これぞあるべきことと、あいなう世の人も思ひ言ふべし。

増鏡「時頼と時宗」の現代語訳

故時頼朝臣は、康元元年に髪を切って出家した後、人目につかないようにして諸国を修行して歩き回った。
それも、国々の様子や、人々の嘆き訴えることなどを、詳しく探し求めて見聞きするということの計画であったのだよ。

粗末な家に立ち寄っては、その家主の様子を尋ね聞く。
理にかなった訴えなどで(取り上げられずに)埋もれたままになっているものを聞き出しては、

「私はいやしい身分であるけれど、昔、相当な身分の主人をお持ち申し上げたのだが、(その方が)まだ世に栄えていらっしゃると(思うので)、手紙を差し上げよう。(鎌倉に手紙を)持って参上して(事情を)申し上げなさい。」

などと言うので、

「どれほどのこともない修行者が、どのくらい(のことができようか、いやできまい)。」

とは思うけれども、(仲間と)相談して、その手紙を持って鎌倉へ行って、これこれと(修行者が)教えたままに言ってみると、時頼様のお手紙であったよ。(役人は)

「ああ、やかましい、しっ、静かに。」

と言って、今後しばらく訴えが起こらないように取り計らった。
仏様や神様などが現れなさったかといって、みんな額をついて喜んだ。

このようなことは、まったく数がわからないほど(多く)あったので、国々の役人も(悪政を行わないように)大変心配りをした。
(このような時頼のことを)最明寺の入道といった。
その方の子であるからであろうか、今の(執権の)時宗朝臣もたいそうすばらしい人であって、

「後深草上皇がこのように御出家なさるようなことは、大変恐れ多く、お気の毒なことである。故後嵯峨上皇のご遺勅は、理由があるだろう。けれども、(後深草上皇は)たくさんの皇子の御兄上で会って、これというほどのご過失もおありにあらないだろう。どうして急に(皇位と)関係がなくなってしまわれてよいだろうか(、いやよくない)。大変困ったことだ。」

と言って亀山上皇にも奉上し、あちらもこちらも取りなし申し上げて、後深草上皇の皇子を(御宇多天皇の)皇太子にお立て申し上げた。
十月五日、立太子の節会が行われて、大変喜ばしいことだ。

こういうわけだから、(後深草上皇は)少しお心が晴れて、このときに、無理に御出家なさるほど仏道の御信心でもないので、(ご出家を)とどまりなさった。
これがあるべきことだと、無遠慮に世間の人も思いを口にするだろう。

増鏡「時頼と時宗」の単語・語句解説

[かしら下ろしてのち]
髪を切って出家した後。

[はかりことにてありける]
計画であったのだよ。

[あやしの宿りに]
粗末な家に。

[理ある愁へなどの埋もれたるを]
理にかなった訴えなどで埋もれたままになっているものを。

[消息]
手紙。

[何ばかり]
どのくらい。

[入道殿の御消息なりけり]
時頼様のお手紙であったよ。

[それが子なればにや]
その方の子であるかたであろうか。

[いとめでたき者にて]
たいそうすばらしい人であって。

[いとたいだいしきわざなり]
たいへん困ったことだ。

[御道心にもあらねば]
仏道の御信心でもないので。

*増鏡「時頼と時宗」でテストによく出る問題

○問題:「おぼしとまりぬ(*)」とは何を思いとどまったのか。
答え:出家すること。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は増鏡でも有名な、「時頼と時宗」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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