暑い夏が終わり、涼しくなると聞こえてくるのが虫の声。
「ああ、もう秋なんだな」と実感するとともになんとなく寂しい感じもしますよね。
ところがこれは日本人独特の感覚といえます。
その仕組みと秋の虫たちについて詳しくお伝えします。
1.秋に鳴く虫たち
俳句で「虫」といえば秋の季語で、「虫しぐれ」とは秋の草むらでたくさんの虫が競うように鳴いているさまをいいます。
その種類は実に多いのですが、鳴き声とともにいくつか代表的なものをあげてみましょう。
- スズムシ:リーンリーン
- マツムシ:チンチロリン
- コオロギ:コロコロコロ、キリキリキリ、リーリーリー
- アオマツムシ:リーリー
- カネタタキ:チンチン
- マダラスズ、ウマオイ:ジーィジーィ
- カンタン:ルー
- クツワムシ:ザー、ガチャガチャ
さて、いくつ聞いたことがありますか?
名前は聞いたことがあってもなかなか姿は思い浮かばないかも知れませんね。
気になるものはぜひ図鑑などで調べてみてくださいね。
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2.なぜ秋に鳴くのか
秋に鳴くのは卵の状態で越冬した虫たちで羽化して3~4日すると鳴き始めます。
鳴くといっても声帯があるわけではなく、体を動かしながら2枚の翅(はね)をこすり合わせることで音が出る仕組みになっています。
鳴き声にもいくつか種類があります。
- 誘い鳴き
- 本鳴き
- 争い鳴き
雌が近くにいる時に交尾を促すための鳴き声で求婚歌ともいわれます。
雌を呼び寄せるほか、自分の縄張りを守ったり集団を維持する目的があり正常歌とも呼ばれます。
雄同士が争っているときに相手を威嚇する目的の鳴き方です。
成虫になってからの寿命はおよそ40日。
子孫を残すために美しい鳴き声は秋という季節のせいかどことなく儚さを感じさせます。
実は成虫のまま越冬して春鳴く虫もいますが、あまり意識していないせいか聞こえてこないのではないでしょうか。
3.日本人の脳の仕組みと虫の声
日本では虫の声は風流なもの。
しかし、西洋では虫の声をノイズととらえるといわれ、虫の声を認識しても季節感を感じることはないようです。
また、昆虫に関して日本ほど細かく分類していないこともあり、秋に虫が鳴いてもそれがどの虫であるのか意識しません。
ましてや虫カゴに入れて鳴き声を楽しむという発想は欧米には見られません。
日本では秋が実りの季節であり、私たちに豊かな恵みをもたらしてくれるのに比べ、冬の訪れの早い北米やヨーロッパでは厳しい季節に向かう前触れとして秋にあまり良い印象がない地域もあるようです。
また、虫の声の認識には脳のメカニズムも関係しています。
日本語では母音が比較的重要であり、自然の音や虫の声を言語のように左脳でとらえています。
一方子音が重要な欧米言語ではこれらの音は音楽や雑音と同じように右脳で認識されます。
音に言葉のような意味をもたせ、そこから想像を広げていく文化的豊かさは日本語の恩恵ともいえます。
4.虫の音を楽しもう
日本では古くから虫の声を聞く風流な楽しみが行われていました。
秋の夜長、虫の声を楽しむイベントに参加してはいかがでしょうか?
玄宮園で虫の音を聞く会
今日の「玄宮園で虫の音を聞く会」は彦根城を借景に雅楽の演奏が開催されております。雨があがって、とても幻想的な雰囲気の中での「虫の音」と「雅楽」のラプソディー。贅沢なひとときを大切な方と過ごしてみてはいかがですか? pic.twitter.com/5H8fzfT5GG
— (公社)彦根観光協会 (@hikoneshi) September 25, 2015
旧彦根藩主井伊家の大名庭園は滋賀県にある回遊式の日本庭園です。
夜はライトアップされた庭園で邦楽演奏やお茶を楽しみながら虫の音を聞くことができます。
開催日時:毎年9月
開催場所:滋賀県彦根市 玄宮園
お問合せ:公益社団法人彦根観光協会
公式HP:http://www.hikoneshi.com/jp/event/articles/c/mushinone
こちらが遠いという場合、都会の住宅地でもわりと聞くことができるのは、リーリーと鳴くアオマツムシです。
また、スズムシはペットショップなどで手に入れることができます。
虫が苦手という方もその声には癒されるはず。
虫たちと秋の夜長を楽しむのもいいかも知れませんね。
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