当サイトはアフィリエイト広告を使用しています。

紫式部日記「若宮誕生」原文と現代語訳・解説・問題|平安時代の日記

ポーチュラカの写真|夏に咲く花
Sponsored

紫式部日記(むらさきしきぶにっき)は平安時代に書かれた日記で、作者は紫式部自身です。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる紫式部日記の中から「若宮誕生」について詳しく解説していきます。

Sponsored

紫式部日記「若宮誕生」の解説

紫式部日記でも有名な、「若宮誕生」について解説していきます。

紫式部日記「若宮誕生」の原文

十月十余日までも、御帳出でさせ給はず。
西のそばなる御座に、夜も昼も候ふ。

殿の、夜中にも暁にも参り給ひつつ、御乳母の懐をひき探させ給ふに、うちとけて寝たるときなどは、何心もなくおぼほれておどろくも、いといとほしく見ゆ。

心もとなき御ほどを、わが心をやりて、ささげうつくしみ給ふも、ことわりにめでたし。
あるときは、わりなきわざしかけ奉り給へるを、御紐ひき解きて、御几帳の後ろにてあぶらせ給ふ。

「あはれ、この宮の御尿に濡るるは、うれしきわざかな。この濡れたる、あぶるこそ、思ふやうなる心地すれ。」

と、喜ばせ給ふ。
中務の宮わたりの御ことを、御心に入れて、そなたの心寄せある人とおぼして、語らはせ給ふも、まことに心の内は、思ひゐたること多かり。

行幸近くなりぬとて、殿の内をいよいよつくりみがかせ給ふ。
よにおもしろき菊の根をたづねつつ、掘りて参る。

色々うつろひたるも、黄なるが見どころあるも、さまざまに植ゑ立てたるも、朝霧の絶え間に見わたしたるは、げに老いもしぞきぬべき心地するに、なぞや(*)。

まして、思ふことの少しもなのめなる身ならましかば、すきずきしくももてなし、若やぎて、常なき世をも過ぐしてまし。
めでたきこと、おもしろきことを見聞くにつけても、ただ思ひかけたりし心の引く方のみ強くて、もの憂く、思はずに、嘆かしきことのまさるぞ、いと苦しき。

いかで、今はなほ、もの忘れしなむ、思ひがひもなし、罪も深かなりなど、明けたてばうちながめて、水鳥どもの思ふことなげに遊び合へるを見る。

[水鳥を水の上とやよそに見む 我も浮きたる世を過ぐしつつ]

かれも、さこそ心をやりて遊ぶと見ゆれど、身はいと苦しかんなりと、思ひよそへらる。

紫式部日記「若宮誕生」の現代語訳

十月十日余りまでも、(中宮様は)御帳台からお出になられない。
西側のかたわらにある御在所に夜も昼もお仕えしている。

殿は、夜中にも明け方にも参上なさっては、御乳母の懐をお探りになり(若宮をかわいがりなさり)、(乳母が)心をゆるめて眠っているときなどは、正気もなく寝ぼけて目覚めるのも、とても気の毒に思われる。

(若宮の)頼りないご様子を、(殿は)いい気分になって、高くささげ上げてかわいがりなさるのも、当然ながらめでたいことである。
あるときには、とんでもないことをしかけなさってしまわれたのを、入れ紐を解かれて、御几帳の後ろでおあぶりなさる。

「ああ、この若宮の御尿に濡れるのは、うれしい出来事だなあ。この濡れてしまった(衣を)、あぶるのこそは、望みどおりのような心地がするものだ。」

と、お喜びになる。
中務の宮に関する御ことに、(殿は)ご熱心で、そちらのほうに心を傾けている者とお思いになって、(私に)お話しになるのも、本当に(私の)心の内では思案にくれていることが多い。

帝の行幸が近くなったというので、お屋敷の中をますます立派にお作りなさる。
実に美しい菊の根を探しては、(人々が菊を根から)掘って持って参上する。

色とりどりに移り変わっていくのも、黄色で見どころのあるのも、さまざまに植え並べてあるのも、朝霧の切れ間に見わたしていると、本当に老いも退いていくような気分になるのに、なぜだろうか。
まして、もの思いすることが、少しでも世間並みな身であるなら、風流らしく振る舞い、若々しい気分になって、無常のこの世をも過ごすことだろうに。

すばらしいこと、趣深いことを見たり聞いたりするにつけても、ただ思いつめた憂愁が引きつける方面のみが強くて、憂うつで、思いに任せず、嘆かわしいことの多いことが、とても苦しいのである。

どうにかして今は、やはり、物忘れしてしまおう、思うかいもない、(思い悩むのは)罪深いことだというなど、夜が明けてくれば、(外を)眺めて、水鳥たちが物思いすることもなさそうに遊びあっているのを見る。

[水鳥を、水の上にいる(自分とは)関係のないものと見ようか(いやそうは見られない)。私も(水鳥と同じく)浮かびながらこの世を過ごしているのだ。]

あの(水鳥)も、あのように気ままに遊んでいるように見えるが、その身は、とても苦しいに違いない、(私の身と)思い合わせられるのである。

紫式部日記「若宮誕生」の単語・語句解説

[うちとけて]
心をゆるめて。

[いといとほしくゆ]
ても気の毒に思われる。

[わりなきわざ]
とんでもないこと。

[思ふやうなる心地すれ]
望みどおりのような心地がするものだ。

[御心に入れて]
ご熱心で。

[思ひゐたること多かり]
思案にくれていることが多い。

[さこそ心をやりて遊ぶと見ゆれど]
あのように気ままに遊んでいるように見えるが。

[いと苦しかんなり]
とても苦しいにちがいない。

*紫式部日記「若宮誕生」でテストによく出る問題

○問題:「なぞや(*)」は何についての言葉か。
答え:屋敷の華やいだ様子に素直に喜ぶ事が出来ない自らの心について述べている。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は紫式部日記でも有名な、「若宮誕生」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

[関連記事]
紫式部日記「秋のけはひ」
古典作品一覧|日本を代表する主な古典文学まとめ

参考/おすすめ書籍


古典
Sponsored
シェアする
四季の美をフォローする
Sponsored

関連

四季の美