日本には数多くの着物産地があり、国の伝統的工芸品に指定されているものだけでも織物・染色品合わせて51品目あります。
今回はそんな日本の着物産地を一覧でまとめてご紹介します。
北海道・東北地方の着物産地一覧
北海道・東北地方の着物産地を一覧でまとめてご紹介します。
二風谷アットゥシ
二風谷アットゥシとは北海道(沙流郡平取町)で主に生産される伝統的工芸品です。
オヒョウなどの樹皮の繊維で織られる織物で、アイヌの伝統的な衣服として着られてきました。
「アッ」はニレ科のオヒョウを指し、「トゥシ」は織るという意味です。
二風谷アットゥシは、産地として形成され生産量のピークを迎えたのは18世紀の後半頃ともいわれています。
しかし残された資料が少なく、正確な起源や成り立ちはまだ不明な部分も多いため、現在も研究が進んでいます。
アットゥシは、オヒョウまたはシナノキの木の皮の内側にある靱皮(じんぴ)を材料に数ヶ月かけて糸を作り、腰機(こしばた)で織り上げます。
アイヌでは儀式に着る正装として着られていましたが、軽くて丈夫で撥水性が高かったため、北前船の船頭たちにも愛用されていました。
奥会津昭和からむし織
福島県大沼郡昭和村の伝統工芸品、「奥会津昭和からむし織」。
2017年には国の伝統的工芸品にも指定されています。
奥会津昭和からむし織は、福島県大沼郡昭和村で作られる伝統工芸品で、その名の通り”からむし”という植物を使った織物です。
からむしは、イラクサ科の多年草で、別名を「苧麻(ちょま)」とも言います。
ちなみに新潟の小千谷縮や越後上布、沖縄の宮古上布に八重山上布なども同じ原料を使っています。
1.植付
2.からむし焼き
3.垣結い
4.収穫
5.浸水
6.からむし剥ぎ
7.からむし引き
8.乾燥
9.苧績み(おうみ)
10.撚りかけ
置賜紬
置賜紬とは山形県(米沢市、長井市、西置賜郡白鷹町)で主に生産される伝統的工芸品です。
先染の平織で作る織物で、素朴な風合いが特徴です。
置賜紬は、8世紀の初めに上杉景勝の奨励によって産地として確立されたのが起源とされています。
もともと白鷹町、長井市、米沢市で古くから織られていた織物を、伝統的工芸品として指定する際に「置賜紬」として名称を統一しました。
平織りで先染の織物で、更に地域ごとに特徴があり、白鷹町は米琉板締小絣や白鷹板締小絣、長井市は緯総絣や併用絣、米沢市は草木染紬と紅花染紬が主に生産されてきました。
産地情報
名称 | 置賜紬伝統織物協同組合 |
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住所 | 〒992-0003 山形県米沢市窪田町窪田2885-5 |
羽越しな布
山形県鶴岡市、新潟県村上市で主に生産される伝統的工芸品、羽越しな布(うえつしなふ)。
羽越地方の山間部に生育するシナノキの樹皮から靱皮(じんぴ)を剥ぎ取り、それを1年近い時間をかけながら糸に加工した後に織り上げるもので、芭蕉布、葛布と共に日本三大古代織の一つとなっています。
[起源]
羽越しな布の起源は古く、古代日本までさかのぼります。はっきりとした時代は特定されていませんが、縄文時代や弥生時代から草木の繊維を用いた織物が作られていたので、大体その頃であるとされています。
[特徴]
羽越地域に生息するシナノキやオオバボダイジュ、ノジリボダイジュを糸の原料としており、水に強く丈夫な織物です。
強靭な繊維ということから、生活の様々な場面(作業着や袋、漁網など)に利用されていました。
産地情報
名称 | 羽越しな布振興協議会 |
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住所 | 〒999-7315 山形県鶴岡市関川字向222 関川しな織センター内 |
関東地方の着物産地一覧
関東地方の着物産地を一覧でまとめてご紹介します。
結城紬
茨城県結城市や栃木県小山市の鬼怒川周辺にまたがる地域で生産される伝統織物、結城紬(ゆうきつむぎ)。
真綿の手紡ぎ糸を使い地機で織る手織り紬で、紬の織物の代表とも言われています。
[起源]
結城紬の歴史は古く、起源は2000年前にも遡ります。
美濃から茨城の久慈郡に移り住んだ多屋命(おおねのみこと)という人物が作り始めた「長幡部絁(ながはたべのあしぎぬ)」と呼ばれる織物。
これが結城紬の起源といわれています。
平安中期には「常陸絁(ひたちあじきぬ)」、鎌倉時代には「常陸紬(ひたちつむぎ)」と呼ばれるようになり、江戸時代から現在の名称である「結城紬」と呼ばれるようになりました。
1956年には重要無形文化財に指定、その後1977年に経済産業省指定伝統的工芸品、2010年にユネスコ無形文化遺産に指定されています。
[特徴]
結城紬は経糸、緯糸ともに真綿の手紡ぎ糸を使用しています。
また、糸に撚りをかけない為、絹の持つ良さをより実感できる着心地となっています。
[産地情報]
名称 | 茨城県本場結城紬織物協同組合 |
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住所 | 〒307-0001 茨城県結城市大字結城3018-1 |
伊勢崎絣
伊勢崎絣とは群馬県(伊勢崎市、太田市)、埼玉県(本庄市)で主に生産される伝統的工芸品です。
丈夫な織物で、またお洒落な縞模様も人気を博し、伊勢崎銘仙とも呼ばれます。
伊勢崎絣はかすり糸を作る際に、くくりや板染め、なせん等の技法を使うのが特徴です。
1975年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
[起源]
伊勢崎絣は、古くから農家の自家用の織物として生産されていたものが、17世紀に産地として確立されました。
その後は明治から昭和にかけて、「伊勢崎銘仙」として全国的に人気を博しました。
[産地情報]
名称 | 伊勢崎織物工業組合 |
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住所 | 〒372-0055 群馬県伊勢崎市曲輪町31-1 |
桐生織
群馬県桐生市、太田市、みどり市と栃木県足利市で主に生産される伝統的工芸品、桐生織(きりゅうおり)。
「西の西陣、東の桐生」とも言われる高級織物で、先進地の西陣や西洋から技術を導入し発展してきました。
1977年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
[起源]
桐生織は8世紀、現在の群馬県桐生市から京都へ一人の男が宮仕えに出されたことから始まります。
その男は宮中の白滝姫に恋をしてしまいます。
本来なら許されない恋ですが、男には和歌の腕前があり、天皇の前で和歌を詠んで白滝姫を桐生に連れて帰る事を許されます。
そして、桐生へやって来た白滝姫が織物の技術を人々に伝えたことが現在の桐生織の起源とされています。
[特徴]
桐生織はジャカード織機で織られる先染めの織物です。
主に7つの織り方の技法(お召織り(おめしおり)、緯錦織り(よこにしきおり)、経錦織り(たてにしきおり)、風通織り(ふうつうおり)、浮経織り(うきたており)、経絣紋織り(たてかすりもんおり)、綟り織り(もじりおり)があり、様々な種類の織物がつくられています。
[産地情報]
名称 | 桐生織物協同組合 |
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住所 | 〒376-0044 群馬県桐生市永楽町5-1 |
秩父銘仙
埼玉県秩父市で主に生産される伝統的工芸品、秩父銘仙(ちちぶめいせん)。
平織りで裏表が無く、鮮やかな色使いが特徴の織物です。
[起源]
秩父銘仙は、8世紀ごろ、知々夫彦命が養蚕と機織の技術を住民へと伝承した事が起源と言われています。
そして、そこから脈々と受け継がれてきたものが明治中期頃に女性のお洒落な着物として一斉を風靡しました。
[現在]
秩父銘仙の関連工場は、昭和10年代に320軒あったものが6軒程になっています。
2013年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されました。
[特徴]
秩父銘仙は丈夫で着やすく、柄としては植物柄が多く用いられます。
解し捺染技法を用いており、緯糸に補色を使用することで起きる玉虫光沢も特徴の一つです。
捺染とは、生地に染料を直接擦り付けて染色することで、解し捺染とは生地にする前の糸の状態で捺染を行うことを言います。
[産地情報]
名称 | 秩父銘仙協同組合 |
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住所 | 〒368-0032 埼玉県秩父市熊木町28-1 ちちぶ銘仙館内 |
村山大島紬
東京都武蔵村山市、立川市、青海市、昭島市、東大和市、羽村市、西多摩郡瑞穂町と埼玉県の飯能市、入間市で主に生産される伝統的工芸品、村山大島紬(むらやまおおしまつむぎ)。
板締で糸を染めるのが特徴的な織物で、高級品とされる本場大島紬に比べて普段使いの着物として普及していました。
1967年には東京都無形文化財、1975年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
[起源]
村山大島紬は19世紀、地域で織られていた織物(村山紺絣、砂川太織など)が前身とされ、20世紀前半には伊勢崎から板締の技法が伝わり、村山大島紬として確立していきました。
[特徴]
村山大島紬は糸の染色方法に特徴があり、模様が刻まれた絣板(かすりいた)に糸をはさみ、その上に染料をかけ糸を染めます。
その為、染めた部分と染めずに残った部分との差がはっきりとしています。
[産地情報]
名称 | 村山織物協同組合 |
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住所 | 〒208-0004 東京都武蔵村山市本町2-2-1 |
本場黄八丈
東京都八丈島で生産される伝統的工芸品、本場黄八丈(ほんばきはちじょう)。
島に自生する植物(コブナグサ、タブノキ、シイ、マダミなど)を使用し、黄、樺(茶)、黒の三色で染めた糸を縞や格子模様に織り上げる絹織物です。
1977年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
[起源]
本場黄八丈の歴史は古く、室町時代には貢納品として島で織られた白紬を納めていました。
現在の染色技法になったのは寛政年間ごろで、江戸時代の中期には縞や格子の模様も織られ始めました。
また、本居宣長が書き残した書物に「黄八丈を織り始めたところから八丈島と名が付いた」と記述があることから、島の名前の元になったとされています。
[特徴]
本場黄八丈は黄、樺(茶)、黒の三色で染めた絹糸を縞や格子模様に織り上げています。
八丈島で自生する草木を原料とする天然染料で染め上げることから、変色しにくく、洗うたびに色が鮮やかさを増してきます。
[産地情報]
名称 | 黄八丈織物協同組合 |
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住所 | 〒100-1621 東京都八丈島八丈町樫立346-1 |
多摩織
東京都八王子市、あきる野市で主に生産される伝統織物、多摩織(たまおり)。
草木染による先染めの絹織物で、1980年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
[起源]
多摩織の歴史は古く、平安時代までさかのぼります。
この頃から絹や生糸を租税として納めており、その後室町時代に北条氏の奨励によって産地として形成されていきました。
[特徴]
多摩織にはお召し織、紬織、風通織、変り綴、戻り織の5つの品種があり、羽織や袴地、現在ではネクタイなど様々な製品が作られています。
軽くてしわになりにくく、実用品として普及してきました。
[産地情報]
名称 | 八王子織物工業組合 |
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住所 | 〒192-0053 東京都八王子市八幡町11-2 |
東京染小紋
東京都で生産される伝統的工芸品、東京染小紋(とうきょうそめこもん)。
武士の裃への模様付けを起源としており、遠くから見ると無地に見えるほどの細かい模様を型紙で染め上げます。
1974年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
[特徴]
東京染小紋は型紙を用いて精緻で細かな柄を連続模様で染め上げます。
柄が細かければ細かい程、粋であるとされていました。
[産地情報]
名称 | 東京都染色工業協同組合 |
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住所 | 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田3-20-12 |
東京手描友禅
東京都で主に生産される伝統的工芸品、東京手描友禅(とうきょうてがきゆうぜん)。
京友禅と並び、日本の三大友禅の一つとして、染めの織物の代表とされています。
1980年には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されました。
[起源]
東京手描友禅は、京友禅を源流としています。
江戸時代に友禅の技法が京都から伝えられたことが、現在の東京手描友禅の起源となっています。
[特徴]
京友禅が主に分業制で作られるのに比べ、東京手描友禅は一人の職人が下絵から仕上げまでほぼ全ての工程に関わっているのが特徴です。
色数を抑えながらも、美しさと新しさが混在する江戸っ子らしい粋なデザインが人気となっています。
[産地情報]
名称 | 東京都工芸染色協同組合 |
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住所 | 〒161-0032 東京都新宿区中落合3-21-6 |
東京無地染
東京都の新宿区、中野区、杉並区等で生産される伝統工芸品、東京無地染(とうきょうむじぞめ)。
2017年には国の伝統的工芸品にも指定されています。
東京無地染は無地の白生地を客の好みの色に染め上げる工芸品で、その色見本の種類は170色もあり、職人が一つ一つ色を作り上げていきます。
[特徴]
無地染の特徴として、一度染めたものでも後から別の色に染め直す事が可能という点があげられます。
なので気分や年齢に応じて色味が変更出来るので、より長く使い続ける事が出来ます。