国土の約7割が森林となっている、日本
この割合は先進国の中でもフィンランド、スウェーデンに次いで3位となる程です。
そういった環境もあり、日本では木や竹を用いて道具や生活用品を作る木竹工芸品(もくちくこうげいひん)が発達してきました。
そこで今回は、日本に今も残る木竹工芸品の一覧と木材の種類についてご紹介します。
- 1.木材の違い
- 2.木工品の種類
- 3.日本の木竹工芸品一覧
- 3-1.二風谷イタ
- 3-2.岩谷堂箪笥
- 3-3.樺細工
- 3-4.大館曲げわっぱ
- 3-5.秋田杉樽桶
- 3-6.奥会津編み組細工
- 3-7.春日部桐箪笥
- 3-8.江戸和竿
- 3-9.江戸指物
- 3-10.箱根寄木細工
- 3-11.加茂桐箪笥
- 3-12.松本家具
- 3-13.南木曽ろくろ細工
- 3-14.駿河竹千筋細工
- 3-15.井波彫刻
- 3-16.一位一刀彫
- 3-17.名古屋桐箪笥
- 3-18.越前箪笥
- 3-19.京指物
- 3-20.大阪欄間
- 3-21.大阪唐木指物
- 3-22.大阪泉州桐箪笥
- 3-23.大阪金剛簾
- 3-24.豊岡杞柳細工
- 3-25.高山茶筌
- 3-26.紀州箪笥
- 3-27.紀州へら竿
- 3-28.勝山竹細工
- 3-29.宮島細工
- 3-30.別府竹細工
- 3-31.都城大弓
- 3-32.仙台箪笥
1.木材の違い
住宅や寺院などの建築から家具、食器、下駄に至るまで、様々な用途のある木材。
その木材の種類によって産地や特徴にも違いがあります。
主な木材の①産地、②用途、③特徴をまとめてみました。
1-2.針葉樹
針葉樹とは、葉の形が針のように細長い裸子植物球果植物門の樹木のことです。
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スギ
➀東北地方から屋久島までの広い地域に分布
➁建築、家具、器具、割り箸、下駄など
➂軽くて柔らかく吸湿性あり -
ヒノキ
➀長野、飛騨、木曽などの本州中部から四国、九州に分布
➁仏像などの彫刻、曲げ物、建築など
➂堅くて強度があり耐久性に優れている 高級建築材として使用される -
アカマツ
➀北海道から四国、九州まで
➁建築、枕木、パルプ材、坑木など
➂ヒノキよりも強度があり加工しやすい 年数が経つとアメ色になる -
ヒバ
➀北海道から四国、九州まで
➁建築、漆器、桶など
➂耐久性、耐水性に優れている
1-3.広葉樹
広葉樹とは、主に葉の形が幅広い被子植物のことです。
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キリ
➀日本全国に分布
➁タンスなどの家具、羽子板、下駄、彫刻、楽器、箱など
➂日本の木材の中で一番軽いとされる 燃えにくく吸湿性に優れている -
ケヤキ
➀本州から四国、九州まで
➁建築、彫刻、家具、太鼓など
➂木目が美しく耐久、耐湿性に優れている -
カツラ
➀日本全国に広く分布
➁家具、仏壇、将棋や囲碁の盤、ピアノ、彫刻など
➂軽くて柔らかめの木材 保存性は低い -
サクラ
➀本州から四国、九州に分布
➁家具、楽器、彫刻など
➂保存性が高く加工しやすい
1-4.針葉樹と広葉樹の違い
針葉樹は軽くてソフト、広葉樹は重くて堅いのがその特徴と言われています。
これは木に含まれている空気の量で変わってきます。
強度のある広葉樹は、屋内でも靴を履いて過ごす習慣のある欧米の家の床材に使用されてきました。
反対に屋内では靴を脱ぐ習慣のある日本では、針葉樹が廊下の材料などに使われてきたという文化の違いが用途に差をもたらしています。
一般的には葉の形で見分けられることが多いのですが、針葉樹の木はまっすぐ伸び、広葉樹は太くて曲がり枝分かれしていることも見分けるポイントとなっています。
1-5.竹
日本には数多くの竹が生育しており、その数はなんと600種類。
竹工芸では、そのうちの10種類程が主に用いられます。
繊維が細かい為、竹を細かく割って竹ひごの状態にしてカゴやバッグの形に編む工芸品が有名です。
2.木工品の種類
2-1.指物(さしもの)
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金属の釘などを用いずに木だけで箱や箪笥などを作り上げるのが指物です。
木の板につぎ手と呼ばれる凹凸を付け、組み合わせます。
江戸指物や京指物が有名です。
2-2.刳物(くりもの)
一つの木材からノミや彫刻刀を用いて形を彫り出すのが刳物です。
複雑な形や曲線を自由に彫り出すことが出来るのが特徴です。
2-3.挽物(ひきもの)
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木材をろくろで回転させ、刃物で削って形を作り出すのが挽物です。
特に円形の椀やお盆を作るのに向いている技法です。
2-4.曲物(まげもの)
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薄い板に熱を加え、やわらかくしてから曲げて加工するのが曲物です。
大館曲げわっぱなどが有名です。
3.日本の木竹工芸品一覧
日本の伝統的工芸品の中でも、竹木工芸品を一覧でご紹介します。
3-1.二風谷イタ
北海道の沙流郡平取町で主に生産される木工芸品、二風谷イタ。
アイヌの伝統文様が施されており、東北地方にも交易品として輸出されていました。
二風谷イタは”モレウノカ(渦巻模様)”や”アイウシノカ(刺模様)”といわれるアイヌの伝統文様が施されています。
産地情報
名称 | 信楽陶器工業協同組合 |
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住所 | 〒529-1811 滋賀県甲賀市信楽町江田985番地 |
3-2.岩谷堂簞笥
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岩谷堂簞笥とは岩手県(盛岡市、奥州市)で主に生産される伝統的工芸品です。
堅牢な箪笥で、南部鉄器を用いる金具に特徴があります。
岩谷堂箪笥は18世紀に生産が始まり、彫刻などの技術とともに発展してきました。
材料には欅や桐などを用います。
また、金具には手打ち彫りのものと南部鉄器を使うものがあり、これに美しい彫刻が施されます。
産地情報
名称 | 岩谷堂箪笥生産協同組合 |
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住所 | 〒023-1131 岩手県奥州市江刺区愛宕字海老島68-1 |
3-3.樺細工
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樺細工とは秋田県(仙北市)で主に生産される伝統的工芸品です。
桜の木の皮を剥ぎ、それを用いて茶筒や小箱などを作ります。
樺細工が現在の形で生産されるようになったのは18世紀頃で、下級武士の副業として生産されていました。
その美しい皮目を活かして作られることから、同じ形でも一個一個の製品の印象が変わってきます。
産地情報
名称 | 角館工芸協同組合 |
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住所 | 〒014-0352 秋田県仙北市角館町外の山18 |
3-4.大館曲げわっぱ
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曲げわっぱでは唯一、国の伝統工芸品に指定されています。
木こりが杉の板で作った弁当箱が大館曲げわっぱのはじまり。
いまから約400年前、武士の内職として曲げわっぱづくりが推奨されたことが、大館曲げわっぱの発展につながりました。
関連記事:曲げわっぱ入門!お弁当箱手入れ方法は?曲げわっぱの作り方と、どこで買えるか情報も。
3-5.秋田杉樽桶
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秋田杉桶樽とは秋田県で主に生産される伝統的工芸品です。
名前の通り秋田杉を原料とした樽で、16世紀頃から生産されていました。
18世紀前半には藩の保護のもとで生産が拡大し、産地として形成されていきました。
秋田杉樽桶は、柾目の材料を用いて作られます。
竹や銅などを用いてきつく締める為長く使うことができ、その美しさにも定評があります。
産地情報
名称 | 秋田杉桶樽協会 |
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住所 | 〒017-0012 秋田県大館市釈迦内字土肥17-3 有限会社日樽内 |
3-6.奥会津編み組細工
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奥会津編み組細工とは福島県(大沼郡三島町)で主に生産される伝統的工芸品です。
冬季の間の仕事として発展し、今でも籠などの製品が作られています。
主にヒロロ細工、山ブドウ細工、マタタビ細工に分類されます。
奥会津編み組細工は18世紀頃から生産が始まったとされ、自家用の農作業道具や籠などが作られていました。
産地情報
名称 | 奥会津三島編組品振興協議会 |
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住所 | 〒969-7402 福島県大沼郡三島町大字名入字諏訪ノ上395番地 三島町生活工芸館内 |
3-7.春日部桐箪笥
春日部桐簞笥とは埼玉県(さいたま市、春日部市、越谷市、白岡市)で主に生産される箪笥で、伝統的工芸品にも指定されています。
春日部桐箪笥は江戸時代の初め、日光東照宮の建立の為に集まった職人が街道沿いにあった春日部に移住し、箪笥作りを始めたのが起源とされています。
原材料に桐を用いている為、湿気を適度に吸収してくれることから箪笥として最適な性能を備えています。
また、軽くて燃えにくいという特性もあり、古代から重宝されてきました。
産地情報
名称 | 春日部桐たんす組合 |
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住所 | 〒339-0054 埼玉県さいたま市岩槻区仲町1-7-14 |
3-8.江戸和竿
江戸和竿とは東京都で主に生産される伝統的工芸品です。
様々な用途に合わせた竿が作られ、18世紀には既に生産が始まっていたとされています。
江戸和竿は他の産地と違い特定の用途に限定しないのが特徴で、多種多様な製品が作られます。
産地情報
名称 | 江戸和竿組合 |
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住所 | 〒116-0003 東京都荒川区南千住5-11-14 |
3-9.江戸指物
江戸指物とは東京都(台東区、荒川区、葛飾区、江東区、足立区)で主に生産される伝統的工芸品です。
江戸指物は江戸時代に幕府が様々な職人を呼び寄せたことで生産が始まったとされています。
釘などを用いずに組み上げ、木目の美しさを活かした作りになっています。
元々は武家や商人に愛用されていました。
産地情報
名称 | 江戸指物協同組合 |
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住所 | 〒112-0005 東京都文京区水道2-6-4 マ・メゾン小日向101 |
3-10.箱根寄木細工
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17世紀半ば(江戸時代中期頃)、浅間神社建立のため全国から集められた職人に編み出されたとされる寄木細工。
そもそもは静岡で発展した技術だったそうです。
江戸時代後期、石川仁兵衛という人がこの技術を箱根に持ち帰り、もともと「箱根細工」として木工芸品が盛んに作られていた箱根の技術に融合させ、新しい指物細工を編み出すことに成功したのです。
湯治客の多い箱根では、この寄木細工が土産物として大変な人気を得て、横浜港が開港されると海外へも輸出されるようになりました。
寄木細工の木材には様々な種類があり、白、灰色、茶色、赤、黄色、緑、黒などの色合いを表すことが可能になっています。
このような色や木目を活かしながら独特の文様を作り上げています。
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