竹取物語(たけとりものがたり)は日本最古の仮名物語で、平安時代初期に書かれました。
作者は詳しくわかっていません。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる竹取物語の中から「帝の求婚」について詳しく解説していきます。
竹取物語「帝の求婚」の解説
竹取物語でも有名な、「帝の求婚」について解説していきます。
竹取物語「帝の求婚」の原文
帝、にはかに日を定めて、御狩りに出で給うて、かぐや姫の家に入り給うて見給ふに、光満ちて、清らにてゐたる人あり。
これならむとおぼして、近く寄らせ給ふに、逃げて入る袖をとらへ給へば、面をふたぎて候へど、初めよく御覧じつれば、類なくめでたくおぼえさせ給ひて、
「許さじとす。」
とて、ゐておはしまさむとするに、かぐや姫答へて奏す、
「おのが身は、この国に生まれて侍らばこそ使ひ給はめ、いとゐておはしましがたくや侍らむ。」
と奏す。
帝、
「などかさあらむ。なほゐておはしまさむ。」
とて、御輿を寄せ給ふに、このかぐや姫、きと影になりぬ。
はかなく、くちをしとおぼして、げに、ただ人にはあらざりけりとおぼして、
「さらば、御ともにはゐて行かじ。もとの御かたちとなり給ひね。それを見てだに帰りなむ。」
と仰せらるれば、かぐや姫、もとのかたちになりぬ。
帝、なほめでたくおぼしめさるることせき止めがたし。
かく見せつる造麻呂を喜び給ふ。
さてつかうまつる百官の人々、あるじいかめしうつかうまつる。
帝、かぐや姫をとどめて帰り給はむことを、飽かずくちおしくおぼしけれど、魂をとどめたる心地してなむ帰らせ給ひける。御輿に奉りてのちに、かぐや姫に、
御返り事、
これを帝御覧じて、いとど帰り給はむそらもなくおぼさる。
御心はさらに立ち帰るべくもおぼされざりけれど、さりとて、夜を明かし給ふべきにあらねば、帰らせ給ひぬ。
竹取物語「帝の求婚」の現代語訳
帝は、急に日を決め手、御狩りにお出かけになられて、かぐや姫の家にお入りになってご覧になると、(家の中に)光が満ちて、美しい様子で座っている人がいた。
これ(がかぐや姫)だろうとお思いになり、近くにお寄りになると、(女が)逃げて(奥に)入ろうとする袖をおとらえに成ったので、(女は)顔を覆ってそばに控えているが、(帝は)初めに(かぐや姫の姿を)よく御覧になっていたので、類もなくすばらしくお思いになられて、
「放しはしないよ。」
と言って、連れていらっしゃろうとすると、かぐや姫が答えて申し上げるには、
「自分の身が、この国に生まれたのでございましたらお召しになられましょうが、(そうではないので)連れていらっしゃるのはとても難しいことでございましょう。」
と申し上げる。
帝は、
「どうしてそのようなことがあろうか(あろうはずがない)。やはり連れて行こう。」
と言って御輿をお寄せになるが、このかぐや姫は、さっと見えなくなってしまった。
(帝は)むなしく、残念にお思いになり、本当に普通の人間ではなかったのだなあとお思いになって、
「それならお供に連れては行くまい。もとのお姿になってください。せめてそれだけでも見て帰るとしよう。」
とおっしゃられると、かぐや姫はもとの姿になった。
帝は、やはりすばらしいとお思いになられることを、抑えることが難しい。
このように(かぐや姫を)見せてくれた造麻呂にお礼をおっしゃった。
そうして(翁も)お仕えするもろもろの役人たちに、饗宴を盛大に催してさしあげる。
帝は、かぐや姫を残してお帰りになることを、名残惜しく、残念にお思いになったが、魂を(そこに)とどめおいた気持ちがしてお帰りになった。
御輿にお乗りになったあと、かぐや姫に、
お返事を、
これを帝が御覧になって、ますますお帰りになる方向すらわからないようにお思いになる。
ご心中はとても帰ることができそうにもお思いにならなかったのだが、だからといって、(ここで)夜をお明かしなさるわけにもいかないので、お帰りになった。
竹取物語「帝の求婚」の単語・語句解説
急に。
[出で給うて]
お出かけになられて。
[清らにてゐたる]
美しい様子で座っている。
[寄らせ給ふに]
お寄りになると。
[面をふたぎて候へと]
顔を覆ってそばに控えているが。
[許さじとす]
放しはしないよ。
[ゐておはしまさむと]
連れていらっしゃろうと。
[奏す]
申し上げる。
[などかさあらむ]
どうしてそのようなことがあろうか。
[それを見てだに帰りなむ]
せめてそれだけでも見て帰るとしよう。
[あるじいかめしうつかうまつる]
饗宴を盛大に催してさしあげる。
[飽かず]
なごり惜しく。
[帰るさ]
帰るとき。
[そむきて]
振り返って。
[帰り給はむそらもなくおぼさる]
お帰りになる方向すらわからないようにお思いになる。
*竹取物語「帝の求婚」でテストによく出る問題
○問題:「葎はふ下(*1)」と「玉のうてな(*2)」はそれぞれ何の比喩か。
答え:「葎はふ下」は粗末な家(=翁の家)の比喩。「玉のうてな」は玉のように美しい御殿(=帝の住む宮殿)の比喩。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は竹取物語でも有名な、「帝の求婚」についてご紹介しました。
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