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古今著聞集「刑部卿敦兼と北の方」原文と現代語訳・解説・問題|橘成季の世俗説話集

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古今著聞集(ここんちょもんじゅう)は橘成季が1254年に書いた世俗説話集です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる古今著聞集の中から「刑部卿敦兼(ぎょうぶきょうあつかね)と北の方」について詳しく解説していきます。

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古今著聞集「刑部卿敦兼と北の方」の解説

古今著聞集でも有名な、「刑部卿敦兼と北の方」について解説していきます。

古今著聞集「刑部卿敦兼と北の方」の原文

刑部卿敦兼は、みめのよに憎さげなる人なりけり。
その北の方は、はなやかなる人なりけるが、五節を見侍りけるに、とりどりにはなやかなる人々のあるを見るにつけても、まづわが男のわろさ心憂くおぼえけり。

家に帰りて、すべてものをだにも言はず、目をも見合はせず、うち側向きてあれば、しばしは、何事の出で来たるぞや(*)と、心も得ず思ひゐたるに、次第に厭(いと)ひまさりて、かたはらいたきほどなり。

先々のやうに一所にもゐず、方(かた)を変へて住み侍りけり。

ある日、刑部卿出仕して、夜に入りて帰りたりけるに、出居(いでい)に火をだにも灯さず、装束は脱ぎたれども、畳む人もなかりけり。
女房どもも、みな御前の目引きに従ひて、さし出づる人もなかりければ、せん方なくて、車寄せの妻戸を押し開けて、ひとりながめゐたるに、更たけ、夜静かにて、月の光、風の音、ものごとに身にしみわたりて、人の恨めしさも取り添へておぼえけるままに、心を澄まして、篳篥(ひちりき)を取り出でて、時の音に取り澄まして、

籬(ませ)のうちなる白菊も
うつろふ見るこそあはれなれ
我らが通ひて見し人も
かくしつつこそかれにしか

と、繰り返し歌ひけるを、北の方聞きて、心はや直りにけり。
それより殊(こと)に仲らひめでたくなりにけるとかや。
優なる北の方の心なるべし。

古今著聞集「刑部卿敦兼と北の方」の現代語訳

刑部省の長官敦兼は、見た目の非常に醜い人であった。
その北の方は、きらびやかに美しい人であったが、五節を見ました時に、色々にきらびやかに美しい人々がいるのを見るにつけても、ともかくも自分の夫の(見た目の)わるさが情けなく思われた。

家に帰って、全くものさえも言わず、目も見合わせず、横を向いているので、(敦兼は)しばらくは、何事が起こったのかと、訳がわからないと思っていたが、(北の方は)だんだん(夫への)いとわしさがつのって、はたから見ていても(敦兼が)気の毒な程である。
以前のように同じ部屋にもおらず、居室を変えて(別々に)住みました。

ある日、刑部卿が勤めに出て、夜になって帰宅したが、出居の間に灯りさえも灯さず、(外出した時の)装束は脱いだけれども、たたむ人もいなかった。
女房たちも、みんな北の方の目くばせに従って、出て来る人もいなかったので、(敦兼は)どうしようもなくて、車寄せの妻戸を押し開けて、一人で物思いにふけって座っていると、夜が更け、夜は静かで、月の光、風の音が、一つ一つ身にしみわたって、北の方への恨めしさも併せて(身にしみるように)思われたままに、心を研ぎ澄まして、篳篥を取り出して、時季にふさわしい調子に澄んだ音色で吹いて、

籬垣の中にある白菊も
色があせるのを見るのはしみじみ悲しい。
私のような者が通って妻とした人も
このようにしては(花が枯れるように私から)離れてしまった。

と、繰り返し朗詠したのを、北の方が聞いて、心がたちまち直ってしまった。
風雅を解する北の方の心であろう。

古今著聞集「刑部卿敦兼と北の方」の単語・語句解説

[みめ]
見た目。外見。

[よに]
非常に。ひどく。

[心憂く]
つらく。情けなく。

[女房]
一室を与えられて宮中や貴族の家に仕える女性。

*古今著聞集「刑部卿敦兼と北の方」でテストによく出る問題

○問題:「何事の出で来たるぞや(*)」とは何に対してか。
答え:北の方の態度の変化に対する敦兼の思い。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は古今著聞集でも有名な、「刑部卿敦兼と北の方」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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