古典の学習が始まって、多くの人がぶつかる最初の壁「古典文法」。
ここでつまずくと、そのあとの内容読解でも苦手意識をもったままになってしまう場合もあります。
しかし、逆に古典文法の暗記のポイントを押さえて理解できれば、大きな得点源にもなる分野でもあるのです。
この記事では、用言のうち序盤に学習する「動詞」を解説します。
要点がまとまった画像とテキスト両方で説明しているので、テスト前の確認や授業の予習・復習などに活用してみてください。
文法をマスターできると、古典文学も楽しく読めるようになりますよ!
古典文法の動詞・形容詞・形容動詞・助動詞を解説!活用表・意味・接続を復習しよう
古典文法の助動詞「未然形接続」を解説
古典文法の助動詞「連用形接続」を解説
古典文法の助動詞「終止形接続」を解説
古典文法の動詞を解説
古典文法の活用と接続
古典文法のなかで特に暗記事項が多いのは「活用」と「接続」でしょう。
しかしよく見てみると、活用がある言葉は動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の4種類の言葉しかありません。
ここでは「形容詞」「形容動詞」が分類される「用言」について詳しく見てみましょう。
「用言」とは
自立語で活用し、単独で述語になる語を「用言」といい、用言は3種類にわけられます。
ここにあてはまるのが「動詞」「形容詞」「形容動詞」です。
「単独で述語になれる」という点では「動詞」「形容詞」「形容動詞」は共通していますが、それぞれ表す性質に違いがあることがわかります。
この記事で確認していく「形容詞」は言い切り(終止形)が「し」「じ」、「形容動詞」は言い切り(終止形)が「なり」「たり」という特徴があるので、識別のときには注目してみてください。
「活用」とは
用言は、下に続く言葉によって言葉の形が変化します。
この変化のことを「活用」といいます。
現代語でも、「走る」という動詞を「走らない」「走りながら」「走れば」のように形を変化させますよね。
古語でも同様に、下に続く語によって形を変えていきます。
・笑ふ+ず→笑はず
・なし+て→なくて
・静かなり+とき→静かなるとき
活用形
活用のある語は、下に続く語によって分類された「活用表」を書けます。
まずは古典文法の「活用形」6つを押さえましょう。
現代文法の活用表を覚えている人は、現代語の「仮定形」を「已然形」にすれば古典文法の活用表になります。
- 未然(みぜん)形
- 未だ然らざる形。まだそうなっていない状態を表す。
下に続く主な助詞:ば(仮定条件)・で(接続助詞) - 連用(れんよう)形
- 用言に連なる形。
下に続く主な助詞:て・つつ・ながら - 終止(しゅうし)形
- 文を終止させる形。
- 連体(れんたい)形
- 体言に連なる形。
下に続く主な助詞:が・を・に(接続助詞) - 已然(いぜん)形
- 已に然る形。すでにそうなっている状態を表す。
下に続く主な助詞:ば(確定条件)・ども(接続助詞) - 命令(めいれい)形
- 命令する形。
「接続」とは
「その言葉が、どんな形の言葉のあとに続くか」というルールのことです。
打消の助動詞「ず」(未然形接続)の場合
・なし+ず→なからず
「なし」が未然形に変化して、未然形接続の助動詞「ず」にくっつく。
(例2)
名詞「時」(体言)に続ける場合
・美し+時→美しき時
「美し」が連体形に変化して、名詞「時」(体言)にくっつく。
(例3)
助詞「ば」に接続して、順接確定条件を表す場合
・静かなり+ば→静かなれば
「静かなり」が已然形に変化して助詞「ば」にくっつく。
ではこの基礎知識を踏まえて、「形容詞」「形容動詞」の種類と活用を順番に確認していきましょう。
形容詞
形容詞とは
用言のなかで、事物の性質や状態を表し、言い切りの形が「し」「じ」になるものを形容詞といいます。
形容詞の活用
【活用】
①ク活用
(く)から|く・かり|し|き・かる|けれ|かれ
②シク活用
(しく)しから|しく・しかり|し|しき・しかる|しけれ|しかれ
・本活用(基本活用)……形容詞の活用表の右列
・補助活用(カリ活用)……形容詞の活用表の左列
補助活用は、連用形「(し)く」にラ行変格活用の動詞「あり」が結合してできた活用。助動詞が下につくときに主に用いられました。
ク活用とシク活用
形容詞には、「ク活用」と「シク活用」の2種類があります。
①ク活用……活用語尾が「く・く・し……」となるもの
(例)九月二十日のことなれば、夜も長し。(宇治拾遺物語)
訳:九月二十日のことなので、夜も長い。
②シク活用……活用語尾が「しく・しく・し……」となるもの
(例)君がため惜しからざりし命さへながくもがなと思ひけるかな
訳:あなたに会うために、惜しくはないと思った命までも、いまは長く生きていたいと思われることだ。
下に動詞「なる」をつけて、連用形の活用語尾をチェックします。
①ク活用 なし+なる→なくなる
②シク活用 美し+なる→美しくなる
意味の上では、
①ク活用 事物の客観的な性質や状態を表す語が多い
②シク活用 主観的な心情を表す語が多い
と言われています。
形容動詞
形容動詞とは
用言のなかで事物の状態や性質などを表し、言い切りの形が「なり」「たり」になるものを形容動詞といいます。
形容動詞の活用
【活用】
①ナリ活用
なら|なり・に|なり|なる|なれ|(なれ)
②タリ活用
(たら)|たり・と|たり|たる|(たれ)|(たれ)
ナリ活用とタリ活用
形容動詞には、「ナリ活用」と「タリ活用」の2種類があります。
①ナリ活用……活用語尾が「なり」となるもの
(例)身もくたびれ、心も静かならず、(徒然草)
訳:体も疲れ、心も穏やかでなく
②タリ活用……活用語尾が「たり」となるもの
(例)雨朦朧として鳥海の山かくる。(奥の細道)
訳:雨がぼんやりとけむって鳥海山が隠れる。
・ナリ活用……語幹が和語のものが多い。「あだなり」「つれづれなり」
・タリ活用……語幹が漢語。「忙然たり」「清明たり」
形容動詞の識別ポイント
形容動詞でポイントになるのは「名詞+なり」との識別、連用形「に」と副詞との識別です。「なり」は助動詞にも2種類の「なり」があり、大変紛らわしい語の1つ。形容動詞の基本的なルールとセットで識別方法も確認しておきましょう。
※形容動詞の語幹と名詞の識別
(例)
形容動詞「静かなり」
名詞+断定の助動詞「御所なり」
(1)「なり」の代わりに「が」「は」が入る。主語になる。→名詞+「なり」
×静かは 〇御所は
(2)語の上に、
・連用修飾語(「いと」など)が入る→形容動詞
〇いと静かなり ×いと御所なり
・連体修飾語(「この」など)が入る→名詞+なり
×この静かなり 〇この御所なり
(3)現代語訳が「……な」となる→形容動詞(ナリ活用)
〇静かな ×御所なり
※形容動詞の連用形と副詞の識別
(例)
形容動詞「静かに」「堂々と」
副詞「つひに」「つくづくと」
(1)「に」を「なり」「なる」に変えても自然→形容動詞(ナリ活用)
〇静かなり・なる ×つひなり・なる
(2)「と」を「たり」「たる」に変えても自然→形容動詞(タリ活用)
〇堂々たり・たる ×つくづくたり・たる
形容詞・形容動詞の語幹
形容詞・形容動詞の語幹は独立性が高く、語幹だけで意味をもつ用法もあります。
現代語訳の問題でも問われることもあるので、次の3種類を確認しておきましょう。
(1)感動表現……感動詞+語幹(+間投助詞「や」)→詠嘆
(例)あらたふと青葉若葉の日の光 【形容詞「たふとし」】 (奥の細道)
訳:ああ、尊いことだなぁ。青葉・若葉が茂った(東照宮の)日の光は。
※感動詞「あな」「あら」「あはれ」などの下につき、言い切りの形になることが多いです。
(2)連体修飾語……語幹+格助詞「の」(感動文中で多く使われる)
(例)心憂のことや、翁丸なり。【形容詞「心憂し」】 (枕草子)
訳:かわいそうなことだなあ、翁丸だ。
(3)原因・理由を表す連用修飾語……体言(+を)+形容詞の語幹+接尾語「み」
(例)瀬をはやみ岩にせかるる滝川の【形容詞「はやし」】 (詞花集)
※「体言+を+形容詞の語幹+み」(「~を…み」)の形が多いです。
※特に和歌で、「を」が省力される場合があります。
まとめ
今回の記事では、「形容詞」「形容動詞」について解説しました。
活用の種類自体は多くないので、「形容詞」「形容動詞」セットで覚えておくとよいでしょう。
一方で、他の活用語との識別や特殊な使われ方はテストでも問われやすい大事な部分でもあります。
教科書本文や問題演習の際に形容詞・形容動詞が出てきたタイミングで、ぜひ識別に挑戦してみてください。
1つ1つの積み重ねが、テストでの結果に繋がりますよ。