古文の学習をする際、避けて通れないのが古典文法の助動詞です。
活用や接続の種類も多く、覚えにくい分野でもあります。
しかしその分、周りと差をつけられるポイントもたくさん。
覚えるべきポイントと暗記のコツを押さえることで、ぐっと得点を伸ばしていける部分でもあります。
この記事では、助動詞のなかでも「未然形接続」の11つについて解説。
要点がまとまった画像とテキスト両方で説明をしているので、テスト前の確認や授業の予習・復習などに活用してみてください。
助動詞をマスターできると現代語訳もスムーズになり、内容読解も楽しくできるようになりますよ!
古典文法の動詞・形容詞・形容動詞・助動詞を解説!活用表・意味・接続を復習しよう
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助動詞とは
付属語で活用のある語を「助動詞」と言います。
・主に用言を補助する
・一定の意味を添える
・話し手(書き手)の判断を示す
役割を果たします。
助動詞は、「3点セット」で確認するのが大切です。
活用表を覚えておくと、どの活用形出てきても意味がわかるようになります。
[接続]
助動詞は決まった語形に接続します。接続を知っておくと別の言葉との識別できます。
[意味]
助動詞はそれぞれ意味をもっているので、内容読解の助けになります。
ここでは、「未然形接続」の助動詞をご紹介。活用・接続・意味を画像とテキストで説明するので、3点セットを意識して確認してみてください。
未然形接続の助動詞
未然形接続の助動詞は、以下の11があります。
使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」
打消の助動詞「ず」
打消推量・打消意志の助動詞「じ」
推量の助動詞「む」「むず」
反実仮想の助動詞「まし」
希望の助動詞「まほし」
未然形接続の助動詞は、「もしもし亀よ」のリズムの語呂合わせでマスターしましょう。
る・す・らる・さす・り サ未四已然(さみよいぜん)
もしもし亀よ 亀さんよ
せかいのうちで おまえほど
受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」「らる」
【活用】
れ|れ|る|るる|るれ|れよ
られ|られ|らる|らるる|らるれ|られよ
【接続】
①「る」…四段動詞・ナ変動詞・ラ変動詞
②「らる」…それ以外の動詞
【意味】
(1)受身:~れる、~られる
(例)ありがたきもの。舅にほめらるる婿。また姑に思はるる嫁の君。(枕草子)
訳:めったにないもの。舅にほめられる婿。また姑によく思われる嫁の君。
(2)尊敬:~なさる、お~になる
(例)「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、(枕草子)
訳:「少納言よ、香炉峰の雪はどんなだろう」とおっしゃるので、
(3)自発:自然に~になる
(例)秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる(古今集・一六九)
訳:(立秋の日になっても)秋が来たと、はっきりと目にはみえないけれど、風の音で(秋の到来に)自然と気づかされる。
(4)可能:~できる
(例)家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。(徒然草)
訳:家の作り方は、夏を中心に考えるのがよい。冬はどんなところにも住むことができる。
尊敬→受身→可能→自発
の順番で訳してみて、どの意味が該当するのか検討してみましょう。
どれにも該当しない、判断できないという場合は「受身」「尊敬」である場合が多いです。また、以下のような識別方法も使えます。
(1)心情語・知覚動詞(思ふ・泣くなど)+「る」「らる」→自発
(2)「る」「らる」+打消・反語表現→可能
(3)誰・なにに+動詞+「る」「らる」→受身
(4)(主語)身分が高い人or尊敬語+「る」「らる」→尊敬
使役・尊敬の助動詞「す」「さす」「しむ」
【活用】
せ|せ|す|する|すれ|せよ
させ|させ|さす|さする|さすれ|させよ
③ しめ|しめ|しむ|しむる|しむれ|しめよ
【接続】未然形
①「す」…四段、ナ変、ラ変
②「さす」…それ以外の動詞
③「しむ」…活用語
【意味】
(1)使役:~せる、~させる
(例1)妻の嫗に預けて養わす。(竹取物語)
訳:妻である嫗に預けて、養わせる。
(例2)月の都の人まうで来ば、捕らへさせむ。(竹取物語)
訳:月の都の人がやって参ったならば、捕えさせよう。
(2)尊敬:~なさる、お~になる、~ていらっしゃる
(例1)いとこまやかに有様問わせ給ふ。(源氏物語)
訳:たいそうこまごまと様子をお尋ねになられる。
(例2)おほやけも行幸せしめたまふ。(大鏡)
訳:帝も行幸なさる。
(1)下に尊敬の補助動詞「給ふ」「おはします」がつく→尊敬
(2)その他の場合→使役
下に尊敬の補助動詞を伴って「使役」の意味をあらわす場合もあるので、文脈判断。どちらにもとれる場合は原則通り「尊敬」で解釈しましょう。
打消の助動詞「ず」
【活用】
(ず)ざら|ず・ざり|ず|ぬ・ざる|ね・ざれ|ざれ
※連体形「ぬ」、已然形「ね」に注意!
【接続】
未然形
【意味】
(1)打消:~ない、~ず
(例1)生けるもの、いづれか歌を詠まざりける。(古今集・仮名序)
訳:この世に生を受けているもの全て、どれが歌を詠まないことがあろうか(、みな詠むのである)
(例2)京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず(伊勢物語)
訳:京では見かけない鳥なので、だれも知らない。
打消推量・打消意志の助動詞「じ」
【活用】
〇|〇|じ|じ|じ|〇
【接続】
未然形
【意味】
・打消推量:~ないだろう、~まい
(例)一生の恥、これに過ぐるはあらじ。(竹取物語)
訳:一生の恥、これ以上のものはないだろう。
・打消意志:~ないつもりだ、~まい
(例)御供には率て行かじ。(竹取物語)
訳:お供には連れて行かないつもりだ。
①主語が一人称(自分)→打消意志(打消推量になる場合もあるので注意)
②主語が二人称(相手)・三人称(その他)→打消推量
推量の助動詞「む」「むず」
【活用】
〇|〇|む[ん]|む[ん]|め|〇
〇|〇|むず[んず]|むずる[んずる]|むずれ[んずれ]|〇
【接続】
未然形
【意味】
(1)推量:~だろう
(例)香炉峰の雪いかならむ。(枕草子)
訳:香炉峰の雪はどのようだろう。
(2)意志:~う、~よう、~つもりだ、~たい
(例)木曾殿のたまひけるは、「義仲、都にていかにもなるべかりつるが、これまで逃れ来るは、なんぢと一所で死なんと思ふためなり。」(平家物語)
訳:木曾義仲殿がおっしゃったことには、「我義仲は、都でどのようにでもなるはずであったが、ここまで逃げて来たのは、お前と同じ所で死のうと思ったためである。」
(3)適当・勧誘:~のがよい
(例)「いざ、かいもちひせむ。」(宇治拾遺物語)
訳:「さあ、(皆で)ぼたもちを作ろう。」
・仮定・婉曲:~としたら、~ような
(例)ねびゆかむさまゆかしき人かなと、目とまり給ふ。(源氏物語)
訳:大人になっていくような様子を見たい人だなあと、(光源氏は若紫に)目が止まりなさった。
(1)文末や接続助詞・終助詞の前に「む」があるとき
・主語が一人称(自分)→意志(推量になる場合もあるので注意)
・主語が二人称(相手)→適当・勧誘(推量になる場合もあるので注意)
・三人称(その他)→推量(適当・勧誘になる場合もあるので注意)
「適当・勧誘」の場合、「てむ」「なむ」「こそ~め」の形になることが多い
(2)文の途中で「む」があるとき →仮定・婉曲
推量グループの助動詞を覚えるコツ
推量グループの助動詞は、関係性のまとまりで覚えましょう。
反実仮想の助動詞「まし」
【活用】
ましか(ませ)|〇|まし|まし|ましか|〇
【接続】
未然形
【意味】
(1)反実仮想:~(た)ならば~(た)だろうに
(例)世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(古今集)
訳:世の中にもしまったく桜がなかったとしたら、春の人の心はのどかだっただろうに
(2)実現不可能な希望:~ばよかったのに
(例)見る人もなき山里の桜花ほかの散りなむのちぞ咲かまし(古今集)
訳:見にくる人もいない山里の桜よ。いっそのこと、ほかの桜が散ってしまうであろう(その)あとにこそ咲いたらよいのに
(3)ためらいの意志:~(よ)うかしら・~たものだろうか
(例)「これに何を書かまし」などのたまはせしを(枕草子)
訳:「これに何を書こうかしら」などとおっしゃったが
古典文法の「反実仮想」とは、「事実に反する仮定をし、それに基づいて想像すること」。
・~ましかば、…まし
・~せば、…まし
・~ませば、…まし
・~ば、」…まし
の組み合わせで「もし〜したら…だろうに」と訳します。現代語訳にプラスして、「事実はどうだったのか?」もあわせて押さえましょう。
希望の助動詞「まほし」
【活用】
(まほしく)まほしから|まほしく・まほしかり|まほし|まほしき・まほしかる|まほしけれ|〇
【接続】
未然形
【意味】
(1)願望:~たい、~てほしい
(例)「紫のゆかりを見て、続きの見まほしくおぼゆれど(更級日記)
訳:(源氏物語の)紫の上に関するところを見て、続きが見たいと思うのだが
まとめ
今回の記事では、「未然形接続」の助動詞11つについて解説しました。
まずは11つの種類を「もしもし亀よ」のリズムを覚え、それぞれの意味や用法を押さえていくといいでしょう。
1つ1つを積み重ねることで、少しずつわかる助動詞が増えていきますよ。