おくのほそ道「旅立ち」原文と現代語訳・解説・問題|松尾芭蕉の紀行・俳諧文学

松尾芭蕉
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奥の細道(おくのほそみち)は松尾芭蕉が1702年(元禄15年)に書いた紀行及び俳諧文学です。
内容は江戸から奥州・北陸道を巡った際の旅行記となっています。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる奥の細道の中から「旅立ち(たびだち)」について詳しく解説していきます。

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奥の細道「旅立ち」の解説

奥の細道でも有名な、「旅立ち」について解説していきます。

奥の細道「旅立ち」の原文

月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老を迎ふる者は、日々旅にして、旅をすみかとす。
古人も多く旅に死せるあり。

予も、いづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへ、去年の秋、江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、やゝ年も暮れ、春立てる霞の空に、白川の関越えんと、そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて取るもの手につかず、もも引の破をつづり、笠の緒付けかへて、三里に灸据うるより、松島の月まづ心にかかりて、住める方は人に譲り、杉風が別墅に移るに、

[草の戸も 住替る代ぞ ひなの家]

表八句を庵の柱に懸置。

弥生も末の七日、あけぼのの空朧々として、月は有明けにて光をさまれるものから、富士の峰かすかに見えて、上野・谷中の花の梢、またいつかはと心細し。

むつまじき限りは宵よりつどひて、舟に乗りて送る。
千住といふ所にて舟を上がれば、前途三千里の思ひ(*)胸にふさがりて、幻のちまたに離別の涙をそそぐ。

[行く春や 鳥なき魚の 目は涙]

 
これを矢立ての初めとして、行く道なほ進まず。
人々は途中に立ち並びて、後ろ影の見ゆるまではと、見送るなるべし。

奥の細道「旅立ち」の現代語訳

時は永遠の旅人であり、次々に移ってゆく年もまた旅人である。
舟の上で一生を送る船頭や、馬のくつわを取って老年を迎える馬子などは、毎日が旅であって、旅そのものをすみかとしている(ようなもの)である。
(風雅の道の)昔の人も旅に生涯を終えた者が多い。

自分も、いつの年からか、ちぎれ雲が風に誘われるように、漂泊の思いがやまず、海辺をさすらって、去年の秋、川のほとりのあばら家に(戻り)雲の古巣を払って(しばらく住んでいるうちに)、やがてその年も暮れ、春になって霞のかかった空を眺めるにつけ、白河の関を越えたいと、そぞろ神が身に取りついたように心を狂わせ、道祖神が招いているようで取るもの手につかず、股引の破れを縫い、笠の緒つけかえて、三里に灸据えているうちから、松島の月が何よりも気にかかり、住んでいた家は人に譲り、杉風の別荘に移るに際し、

[粗末な草庵も、(人が)住み替わる時がきたのだなぁ。私の出た後は華やかな雛人形を飾る家となるのだろう。]

(と詠み、この句を発句とした連句の)表八句を庵の柱に掛けておいた。

陰暦三年二十七日、夜明けの空はおぼろに霞んで、月は有明けの月で光は薄らいでいるけれど、富士の峰がかすかに見えて、上野・谷中の桜の梢を、またいつ見ることができるだろうかと心細い。

親しい人々は全て前の晩から集まって、舟に乗って送ってくれる。
千住という所で舟から上がると、前途遥かな旅に出るのだという思いで胸がいっぱいになり、幻のようにはかない現世とは思っても、(いざ別れようとするとやはり)別れの涙を流すのであった。

[春も過ぎ去ろうとしているなぁ。それを惜しんで、鳥は悲しげに鳴き、魚の目は涙で潤んでいるようだ。]

これを旅先で詠む最初の句として(歩き始めたが)、なかなか道がはかどらない。
(見送りの)人々は道に立ち並んで、後ろ姿の見えている間はと、見送ってくれるのだろう。

奥の細道「旅立ち」の単語・語句解説

[舟の上に生涯を浮かべ]
舟の上で一生を送り。(=船頭・船方のこと)

[死せるあり]
死んだ人がいる。

[予]
私。

[片雲の風に誘はれ]
ちぎれ雲が風に誘われるように。

[春立てる霞の空]
春になって霞のかかった空。

[ものにつきて]
自分に取りついて。

[末の七日]
下旬の七日(=二十七日)。

[朧々として]
おぼろに霞んで。

[有明け]
有明け月(夜が明けても空に残っている月)。

[光をさまれるものから]
光は薄らいでいるけれど。

[幻の巷]
幻のようにはかない現世。

*「旅立ち」でテストによく出る問題

○問題:「前途三千里の思ひ(*)」とはどういう思いか。
答え:これから行く旅の長く厳しい事に対する不安な思い。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は奥の細道でも有名な、「旅立ち(たびだち)」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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