土佐日記(とさにっき)は承平五年(935年)頃に書かれた和文日記で、作者は紀貫之です。
今回は高校古典の教科書にも出てくる土佐日記の中から「海賊の恐れ(かいぞくのおそれ)」について詳しく解説していきます。
土佐日記「海賊の恐れ」の解説
土佐日記(とさにっき)でも有名な、海賊の恐れ(かいぞくのおそれ)について解説していきます。
海賊の恐れの原文
二十三日。
日照りて曇りぬ。「このわたり、海賊の恐れあり。」と言へば、神仏を祈る。
二十四日。
昨日の同じ所なり。
二十五日。
楫取らの「北風悪し。」と言へば、船出ださず。「海賊追ひ来。」と言ふこと、絶えず聞こゆ。
二十六日。
まことにやあらむ。「海賊追ふ。」と言へば、夜中ばかり(*)船を出だして漕ぎ来る路に手向けする所あり。
楫取して幣(ぬさ)奉らするに、幣の東へ散れば楫取の申して奉る言は、「この幣の散る方に御船すみやかに漕がしめ給へ。」と申して奉る。
これを聞きて、ある女の童の詠める、
とぞ詠める。
この間に、風のよければ、楫取いたく誇りて、船に帆上げなど喜ぶ。
その音を聞きて、童も嫗も、いつしかとし思へばにやあらむ、いたく喜ぶ。
この中に、淡路の専女といふ人の詠める歌、
とぞ。
天気のことにつけて祈る。
海賊の恐れの現代文
二十三日。
日が照ってそして曇った。
「この辺りは海賊の恐れがある。」と言うので、神仏に祈る。
二十四日。
昨日と同じ場所である。
二十五日。
船頭たちが、「北風が悪い。」と言うので、船を出さない。
「海賊が追って来る。」ということ(=うわさ)が、絶え間なく聞こえる。
二十六日。
本当なのであろうか、「海賊が追って来る。」と言うので、深夜頃から船を出して漕いで来るその途中に、神に供え物をする所がある。
船頭に言いつけて幣を奉納させたところ、幣が東へ散ったので、船頭が神に申しあげて差し上げる際の言葉は、「この幣の散る方角に、御船をすぐに漕がせてください。」と申して差し上げる。
これを聞いて、ある女の子が詠んだ、
と詠んだ。
この間に、風がよくなったので、船頭はとても誇らしげで、船に帆を上げなどして喜ぶ。
その音を聞いて、子どももおばあさんも、早くと思っていたからであろうか、とても喜んだ。
この人々の中で、淡路島出身の老女という人が詠んだ歌、
と詠んだ。
天気のことについて神仏に祈る。
海賊の恐れの単語・語句解説
この辺り。
[聞こゆ]
ここでは”聞こえる”の意味。
[まことにやあらむ]
本当であろうか。
[手向け]
神や仏に供え物をすること。供え物。
[楫取りして]
楫取りに言いつけて。
[吹かなむ]
吹いてほしい。
[思へばにやあらむ]
思ったからであろうか。
[うれしかれけれ]
喜ぶことだなあ。
*土佐日記「海賊の恐れ」でテストによく出る問題
○問題:「夜中ばかり(*)」に出発したのはなぜか。
答え:「海賊が追ってくる」という情報が入ったので、海賊に見つからないようにする為。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は土佐日記の海賊の恐れ(かいぞくのおそれ)についてご紹介しました。
その他については下記の関連記事をご覧下さい。