土佐日記(とさにっき)は紀貫之(きのつらゆき)が書いた和文日記です。
承平五年(935年)頃に書かれており、現存最古の和文日記となっています。
今回は高校古典の教科書にも出てくる土佐日記の中から「忘れ貝(わすれがい)」について詳しく解説していきます。
土佐日記「忘れ貝」の解説
土佐日記(とさにっき)でも有名な、忘れ貝(わすれがい)について解説していきます。
忘れ貝の原文
四日。
楫取り、「今日、風雲の気色はなはだ悪し。」と言ひて、船出(い)ださずなりぬ。
しかれども、ひねもすに波風立たず。
この楫取りは、日もえ測らぬかたゐなりけり。
この泊の浜には、くさぐさのうるはしき貝、石など多かり。
かかれば、ただ昔の人をのみ恋ひつつ、船なる人の詠める、
と言へれば、ある人の堪へずして、船の心やりに詠める、
となむ言へる。
女子(をなむご)のためには、親幼くなりぬべし。
「玉ならずもありけむを。」と人言はむや。
されども、「死し子、顔よかりき。」と言ふやうもあり。
なほ、同じ所に、日を経ることを嘆きて、ある女の詠める歌、
忘れ貝の現代文
二月四日。
船頭が、「今日は風や雲の様子が大変悪い。」と言って、船を出さずに終わった。
それなのに、一日中波も風も立たない。
この船頭は、天気も予測できない愚か者であったのだ。
この港の浜辺には、色々の美しい貝、石などがたくさんある。
そこで、ただもう亡くなった人だけを恋しがって、船の中にいる人が詠んだ、
と言ったところ、ある人が堪えきれずに、船旅の間の気晴らし詠んだ、
と言ったのだった。
女の子の為には、親はきっと愚かになってしまうに違いない。
「玉というほどでもなかったろうに。」と人は言うだろうか。
しかし、「死んだ子は、顔立ちがよかった。」と言うような事もある。
やはり、同じ場所で、日を過ごすことを嘆いて、ある女の詠んだ歌は、
忘れ貝の単語・語句解説
風や雲の様子。
[しかれども]
それなのに。逆接の接続詞。
[ひねもすに]
一日中。
[え計らぬ]
予測できない。「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。
[くさぐさ]
いろいろ。
[船なる人]
船の中にいる人。
[打ちも寄せなむ]
どうか打ち寄せてほしい。
[白玉]
白い美しい玉。特に真珠にこと。
[恋ふるをだにも]
せめて恋しく思う気持ちだけでも。
[幼くなりぬべし]
愚かになってしまうに違いない。
[手を漬てて]
手を水に浸して。
[日ごろ]
幾日も。何日か。
*忘れ貝でテストによく出る問題
○問題:「白玉」とは何をたとえたものか。
答え:土佐の国で亡くなった女の子。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は土佐日記の忘れ貝(わすれがい)についてご紹介しました。
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