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十訓抄「博雅の三位と鬼の笛」原文と現代語訳・解説・問題|高校古典

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十訓抄(じっきんしょう)は1252年(建長4年)に書かれた説話集で、作者は六波羅二臈左衛門入道こと湯浅宗業です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる十訓抄の中から「博雅の三位と鬼の笛」について詳しく解説していきます。

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十訓抄「博雅の三位と鬼の笛」の解説

十訓抄でも有名な、「博雅の三位と鬼の笛」について解説していきます。

十訓抄「博雅の三位と鬼の笛」の原文

博雅の三位、月の明かかりける夜、直衣にて、朱雀門の前に遊びて、夜もすがら笛を吹かれけるに、同じさまに、直衣着たる男の、笛吹きければ、誰ならむと思ふほどに、その笛の音、この世にたぐひなくめでたく聞こえければ、あやしくて、近寄りて見ければ、いまだ見ぬ人なりけり。

我もものをも言はず、かれも言ふことなし。
かくのごとく、月の夜ごとに行きあひて吹くこと、夜ごろになりぬ。

かの人の笛の音、ことにめでたかりければ、試みに、かれを取り替へて吹きければ、世になきほどの笛なり。
そののち、なほなほ月ごろになれば、行きあひて吹きけれど、

「もとの笛を返し取らむ。」

とも言はざりければ、長く替へてやみにけり。
三位失せてのち、帝、この笛を召して、時の笛吹きどもに吹かせらるれど、その音を吹きあらはす人なかりけり。

そののち、浄蔵といふ、めでたき笛吹きありけり。
召して吹かせ給ふに、かの三位に劣らざりければ、帝、御感ありて、

「この笛の主(*)、朱雀門の辺りにて得たりけるとこそ聞け。浄蔵、この所に行きて、吹け。」

と仰せられければ、月の夜、仰せのごとく、かれに行きて、この笛を吹きけるに、かの門の楼上に、高く大きなる音にて、

「なほ逸物かな。」

と褒めけるを、かくと奏しければ、初めて鬼の笛と知ろしめしけり。
「葉二」と名づけて、天下第一の笛なり。

十訓抄「博雅の三位と鬼の笛」の現代語訳

博雅の三位が、月の明るかった夜に、直衣姿で、朱雀門の前に出かけて行って、一晩中笛をお吹きになった時に、(自分と)同じように、直衣を着ている男が、笛を吹いたので誰であろうと思っていると、その笛の音が、この世に比類がないほど美しく聞こえたので、不思議に思って、近寄って見ると、まだ見たことのない人であった。

(博雅は)自分も何も言わず、その人も何も言わない。
このように、月の夜のたびに行き合って(共に笛を)吹くことが、幾夜にもなった。

その人の笛の音は、特に美しかったので、(博雅は)ためしに、その笛を(自分のものと)取り替えて吹いてみたところ、この世にまたとないくらいの笛である。
その後、やはり月の(美しい)頃になると、(互いに)行き合って吹いたけれど、

「もとの笛を返してもらおう。」

とも(相手が)言わなかったので、(そのまま)長く取り替えたままになってしまった。
博雅の三位が亡くなってのち、帝は、この笛をお取り寄せになって、当時の笛吹きたちに吹かせなさったけれど、その音(=博雅が吹いたような音)を出せる人はいなかった。

その後、浄蔵という、優れた笛吹がいた。
(帝はこれを)召して吹かせなさったところ、あの博雅に劣らなかったので、帝は感心なさって、

「この笛の主は、朱雀門の辺りで(この笛を)手に入れたと聞いている。浄蔵よ、この場所に行って(笛を)吹け。」

と仰せになられたので、(浄蔵は)月の夜に、(帝の)仰せのように、その場所に行って、この笛を吹いたところ、その門の楼の上で、高く大きな声で、

「やはり群を抜いて優れたものだなぁ。」

とほめたのを、こういうことでしたと(帝に)申しあげたので、(帝は)初めて(この笛が)鬼の笛だったのだとお知りになられたのだ。
(この笛は)「葉二」と名づけられて、天下第一の笛(となったの)である。

十訓抄「博雅の三位と鬼の笛」の単語・語句解説

[遊びて]
ここでは、”散歩する”の意味。

[めでたく]
美しく。

[あやしくて]
不思議に思って。

[夜ごろ]
幾夜。

[かれ]
その笛。

[やみにけり]
そのままになってしまった。

[吹かせらるれど]
吹かせなさったが。

[御感ありて]
(帝が)感心なさって。

[得たりけるとこそ聞け]
手に入れたと聞いている。

[かれ]
かの場所の意。ここでは朱雀門のこと。

[なほ]
やはり。

[逸物]
優れた品物。一品

[奏しければ]
(帝に)申しあげたので。

[知ろめしけり]
(帝が)お知りになったのだ。

*十訓抄「博雅の三位と鬼の笛」でテストによく出る問題

○問題:「この笛の主(*)」とは誰のことか。
答え:博雅の三位(源博雅)。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は十訓抄でも有名な、「博雅の三位と鬼の笛」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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