日本最古の歌集である、万葉集。
そこには恋愛に関する和歌も数多く詠まれています。
遥か昔から人間にとって恋愛は、片想いでも両思いでも、常に悩みの種でした。
秀歌撰として有名な百人一首でも、実に43首が恋の歌なのです。
そこで今回は、万葉集や古今和歌集など、古代の歌集から恋愛に関する和歌を53首ご紹介したいと思います。
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恋愛に関する和歌一覧
恋愛を題材にした和歌を53首ご紹介します。
なお、恋愛和歌の朗読動画は四季の美Youtubeチャンネルをご覧下さい。
磐之媛命(いわのひめのみこと)
わが黒髪に霜の置くまでに
万葉集
【意味】
このまま私は恋しいあなたを待ちましょう。
私の黒髪に霜がおりるまで、白髪になるまでも。
何方(いづへ)の方にわが恋ひやまむ
万葉集
【意味】
秋の朝、稲穂の上に霞がたなびくように、私の恋心はどこへも行かず、貴方だけを思ってただよっています。
迎へか行かむ待ちにか待たむ
万葉集
【意味】
貴方が私のもとを去って長い日にちが経ちました。貴方のおられる山奥まで訪ねて行きましょうか、お帰りをひたすら待ちましょうか。
磐根し枕(ま)きて死なましものを
万葉集
【意味】
こんなに貴方を恋い慕っている苦しさに耐えているより、高い山の岩のもとで死んだほうが良いくらいです。
光明皇后(こうみょうこうごう)
この降る雪の嬉しからまし
万葉集
【意味】
夫のあなたと一緒に見れば、この美しい雪景色も嬉しいでしょうに。
額田王(ぬかたのおおきみ)
野守は見ずや君が袖振る
万葉集
【意味】
(あかねさす)紫草の咲く野を行き、標を張った野を行って、野守が見ているではないかしら。あなたが袖をお振りになるのを。
大津皇子(おおつのみこ)
我立ち濡れぬ山のしづくに
万葉集
【意味】
私は貴方を待って、あしひきの(枕詞)山の雫に濡れてしまいました。
石川郎女(いしかわのいらつめ)
山のしづくにならましものを
万葉集
【意味】
私を待って濡れたとおっしゃるその雫になって、貴方に寄り添いたかったです。
恋に沈まぬ手童(わらは)のごと
万葉集
【意味】
年老いた私がこんなに深く貴方に恋して、まるで幼児のように恋にうつつをぬかしています。
笠女郎(かさのいらつめ)
小松が下に立ち嘆くかも
万葉集
【意味】
あなたが恋しくてたまらず、なら山の松の木の下に立って嘆き続けました。
面影にして見ゆとふものを
万葉集
【意味】
遠い陸奥の国にあるという真野の草原は、遠くても面影として見えるというのに、近い都にいらっしゃる貴方を見ることはありません。
わが恋ひわたるこの月のころを
万葉集
【意味】
白鳥の飛羽山の松のように、あなたに会えるのをひたすら待っています。
いや日に異には念ひ益すとも
万葉集
【意味】
私の生命がある限り、貴方のことは忘れません。日ごとに想いが増す事はあったとしても。
命死ぬべく恋ひ渡るかも
万葉集
【意味】
朧な朝霧の中でお目にかかったあなたゆえの恋に、死にたいくらい恋しいです。
恐(かしこ)き人に恋ひ渡るかも
万葉集
【意味】
伊勢の海に打ち寄せる怒涛のように、諦めようとしては再び思いを寄せ続けています。
大伴家持(おおとものやかもち)
相見そめけむ遂げざらまくに
万葉集
【意味】
最後まで添い遂げることができないのだったら、かえって恋をしないで黙っていればよかった。