伊勢物語(いせものがたり)は百二十五段からなる短い歌物語で、平安時代に書かれました。
作者は不詳ですが、今でも日本人に愛されている作品です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる伊勢物語の中から「月やあらぬ」について詳しく解説していきます。
伊勢物語「月やあらぬ」の解説
伊勢物語でも有名な、「月やあらぬ」について解説していきます。
伊勢物語「月やあらぬ」の原文
昔、東の五条に、大后の宮おはしましける西の対に、住む人ありけり。
それを、本意にはあらで、心ざし深かりける人、行きとぶらひけるを、正月の十日ばかりのほどに、ほかに隠れにけり。
あり所は聞けど、人の行き通ふべき所にもあらざりければ、なほ憂しと思ひつつなむありける。
またの年の正月に、梅の花盛りに、去年を恋ひて行きて、立ちて見、ゐて見、見れど、去年に似るべくもあらず。
うち泣きて、あばらなる板敷に、月の傾くまで伏せりて、去年を思ひ出でて詠める。
と詠みて、夜のほのぼのと明くるに、泣く泣く帰りにけり。
伊勢物語「月やあらぬ」の現代語訳
昔、東の京の五条に、皇太后が(住んで)いらっしゃった(御殿の)西側に建てられた建物に、住む人(=藤原高子)がいた。
その人を、思うように会うこともできなかったが、愛情が深かった人が、訪れていたが、正月の十日ぐらいの頃に、(その女は)ほかの場所へ(身を)隠してしまった。
(その女の)居場所は聞いたけれど、普通の身分の人が行き来できるような所でもなかったので、いっそうつらいと思いながら(女を慕い続けて)過ごしていた。
翌年の正月、梅の花盛りの頃に、(男は)去年(のこと)を思い慕って(女の住んでいた屋敷へ)行き、立って見、座って見、見るけれど、去年に似るはずもない。
泣いて、無人となって障子なども取り払い、がらんとしている板敷の上に、月が傾くまで身を横たえていて、去年を思い出して詠んだ。
と詠んで、夜がほのぼのと明ける頃、泣きながら帰っていった。
伊勢物語「月やあらぬ」の単語・語句解説
いらっしゃった。
[心ざし]
ここでは”愛情”や”誠意”といった意味。
[行きとぶらひけるを]
訪れていたが。
[十日ばかり]
十日ぐらい。
[あり所は聞けど]
(女の新しい)居場所は聞いていたけれど。
[憂し]
ここでは”つらい”や”憂鬱だ”という意味。
[またの年]
翌年。
[似るべくもあらず]
似るはずもない。
[わが身ひとつ]
自分の身だけ。
*伊勢物語「月やあらぬ」でテストによく出る問題
○問題:「月やあらぬ…」の歌に込められている心情を答えよ。
答え:自分は変わらずに女を慕い続けているのに、女との関係を含めて全てが変わってしまった事を嘆く心情。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は伊勢物語でも有名な、「月やあらぬ」についてご紹介しました。
その他については下記の関連記事をご覧下さい。
伊勢物語「つひにゆく道」
伊勢物語「通ひ路の関守」
伊勢物語「小野の雪」
伊勢物語「狩りの使ひ」
伊勢物語「月やあらぬ」
伊勢物語「あづさ弓」
伊勢物語「さらぬ別れ」
伊勢物語「筒井筒」
伊勢物語「東下り」
伊勢物語「芥川」
古典作品一覧|日本を代表する主な古典文学まとめ