当サイトはアフィリエイト広告を使用しています。

伊勢物語「芥川・白玉か」原文と現代語訳・解説・問題|平安時代の歌物語

あじさいの写真|夏に咲く花々
Sponsored

伊勢物語(いせものがたり)は平安時代初期の歌物語で、作者は不詳となっています。

それぞれが半独立した百二十五段という短い歌物語で、源氏物語などと比べて読みやすい事から庶民にも広く親しまれてきました。
主人公は在原業平ではないかという説が有力ですが、詳しい事はわかっていません。

今回は高校古典の教科書にも出てくる伊勢物語の有名な説話「芥川(あくたがわ)」について詳しく解説していきます。
(教科書によっては「白玉か」という題名のものもあり)

[関連記事]
古典作品一覧|日本を代表する主な古典文学まとめ

Sponsored

伊勢物語「芥川」の解説

伊勢物語(いせものがたり)でも有名な、芥川(あくたがわ)について解説していきます。

【伊勢物語「芥川」の概要】
ある男が、長年思い続けていた女性を盗み、芥川のほとりまで逃げた。
雷雨がひどくなったので、男は女を蔵に押し込めて夜明けを待つが、鬼に食べられてしまう。
女がいないのに気づくと、男は地団駄を踏んで泣き悲しんだ。

関連:伊勢物語「芥川」朗読動画

芥川の原文


昔、男ありけり。
女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。
芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、

「かれは何ぞ。」

となむ男に問ひける。

行く先多く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓、やなぐひを負ひて戸口にをり、はや(*)夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや(*)一口に喰ひてけり。

「あなや。」

と言ひけれど、神鳴る騒ぎにえ聞かざりけり。

やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。
足ずりをして泣けどもかひなし。

[白玉か何ぞと人の問ひし時 露と答へて消えなましものを]


これは、二条の后の、いとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてゐ給へりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひて出でたりけるを、御兄堀河の大臣、太郎国経の大納言、まだ下臈にて内裏へ参り給ふに、いみじう泣く人あるを聞きつけて、とどめてとり返し(*)給うてけり。

それをかく鬼とは言ふなりけり。
まだいと若うて、后のただにおはしける時とや。

芥川の現代語訳


昔、男がいた。
(高貴な)女で妻にする事が出来そうになかったその女を、何年もの間求婚し続けていたが、やっとのことで(女を)盗み出して、たいそう暗い夜に(逃げて)来た。
芥川という川(のほとり)を(女を)連れて行ったところ、草の上におりていた露を(見て、女は)、

「(光っている)あれは何。」

と、男に訪ねた。

これから行先も遠く、夜も更けてしまったので、鬼のいる所とも知らないで、雷までたいそう激しく鳴り、雨もひどく降ったので、荒れ果てた蔵に、女を奥に押し入れて、男は、弓、胡簶を背負って戸口に座り、早く夜も明けてほしいと思いながら座っていた所、鬼がたちまち(女を)一口に食べてしまった。

(女は)「あれえ。」

と言ったけれども、雷が鳴る騒ぎに(男は)聞くことが出来なかった。
しだいに夜も明けてゆくので、(男が蔵の中を)見ると、連れてきた女もいない。
じだんだを踏んで無くけれどもどうしようもない。

[(あの光るものは)真珠なの何なの、とあの人が訪ねた時、露ですよと答えて(私もその露のようにそのまま)消えてしまえばよかったのになあ。(そうすればこんな悲しい思いをすることもなかっただろうに。)]


これ(=この話)は、二条の后が、いとこの女御のお側に、お仕えするようにして(身を寄せて)おいでになったが、(后の)容貌がたいそう素晴らしくていらっしゃったので、(男が)盗んで背負って出て行ったのだが、(后の)兄上の堀河の大臣、長男の国経の大納言が、まだ官位の低い役人として宮中へ参上なさる時に、ひどく泣く人がいるのを聞きつけて、(男を)引きとどめて(后を)取り返しなさったのであった。

それをこのように鬼と言ったのであった。
まだたいそう若くて后が普通の身分でいらっしゃった時のこととか。

芥川の単語・語句解説

①の単語・語句解説

[女のえ得(う)まじかりけるを]
女で、妻にすることが出来そうにもなかった女を。「え」は打消で、出来ない・不可能という意味を表す。

[よばひわたりけるを]
求婚し続けていたが。「よばふ」はここでは言い寄るの意。「わたる」はずっと〜し続ける。「を」は逆接の接続助詞。

[からうじて]
やっとのことで。「からくして」の変化したもの。

[率て行きければ(いてゆきければ)]
連れて行ったところ。「率る」で引き連れる、連れるの意。

[かれ]
あれ。指示代名詞。

②の単語・語句解説

[知らで]
知らないで。「で」は打消の接続助詞。

[いみじう(いみじゅう)]
たいそう。ひどく。「いみじ」の連用形「いみじく」のウ音便。

[いたう(いとう)]
ひどく。はげしく。「いたし」の連用形「いたく」のウ音便。

[足ずり]
嘆いたり、怒ったりして、じだんだを踏むこと。

[かひなし]
どうしようもない。無駄だ。

[仕うまつる]
お仕えする。「仕ふ」の謙遜語で「仕へまつる」のウ音便。

[いとめでたく]
たいそう素晴らしく。

[下臈]
ここでは官位の低い者の意味。

[参り給ふ(まいりたもう)]
「参る」は「行く」「来」の謙譲語。「給ふ」は尊敬の補助動詞。作者の堀河の大臣、太郎国経の大納言に対する敬意を表す。

伊勢物語「芥川」でテストによく出る問題

○問題:二つの「はや(*)」の意味の違いを答えよ。
答え:「はや夜も」=早く。急いで。 「はや一口に」=たちまち。早くも。

○問題:誰が誰を「とり返し(*)」たのか。
答え:二条の后の兄である堀河の大臣と国経が二条の后を取り返した。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は高校古典の教科書にも出てくる伊勢物語(いせものがたり)の「芥川(あくたがわ)」についてご紹介しました。
(教科書によっては「白玉か」という題名のものもあり)

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

参考/おすすめ書籍

古典
Sponsored
シェアする
四季の美をフォローする
Sponsored

関連