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谷崎潤一郎の生涯とおすすめ作品・年表|日本の大文豪・作家

原稿用紙の画像|四季の美
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文豪の中の文豪とも評される、谷崎潤一郎。
その耽美的な作品には、美しい日本の姿も描かれています。

今回はそんな谷崎潤一郎の生涯と作品についてご紹介します。

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谷崎潤一郎の誕生

谷崎潤一郎は明治19年7月24日、現在の東京都中央区の日本橋に生まれました。
長男は生後3日で亡くなっていた為、戸籍上は潤一郎が長男となっています。

その後3男3女が後に続き、兄妹の多い家庭で育ちます。

小学校に入学した頃までは裕福な家庭環境でしたが、父の商売不振もあり徐々に家計が苦しくなっていきます。
そんな谷崎が文学に触れたのもこの頃で、担任の稲葉先生に才能を認められて文学の道を志します。

そして友人らと「学生倶楽部」という回覧雑誌を立ち上げ、谷崎も「学生の夢」や「五月雨」という小品を書いています。

その後伯父の支援もあり、なんとか中学に進んだ谷崎は2年の1学期終了後に3年へ飛び級するなど、秀才ぶりを発揮。
第一高等学校英法科、東京帝国大学国文科へも親族らの支援で進んでいきました。

文学の道へ

谷崎の成績からすれば、東京帝国大学で入るべきなのは国文科ではなく法学部とされていました。
つまり谷崎はいわゆるエリート街道から自らそれて、作家の道へ進む選択をしたのです。

しかし作家になる明確な方法もなく、なんの保証もない時代。
この頃を回想して谷崎は「私の十八九歳から二十四五歳に至る六七年間は、実に此の暗澹たる危惧の時代であつた」(青春物語_中央公論)と述べています。

作家としての成功

谷崎は明治43年、友人らと同人雑誌第2次「新思潮」を立ち上げます。
創刊号に「誕生」、11月に「刺青」、12月に「麒麟」を発表します。

この頃は「白樺」や「三田文学」などの雑誌も創刊され、反自然主義文学の機運が高まりつつありました。
そして明治44年、谷崎は「スバル」に「少年」、「幇間」を続けて発表し、注目を集めます。
永井荷風も論評「谷崎純一郎氏の作品」を発表し、その中で

明治時代の文壇に於て今日まで誰一人手を下す事の出来なかつた、或は手を下さうともしなかつた藝術の一方面を開拓した成功者は谷崎潤一郎氏である。

と評価し、声価は決定的なものとなりました。

谷崎潤一郎の生涯

29歳の時、谷崎は石川千代と結婚。長女鮎子が生まれます。
それまでの放蕩生活をやめて家庭を持った谷崎でしたが、安定した家庭と芸術作品を生み出す事のギャップに葛藤します。

結婚後間もなく、千代の妹で15歳のせい子を引き取り、養育し始めます。
せい子は当時としては珍しい、今でいうモデル体型の美しい少女で、このせい子が後に「痴人の愛」のナオミのモデルとなりました。

大正6年に母が他界。「母を恋ふる記」を発表します。
そして大正6年から9年にかけて、小田原事件という文壇史に残る出来事がおこります。

CHECK
【小田原事件】
谷崎は、親友である佐藤春夫に夫人の千代を譲る約束をします。
しかし実行の段階になると谷崎は約束を取り消し、既に千代を想っていた佐藤はこれに怒り谷崎に絶交を告げます。
この出来事が起こった当時に谷崎が住んでいたのが小田原だった事から、「小田原事件」と名付けられました。

小田原事件のすぐ後、谷崎は横浜へ引越します。
ここで洋風の生活を送っていた谷崎ですが、大正12年に関東大震災が発生。
箱根のバスの中にいた谷崎は運良く震災の直撃を逃れます。

しかし横浜の自宅は全焼し、その後関西へ移住。
以後は関西に拠点を構え続けました。

小田原事件から10年後、昭和5年に谷崎は正式に千代と離婚し、妻を譲渡する事を佐藤春夫との連盟で発表します。
この出来事は社会に一大センセーションを巻き起こしました。

その翌年に21歳年下で文藝春秋社「婦人サロン」記者の古川丁未子と結婚。
この頃「盲目物語」を発表します。

2度目の新婚生活を続ける谷崎でしたが、少し前に知り合っていた大阪の造船所の娘である根津松子に次第に惹かれていきます。
そして松子をモデルに「蘆刈」、「春琴抄」などを書き、発表していきます。

【その頃の松子への手紙】

一生あなた様に御仕え申すことが出来ましたら たとえその為に身を滅ぼしてもそれが私には無上の幸福でございます
はじめて御目にかかりました日からぼんやりそう感じておりましたが 殊に此の四五年来はあなた様の御蔭にて自分の藝術の行きづまりが開けて来たように思います

私には崇拝する高貴の女性がなければ思うように創作が出来ないのでございますが それがようよう今日にあって始めてそういう御方様にめぐり合うことが出来たのでございます

実は去年の「盲目物語」なども始終あなた様の事を念頭に置き自分は盲目の按摩のつもりで書きました
今後あなた様の御蔭にて私の藝術の境地はきっと豊富になることと存じます
たとえ離れておりましてもあなた様のことさへ思っておりましたら それで私には無限の創作力が湧いて参ります

しかし誤解を遊ばしては困ります
私に取りましては藝術のためのあなた様ではなく あなた様のための藝術でございます
もし幸いに私の藝術が後世まで残るものならば それはあなた様というものを伝えるためと思召して下さいまし

いよいよ丁未子との結婚生活も破綻し、昭和9年に離婚。
その翌年には松子と同棲をはじめ、3度目の結婚をします。

その後は離婚することもなく、松子を生涯の伴侶として創作活動に打ち込んでいきました。
源氏物語の現代語訳などの一大事業にも取り組み、晩年には「少将滋幹の母」や「鍵」、「癇癪老人日記」などを発表。

最期まで藝術と向き合いながら、昭和35年に息を引き取りました。

谷崎潤一郎の代表作

ここでは谷崎潤一郎の主な有名作品をあらすじも交えてご紹介します。

刺青


【内容あらすじ】
刺青師の清吉は、美しい女性の肌に自分の魂を彫ることを念願としていた。
ある時、駕籠の簾からこぼれ出た女の足に魅せられて、その美女を言葉巧みに誘い見事な女郎蜘蛛を彫る事が出来た。
刺青が完成した時、針の苦痛にたえつづけた美女の背中で蜘蛛は生きもののように妖艶な輝きをみせるのであった。

蓼喰ふ虫


【内容あらすじ】
結婚後10余年たった斯波要・美佐子夫妻は互いに離婚の機会を待つ状態にあった。
美佐子は愛人阿曾と付き合い、要は異人の売春婦の所へ出掛けたりしているが、2人は子どもの為に離婚を決意出来ない。
そしていつか要は妻の父の古風な趣味生活に共鳴して伝統的な美に接するようになり、老境の諦観に近づいていく。

春琴抄


【内容あらすじ】
大阪の薬種商、鵙屋の娘である春琴と、奉公人である佐助の物語。
9歳で失明した春琴は琴の道に生きるが、佐助もその手ほどきを受けるうちに2人の間に子どもが生まれる。
ある夜に何者かに熱湯をかけられて顔をやけどした春琴。
傷心する春琴の為に佐助は自分の眼を針で突いて自身も盲目となる。

陰翳礼讃

陰翳礼讃
パイインターナショナル

日本の伝統文化と古典文化への回帰を示した随筆。

細雪


【内容あらすじ】
大阪船場の没落豪商の四人姉妹の物語。
古典的で内気な三女雪子は、縁談がなかなかまとまらない。
一方末娘の妙子は対照的に奔放で近代的な行動派で、何かと物議をかもす。
次女の幸子はこれらを処理するために苦慮するのだが、雪子もようやく結婚式を挙げることに。

少将滋幹の母


【内容あらすじ】
醍醐帝のころ、時の権力者左大臣藤原時平の為に幼くして生みの母と生別した少将滋幹は美しい母の面影を思いながら成長するが、仇敵の時平も死去した40年後に今は尼僧姿になった母と再会する。

小説作品年表

西暦 作品名
1910 刺青、麒麟
1911 少年、幇間、秘密、彷徨
1912 悪魔、悪魔続篇、羹
1913 恐怖、熱風に吹かれて
1914 捨てられるまで、饒太郎、金色の死
1915 お艶殺し、創造、お才と巳之介、独探
1916 独探、亡友、美男、鬼の面
1917 人魚の嘆き、既婚者と離婚者、魔術師、玄奘三蔵、詩人のわかれ、或る異端者の悲しみ、ハッサン・カンの妖術、女人神聖
1918 前科者、人面疽、二人の稚児、金と銀、白昼鬼語、二人の芸術家の話、ちひさな王国、柳湯の事件
1919 美食倶楽部、母を恋ふる記、画舫記、秦淮の夜、南京奇望街、呪はれた戯曲、富美子の足、或る少年の怯れ、
1920 途上、鮫人
1921 私、不幸な母の話、鶴涙、AとBの話
1922 青い花
1923 アヱ゛・マリア、蘿洞先生、肉塊、神と人との間
1924 痴人の愛
1925 赤い屋根、馬の糞
1926 友田と松永の話、青塚氏の話
1927 日本に於けるクリツプン事件
1928 続蘿洞先生、卍、蓼喰ふ虫
1929 三人法師
1930 乱菊物語
1931 盲目物語、吉野葛、武州公秘話
1932 蘆刈
1933 春琴抄
1934
1935 聞書抄〈第二盲目物語〉
1936 猫と庄造と二人のをんな
1943 細雪
1949 月と狂言師、少将滋幹の母
1955 過酸化満俺水の夢
1956 鍵、鴨東綺譚
1957
1958 残虐記
1959 夢の浮橋
1960
1961 瘋癲老人日記
1962 台所太平記

まとめ

いかがでしたでしょうか。
文豪たちからも「大谷崎」といわれる程の存在だった谷崎潤一郎。
三島由紀夫は追悼文で、

「氏の死によつて、日本文学は確実に一時代を終つた。氏の二十歳から今日までの六十年間は、後世、「谷崎朝文学」として概括されても、ふしぎはないと思はれる」

と記しています。

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