当サイトはアフィリエイト広告を使用しています。

徒然草「人の亡きあとばかり」原文と現代語訳・解説・問題|兼好法師の随筆

フクジュソウの写真|冬に咲く花
Sponsored

徒然草(つれづれぐさ)は兼好法師が鎌倉時代末期に書いた随筆です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる徒然草の中から「人の亡きあとばかり」について詳しく解説していきます。

Sponsored

徒然草「人の亡きあとばかり」の解説

徒然草でも有名な、「人の亡きあとばかり」について解説していきます。

徒然草「人の亡きあとばかり」の原文

人の亡きあとばかり悲しきはなし。

中陰のほど、山里などに移ろひて、便悪しく、狭き所にあまたあひ居て、後のわざども営み合へる、心慌たたし。
日数の早く過ぐるほどぞ、ものにも似ぬ。

果ての日は、いと情けなう、互ひに言ふこともなく、我かしこげに物ひきしたため、散り散りに行きあかれぬ。
もとの住みかに帰りてぞ、さらに悲しきことは多かるべき。

「しかしかのことはあなかしこ、あとのため忌むなることぞ。」

など言へるこそ、かばかり(*)の中に何かはと、人の心はなほうたておぼゆれ。
年月経ても、つゆ忘るるにはあらねど、去る者は日々に疎しといへることなれば、さはいへど、その際ばかりはおぼえぬにや、よしなごと言ひて、うちも笑ひぬ。

骸は気疎き山の中に納めて、さるべき日ばかり詣でつつ見れば、ほどなく、卒都婆も苔むし、木の葉降り埋みて、夕べの嵐、夜の月のみぞ、言問ふよすがなりける。
思ひ出でて偲ぶ人あらんほどこそあらめ、そもまたほどなく失せて、聞き伝ふるばかりの末々は、あはれとや思ふ。

さるは、跡とふわざも絶えぬれば、いづれの人と名をだに知らず、年々の春の草のみぞ、心あらん人は、あはれと見るべきを、果ては、嵐にむせびし松も千年を待たで薪に砕かれ、古き墳はすかれて田となりぬ。
その形だになくなりぬるぞ、悲しき。

徒然草「人の亡きあとばかり」の現代語訳

人が死んだ後ほど悲しいものはない。

四十九日の間(遺族や親戚などは)山里などに移り住んで、不憫で狭い所に多くの者が寄って、死後のさまざまな仏事を営みあっているのは、気ぜわしい。
(その間の)日数の早く立つ程度はたとえようもない。

中陰の最後の日は、何の情味もなく、互いにものも言わずに自分本位に(身のまわりの)物をとりまとめ、三々五々帰ってしまう。
元の我が家に帰ってからこそ、いっそう(故人を偲び)悲しいことは多いであろう。

(そんな折)「これこれの事は、あぁ縁起でもない、あとに生き残った人のために、避けるということですよ。」

などと言っているのは、これ程の(悲しみの)中でどうして(縁起をかつぐ必要があるの)かと、人の心というものは、やはり嫌なものに思われる。
年月が経っても、(故人を)全く忘れるわけではないが、「死んだ者には日につけ忘れられる」と(故人も)言っていることなので、そうは言うものの、亡くなった当時ほどは(悲しく)感じられないのだろうか、つまらぬことを言って笑ってしまう。

亡骸は人気のない山中に葬り、(命日などの)しかるべき日だけお参りしては見ると、間もなく、卒都婆も苔むし、木の葉が降り積もって(墓を)埋め、(やがて誰も墓参りしなくなり)夕方の嵐や夜の月だけが、訪ねて来る縁者となることだよ。
故人を思い出して懐かしがる人がいるうちはともかく、そんな人もまたすぐに亡くなり、(故人のことを)話に聞き伝えるだけの子孫たちは、しみじみ懐かしむだろうか(、いや、懐かしむまい)。

そのうえ、故人の冥福を祈る仏事や墓参も絶えてしまうと、(墓の主が)どこの誰とも名さえ不明となり、毎年の春の草だけを、情趣を解する人は、しみじみと見るだろうが、ついには、嵐にむせぶように枝を鳴らしていた松も千年も待たずに薪に砕かれ、古くなった墳墓は(鍬で)掘り起こされて田となってしまう。
(こうして墓の)跡形さえもなくなってしまうというのは、まことに悲しいことである。

徒然草「人の亡きあとばかり」の単語・語句解説

[便悪しく]
不便で。条件が悪く。

[情けなう]
情味がなく。

[行きあかれぬ]
別れて行った。

[忌むことぞ]
避けるということだ。

[うたて]
嫌に。不愉快に。

[つゆ忘るるにはあらねど]
全く忘れるわけではないけれども。

[疎し]
疎遠である。無関心である。

[その際ばかりはおぼえぬにや]
そのときほどは感じられないのだろうか。

[よしなごと]
つまらぬこと。

[うちも笑ひぬ]
笑ってしまう。

[さるべき日ばかり]
命日や墓参りの日など、お参りをすべき決まった日だけ。

[詣でつつ]
お参りしては。

[偲ぶ人あらんほどこそあらめ]
追慕する人がいるうちはともかく。

[そも]
そんな人も。

[あはれとや思ふ]
しみじみと懐かしんでくれる人のこと。

[いづれの人と名をだに知らず]
どこの誰だと名前さえ知らずに。

[心あらん人]
情趣を解する人。

[あはれと見るべきを]
しみじみと見るだろうが。

*徒然草「人の亡きあとばかり」でテストによく出る問題

○問題:「かばかり(*)」とは何を指すか。
答え:死者に対する悲しみに沈んでいる時。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は徒然草でも有名な、「人の亡きあとばかり」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

参考/おすすめ書籍


古典
Sponsored
シェアする
四季の美をフォローする
Sponsored

関連