大鏡「中納言争ひ」原文と現代語訳・解説・問題|平安時代の歴史物語

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大鏡(おおかがみ)は平安時代後期に書かれた歴史物語で、作者は不明となっています。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる大鏡の中から「中納言争ひ」について詳しく解説していきます。

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大鏡「中納言争ひ」の解説

大鏡でも有名な、「中納言争ひ」について解説していきます。

大鏡「中納言争ひ」の原文

九条殿の御九郎君、大臣の位にて七年、法住寺の大臣と聞こえさす。
男君、太郎は、左衛門督と聞こえさせし、悪心起こして失せ給ひにしありさまは、いとあさましかりしことぞかし。

人に越えられ、からい目見ることは、さのみこそおはしあるざわなるを、さるべきにこそはありけめ。
同じ宰相におはすれど、弟殿には人柄・世おぼえの劣り給へればにや、中納言あくきはに、我もならむなどおぼして、わざと対面し給ひて、

「このたびの中納言、望み申し給ふな。ここに申し侍るべきなり。」

と聞こえ給ひければ、

「いかでか殿の御先にはまかりなり侍らむ。ましてかく仰せられむには、あるべきことならず。」

申し給ひければ、御心ゆきて、しかおぼして、いみじう申し給ふに、及ばぬほどにやおはしけむ、入道殿、この弟殿に、

「そこは申されぬか。」

とのたまはせければ、

「左衛門督の申さるれば、いかがは。」

と、しぶしぶげに申し給ひけるに、

「かの左衛門督は、えなられじ。また、そこに避られば、こと人こそはなるべかなれ。」

とのたまはせければ、

「かの左衛門督まかりなるまじくは、よしなし。なし給ぶべきなり。」

と申し給へば、

「またかくあらむには、こと人はいかでか。」

とて、なり給ひにしを、

「いかで、我に向かひて、あるまじきよしをはかりけるぞ。」

とおぼす(*)に、いとど悪心を起こして、除目の朝より、手を強く握りて、

「斉信、道長に、我はばまれぬるぞ。」

と言ひ入りて、ものもつゆ参らで、うつぶしうつぶし給へるほどに、病づきて、七日といふに失せ給ひにしは。
握り給ひたりける指は、あまり強くて、上にこそ通りて出でて侍りけれ。

大鏡「中納言争ひ」の現代語訳

九条殿(藤原師輔)の御九郎君(藤原為光)は、大臣の位に七年(いらっしゃって)、法住寺の大臣と申し上げる。
ご子息で、長男(藤原誠信)は、左衛門督と申し上げた、(その人が)人を恨み怒る気持ちを起こしてお亡くなりになった様子は、たいそう驚きあきれたことだよ。

人に(官位を)越えられ、つらい目を見ることは、誰しもよくおありになる事であるのに、そうなるべき(宿命)であったのだろう。
同じ宰相でいらっしゃるけれど、(誠信殿は)弟殿(の斉信)には人柄や世間の評判が劣っていらっしゃったからだろうか、中納言に欠員ができたときに、自分もなろうなどとお思いになって、わざわざ(斉信殿に)対面しなさって、

「今回の中納言は、昇進を希望する申請をなさるな。私(=誠信)に(おいても、昇進を)申し上げますつもりである」

と申し上げなさったので、

「どうして殿(誠信)よりお先には(中納言に)なり申し上げましょうか。(いや、なりません。)まして、この様におっしゃるからには、(申請をする事は)あるべきことではない。」

と申し上げなさったので、(誠信殿は)ご満足がいって、そのように(=中納言になろうと)お思いになって、たいそう(中納言への昇進希望を)申し上げなさったが、中納言には及ばない器量でいらっしゃったのだろうか、入道殿(藤原道長)が、この弟殿(斉信)に、

「あなたは(中納言への昇進希望を)申し上げなさらないのか。」

とおっしゃったので、

「左衛門督(誠信)が(昇進希望の申請を)申し上げなさるので、どうして(私が申し上げましょうか)。」

と、不服そうに申し上げなさった所、

「あの左衛門督は、おなりになる事はできないだろう。また、あなた(斉信)が辞退なさったら、他の人がなるに違いないようだ。」

と(入道殿が)おっしゃったので、

「あの左衛門督が(中納言に)なり申す事ができそうにないなら、(私が遠慮しても)意味がない。私を中納言になさってください。」

と(斉信殿が)申し上げなさると、

(入道殿は)「またこのように(あなたの希望が)あるようなら、他の人はどうして(なるだろうか、いや、ならない)。」

ということで、(斉信殿が中納言に)おなりになったので、

(誠信殿は)「どうして、私に向かって、(中納言昇進を申請する事は)あるはずがないということで(私を)騙したのだ。」

とお思いになると、ますます恨み怒る気持ちを起こして、除目の(行われた)朝から、手を強く握って、

「斉信と、道長に、私ははばまれたぞ。」

とひたすら言って、食事も全く召し上がらないで、うつ伏しうつ伏ししなさっているうちに、病気になって、除目から七日目という日にお亡くなりになってしまった事だよ。
握りなさっていた指は、あまりに強くて、(手の甲の)上にまで通り抜けて出ていました。

大鏡「中納言争ひ」の単語・語句解説

[聞こえさす]
申し上げる。

[あさましかりしこと]
驚きあきれたこと。

[いかがは]
どうして。

*大鏡「中納言争ひ」でテストによく出る問題

○問題:「おぼす(*)」の主語は誰か。
答え:兄の誠信。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は大鏡でも有名な、「中納言争ひ」についてご紹介しました。

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