大鏡「佐理の大弐」原文と現代語訳・解説・問題|歴史物語

オキザリス
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大鏡(おおかがみ)は平安時代後期に書かれた、作者不明の歴史物語です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる大鏡の中から「佐理の大弐」について詳しく解説していきます。
(読み方は”すけまさのだいに”)

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大鏡「佐理の大弐」の解説

大鏡でも有名な、「佐理の大弐」について解説していきます。

大鏡「佐理の大弐」の原文

敦敏の少将の子なり、佐理の大弐、世の手書きの上手。
任果てて上られけるに、伊予の国の前なる泊まりにて、日いみじう荒れ、海の面あしくて、風恐ろしく吹きなどするを、少し直りて出でむとし給へば、また同じやうになりぬ。

かくのみしつつ日ごろ過ぐれば、いとあやしくおぼして、物問ひ給へば、

「神の御祟り。」

とのみ言ふに、さるべきこともなし。
いかなることにかと、恐れ給ひける夢に見え給ひけるやう、いみじうけたかきさましたる男のおはして、

「この日の荒れて、日頃ここに経給ふは、おのれがし侍ることなり。よろづの社に額のかかりたるに、おのれがもとにしもなきがあしければ、かけむと思ふに、なべての手して書かせむがわろく侍れば、我に書かせ奉らむと思ふにより、この折ならではいつかはとて、とどめ奉りたるなり。」

とのたまふに、

「たれとか申す。」

と問ひ申し給へば、

「この浦の三島に侍る翁なり。」

とのたまふに、夢のうちにもいみじうかしこまり申すとおぼすに、おどろき給ひて、またさらにも言はず。
さて、伊与へ渡り給ふに、多くの日荒れつる日ともなく、うらうらとなりて、そなたざまに追ひ風吹きて、飛ぶがごとくまうで着き給ひぬ。

湯たびたび浴み、いみじう潔斎して、清まはりて、昼の装束して、やがて神の御前にて書き給ふ。
神司ども召し出だして打たせなど、よく法のごとくして帰り給ふに、つゆ怖るることなくて、末々の船に至るまで、平らかに上り給ひにき。

わがすることを人間にほめ崇むるだに興あることにてこそあれ、まして神の御心にさまで欲しく思しけむこそ、いかに御心おごりし給ひけむ。
また、おほよそこれにぞ、いとど日本第一の御手のおぼえ(*)は取り給へりし。

六波羅蜜寺の額も、この大弐の書き給へるなり。
されば、かの三島の社の額と、この寺のとは同じ御手に侍り。

大鏡「佐理の大弐」の現代語訳

敦敏の少将の子ですよ、佐理の大弐といって、世間で評判の能筆家は。
(大宰大弐の)任期が終わって(筑紫から都に)上られたとき、伊予の国の手前にある船着場で、天気がひどく荒れ、海上の様子も悪くて、風が恐ろしく吹きなどしたが、少し(天候が)回復して(船着場から海に)出ようとなさると、また同じ様に(悪天候に)なった。

このようにばかり繰り返して数日が過ぎるので、たいそう不思議にお思いになって、占ってご覧になると、

「神の御祟りである。」

とだけ言うが、その様な(神の祟りを受ける)はずのこともない。
どのようなわけだろうかと、恐れなさっ(て寝)た夢に見えなさった事には、たいそう気高い様子をしている在俗の男性がいらっしゃって、

「この天気が荒れて、数日間ここに過ごしていらっしゃるのは、自分がしていることです。(その訳は、)全ての神社に額が掛かっているのに、自分の所に限ってないのが不都合なので、掛けようと思うけれど、並一通りの筆跡で書かせる様な事はよろしくございませんので、あなたに書かせ申し上げようと思うことにより、この機会以外にはいつ(書かせ申し上げよう)かと思って、引きとめ申し上げているのである。」

とおっしゃるので、

「(あなたは)誰と申し上げるのか。」

お尋ね申し上げなさると、

「この海岸の三島におります翁である。」

とおっしゃるので、夢の中でもたいそう恐縮してお引き受け申し上げるとお思いになる時に、目を覚ましなさって、(恐縮してお引き受けしたことは)また改めて言うまでもない。
そして、伊予へお渡りになると、何日も天気が荒れた(後の)天気とも思われず、うららかに晴れて、そちらの(=伊予の)方に追い風が吹いて、飛ぶように参り着きなさった。

湯を何度も浴び、たいそう飲食・行動の禁忌を守り、心身を清めて、正装の束帯を着用して、ただちに神の御前でお書きになる。
神主など、神社に仕える神官を呼び出しなさって額を社殿に掲げさせなど、きちんときまりの通りにしてお帰りになると、(今度は)少しも恐れることはなくて、従者たちの船に至るまで、無事に都に上りなさった。

自分のすることを世間でほめ尊ぶことさえ愉快なことであるのに、まして神の御心にそれほどまでほしいとお思いになったようなことは、どれほど得意におなりになっただろうか。
また、ほぼこの一件によって、ますます日本第一の能書家という世間の評判をお取りになった。

六波羅蜜寺の額も、この大弐がお書きになったものだ。
だから、あの三島の神社の額と、この寺の額とは同じご筆跡でございます。

大鏡「佐理の大弐」の単語・語句解説

[かくのみしつつ]
このようにばかりくり返して。

[さるべきこともなし]
そのようなはずのこともない。

[いかなることにか]
どのようなわけだろうか。

[見え給ひけるやう]
見えなさったことには。

[なべての手]
並一通りの筆跡。

[かしこまり申す]
恐縮してお引き受け申し上げる。

[そなたざま]
そちらの方。

[よく法のごとくして]
きちんときまりの通りにして。

[つゆ恐るることなくて]
少しも恐る事はなくて。

[興あることにてこそあれ]
愉快なことであるのに。

*大鏡「佐理の大弐」でテストによく出る問題

○問題:「おぼえ(*)」の意味は何か。
答え:世間の評判。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は大鏡でも有名な、「佐理の大弐」についてご紹介しました。

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