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源氏物語「明石の姫君の入内」原文と現代語訳・解説・問題|紫式部

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源氏物語は平安時代に書かれた長編小説で、作者は紫式部です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる源氏物語の中から「明石の姫君の入内」について詳しく解説していきます。

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源氏物語「明石の姫君の入内」の解説

源氏物語でも有名な、「明石の姫君の入内」について解説していきます。

源氏物語「明石の姫君の入内」の原文

御参りの儀式、人の目おどろくばかりのことはせじとおぼしつつめど、おのづから世の常のさまにぞあらぬや。

限りもなくかしづき据ゑ奉り給ひて、上は、まことにあはれにうつくしと思ひ聞こえ給ふにつけても、人に譲るまじう、まことにかかることもあらましかばとおぼす。

大臣も宰相の君も、ただこのこと一つをなむ、飽かぬことかなとおぼしける。
三日過ごしてぞ、上はまかでさせ給ふ。
たちはかりて参り給ふ夜、御対面あり。

「たくおとなび給ふけぢめになむ、年月のほども知られ侍れば、うとうとしき隔ては残るまじくや。」

となつかしうのたまひて、物語などし給ふ。
これもうちとけぬる初めなめり。
ものなどうち言ひたるけはひなど、むべこそはと、めざましう見給ふ。

また、いと気高う、盛りなる御けしきを、かたみにめでたしと見て、そこらの御中にも、すぐれたる御心ざしにて、並びなきさまに定まり給ひけるも、いとことわりと思ひ知らるるに、かうまで立ち並び聞こゆる契り、おろかなりやはと思ふものから、出で給ふ儀式のいとことによそほしく、御輦車など許され給ひて、女御の御ありさまにことならぬを、思ひ比ぶるに、さすがなる身のほどなり。

いとうつくしげに、雛のやうなる御ありさまを、夢の心地して見奉るにも、涙のみとどまらぬは、一つものとぞ見えざりける。
年ごろよろづに嘆き沈み、さまざま憂き身と思ひ屈しつる命も延べまほしう、はればれしきにつけて、まことに住吉の神もおろかならず思ひ知らる。

思ふさまにかしづき聞こえて、心及ばぬこと、はた、をさをさなき人のらうらうじさなれば、おほかたの寄せ・おぼえよりはじめ、なべてならぬ御ありさま・かたちなるに、宮も、若き御心地に、いと心ことに思ひ聞こえ給へり。

いどみ給へる御方々の人などは、この母君のかくて候ひ給ふを、瑕に言ひなしなどすれど、それに消たるべくもあらず。
いまめしかう、並びなきことをばさらにも言はず、心にくくよしある御けはひを、はかなきことにつけても、あらまほうしうもてなし聞こえ給へれば、殿上人なども、めづらしきいどみどころにて、とりどりに候ふ人々も、心をかけたる女房の用意・ありさまさへ、いみじくととのへなし給へり。

上も、さるべき折ふしには参り給ふ。
御仲らひ(*)あらまほしううちとけゆくに、さりとてさし過ぎもの慣れず、侮らはしかるべきもてなし、はた、つゆなく、あやしくあらまほしき人のありさま・心ばへなり。

大臣も、長からずのみおぼさるる御世のこなたにとおぼしつる御参り、かひあるさまに見奉りなし給ひて、心からなれど、世に浮きたるやうにて見苦しかりつる宰相の君も、思ひなくめやすきさまに静まり給ひぬれば、御心落ちゐ果て給ひて、今は本意も遂げなむとおぼしなる。

対の上の御ありさまの見捨てがたきにも、中宮おはしませば、おろかならぬお心寄せなり。
この御方にも、世に知られたる親ざまには、まづ思ひ聞こえ給ふべければ、さりともとおぼし譲りけり。

夏の御方の、時々にはなやぎ給ふまじきも、宰相のものし給へばと、みなとりどりにうしろめたからずおぼしなりゆく。
明けむ年、四十になり給ふ。
御賀のことを、おほやけよりはじめ奉りて、大きなる世のいそぎなり。

源氏物語「明石の姫君の入内」の現代語訳

明石の姫君の入内儀式は、人目を驚かすほどのことはしたくないと遠慮するが、自然と世間並みとはいかないのである。

(紫の上が明石の姫君を)この上もなく大切にお世話申し上げなさって、紫の上は、(明石の姫君を)心からいとしくかわいいとお思い申し上げなさるにつけても、誰にも渡したくなく、本当にこのように実の娘が入内することがあったらいいだろうにとお思いになる。

大臣(源氏)も宰相の君(夕霧)もただこの一つだけを、不満なことだなぁとお思いになった。
(結婚の儀式を)三日間過ごして、紫の上は宮中をご退出なさる。
(紫の上に)入れ替わって(明石の君が)参内なさる夜、ご対面がある。

「このように姫が大人らしくおなりになった節目を迎えるにつけ、(姫君をお育てした)年月のほども知られますから、よそよそしい隔ては残らないでしょうね。」

とおっしゃって、お話などなさる。
これも親しくなった最初の出会いであるようだ。
(明石の君が)ものを言ったときの様子などを(紫の上は見て、)(源氏の君がこの君を重んじるのも)当然だわと、目をみはるばかりにすばらしいと御覧になる。

また、(明石の君のほうでも、紫の上を)たいそう気品があり、女盛りのご様子を、こちらはこちらでご立派なことだとみて、大勢の女性たちの中でも誰にも勝った御龍愛を受けて、並ぶ者のない地位におさまりなさったのも、まことにもっともなことと納得する気持ちになるが、このように立ち並ぶ私の運命もいい加減なものではないと思うものの(紫の上が宮中から)ご退出なさる儀式がまことに美しく、御輦車など許されなさって、女御の(ご退出の)ご様子と変わるところがないので、(紫の上と自分を)思い比べると、やはり劣っている自分の身の上である。

とてもかわいらしく、ひな人形のような姫君のご様子を、(明石の君は、)夢を見るような思いで見申しあげるにつけても、涙がとめどなく流れるばかりであるのは、(悲しいときに流す涙と)同じ涙だとは思えないのだった。

長い年月、何かにつけ悲しみに沈んで、あれこれつらい身の上だと悲観して(死んでしまいたいとして)いた命も延びてほしいと思うほど、晴れやかな気持ちになるにつけても、本当に住吉の神の霊験もあらたかだと自然と思い知られる。

思う存分に大切にお世話申し上げ、行き届かないことは少しもない、明石の君の利発さなので、周囲の人々の姫君に対する人気や評判をはじめとして、並々ならぬ(姫君の)ご容貌であるから、東宮もまだお若いこととて、たいそう格別に心を寄せていらっしゃる。

(この姫君と)競い合っていらっしゃる方々のお付きの女房などは、この母君がこのように姫君に付き添っていらっしゃることを、欠点として言いたてなどするけれども、そんなことに(姫君の評判を)消されるはずもない。

現代風で比類なきことは言うまでもなく、奥ゆかしく優雅さのある(姫君の)ご様子を、ささいなことにつけても、明石の君が姫君を申し分なくお世話しておあげなさるので、殿上人なども、めったにない風流の才を競う場として考えているので、その場に思い思いに伺候している女房たちも、(殿上人が)感心を抱いている女房の心がけや態度までも、(明石の君は)立派に仕込んでいらっしゃる。

紫の上も、何かの折ふしには参内なさる。
(紫の上と明石の君との)間柄も申し分なくうちとけてゆくけれども、だからといって出過ぎたり慣れ慣れしい態度をとったりせず、軽く見られるはずの態度もまるでなく、不思議なほど理想的な人柄であり心遣いである。

大臣(源氏)も、いつまでも長く生きているわけではないとお思いにならずにはいられないこの世で、ご存命のうちにとお思いだった(姫君の)ご入内も立派に見届け申し上げなさって、自ら求めたこととはいえ、身の固まらぬありさまで世間体の悪かった宰相の君(夕霧)も、心配なく、見苦しくない様子に(結婚生活が)落ち着きなさったので、(源氏も)すっかり安心なさって、今こそは念願の出家を遂げたいものと思いになる。

対の上(紫の上)のお身の上が見捨てがたく思うにつけても、中宮(秋好中宮)がいらっしゃるのだから、これが並々ならぬお見方である。
このお方(明石の姫君)におかれても、世に知られている表向きの親には、(紫の上を)まず第一に大切にお思い申し上げなさるのであろうから、自分が出家したとしても(心配はないだろうと)お任せになった。

夏の御方(花散里)は、何かにつけてはなやかなことになることはないだろうけれども、これも宰相(夕霧)がおいでだから(安心だ)と、どの女性たちもそれぞれに心配ないというお気持ちになっていらっしゃる。
開ける年は(源氏は)四十歳におなりになる。
その祝賀の宴のことを、帝をはじめとして申し上げて、世をあげてたいへんな準備をする。

源氏物語「明石の姫君の入内」の単語・語句解説

[まことにかかることもあらましかば]
本当にこのように実の娘が入内することがあったらいいだろうに。

[このこと一つ]
「このこと」とは、紫の上に子供がいないことをさす。

[まかでさせ給ふ]
ご退出なさる。

[うとうとしき隔て]
よそよそしい隔て。

[これもうちとけぬる初めなめり]
これも親しくなった最初の出会いであるようだ。

[ものなどうち言ひたるけはひ]
ものを言ったときの様子。

[めざましう]
目をみはるばかりにすばらしい。

[心及ばぬこと、はた、をさをさなき人のうらうらじさなれば]
行き届かないことは少しもない、明石の君の利発さなので。

[宮も、若き御心地に、いと心ことに]
東宮も、まだお若いこととて、たいそう格別に。

[いまめかしう、ならびなきことをばさらにも言はず]
現代風で比類なきことは言うまでもなく。

[ととのへなし給へり]
仕込んでいらっしゃる。

[侮らはしかるべきもてなし]
軽く見られるはずの態度。

[思ひなくめやすきさまに]
心配なく、見苦しくない様子に。

[みなとりどりにうしろめたからず]
どの女性たちもそれぞれに心配ない。

[おほやけ]
帝。

*「源氏物語「明石の姫君の入内」でテストによく出る問題

○問題:誰と誰の「御仲らひ(*)」か。
答え:紫の上と明石の君

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は源氏物語でも有名な、「明石の姫君の入内」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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