源氏物語「小野の里訪問」原文と現代語訳・解説・問題|紫式部

彼岸花
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源氏物語(げんじものがたり)といえば寛弘五年(1008年)に書かれた世界最古の長編小説として有名で、作者は紫式部(むらさきしきぶ)です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる源氏物語の中から「小野の里訪問」について詳しく解説していきます。

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源氏物語「小野の里訪問」の解説

源氏物語でも有名な、「小野の里訪問」について解説していきます。

源氏物語「小野の里訪問」の原文

小野には、いと深く茂りたる青葉の山に向かひて、紛るることなく、鑓水の蛍ばかりを昔思ゆる慰めにてながめ居給へるに、例の、遥かに見やらるる谷の軒端より、前駆心ことに追ひて、いと多うともしたる灯ののどかならぬ光を見るとて、尼君たちも端に出で居たり。

「誰がおはするにかあらむ。御前などいと多くこそ見ゆれ。」

「昼、あなたにひきぼし奉れたりつる返りごとに、大将殿おはしまして、御饗のことにはかにするを、いとよき折とこそありつれ。」

「大将殿とは、この女二の宮の御夫にやおはしつらむ。」

など言ふも、いとこの世遠く、田舎びにたりや。
まことにさにやあらむ、時々かかる山路分けおはせし時、いとしるかりし随身の声も、うちつけにまじりて聞こゆ。

月日の過ぎゆくままに、昔のことのかく思ひ忘れぬも、今は何にすべきことぞと心憂ければ、阿弥陀仏に思ひ紛らはして、いとどものも言はで居たり。
横川に通ふ人のみなむ、このわたりには近きたよりなりける。

かの殿は、この子をやがてやらむと思しけれど、人目多くて便なければ、殿に帰り給ひて、またの日、ことさらにぞ出だし立て給ふ。
睦ましく思す人の、ことごとしからぬ二人、三人送りにて、昔も常に遣はしし随身添へ給へり。

人聞かぬ間に呼び寄せ給ひて、

「あこが亡せにし妹の顔は覚ゆや。今は世に亡き人と思ひ果てにしを、いとたしかにこそものし給ふなれ。疎き人には聞かせじと思ふを、行きて尋ねよ。母に、いまだしきに言ふな。なかなか驚き騒がむほどに知るまじき人も知りなむ。その親の御思ひのいとほしさにこそ、かくも尋ぬれ。」

と、まだきにいと口かため給ふを、幼き心地にも、はらからは多けれど、この君(*)の容貌をば似るものなしと思ひしみたりしに、亡せ給ひにけりと聞きて、いとかなしと思ひわたるに、かくのたまへば、うれしきにも涙の落つるを、恥づかしと思ひて、

「を、を。」

と荒らかに聞こえ居たり。

源氏物語「小野の里訪問」の現代語訳

小野(の里)では、(浮舟が)とても深く茂っている青葉の山に向かって、気が紛れることもなく、遣水の蛍だけを往時のしのばれる慰めとしてもの思いにふけってじっと座っていらっしゃると、いつもの、遥か遠くに谷を望み見ることができる軒下から、先払いをする人が格別に先を払って、たいそう多くともしている松明の灯(の列)の穏やかでない光を見るといって、尼君たちも縁側に出て座っている。

「どなたがいらっしゃるのでしょうか。先払いをする人などがとても多く見えます。」

「昼間、あちらさま(=横川の僧都の所)にひきぼしを差し上げた(際の)返事に、大将殿がいらっしゃって、おもてなしを急にするので、とてもよい折ですとありました。」

「大将殿とは、この(今上帝の)女二宮の御夫君でいらっしゃったでしょうか。」

などと言うのも、とても浮世離れして、田舎じみてしまっていることだなあ。
本当にそうであろうか、時々(大将殿が)このような山道を分けて(宇治に)おいでになった時(に聞いた)、とてもはっきりした随身の声も、突然(先払いをする人の声に)交じって聞こえる。

月日が過ぎてゆくにつれて、昔のことをこのように忘れないのも、今となってはどうなるだろうか(、いや、どうにもならない)と情けないので、阿弥陀仏を心に念ずる事に気を紛らわせて、(いつもより)さらに一層ものも言わずに座っている。
横川に行き来する人だけが、この辺りでは親しい寄る辺であるのだった。

あの殿は、この子(=小君)をそのまま遣わそうとお思いになったが、人目が多くて都合が悪いので、邸にお帰りになって、翌日、改めて出立させなさる。
親しくお思いになっている人(=家臣)で、(身分が)重々しくない二人、三人を見送りとして、昔もいつも遣わした随身をお加えになった。

他の人が聞かない間に(薫は小君を)お呼び寄せになって、

「おまえの亡くなった姉の顔は覚えているか。今はこの世にいない人とすっかり諦めていたが、実に確かに生きていらっしゃるということだ。親しくない人には聞かせまいと思うので、(おまえが)行って調べよ。母には、(真相が)はっきりしないうちに言うな。(言うと)かえって驚いて騒ぐようなうちに(真相を)知ってはならない人(=匂宮)もきっと知ってしまうだろう。その(母)親のお気持ちが気の毒である事の為にこそ、こうまでも探すのだ。」

と、早くもとても(厳重に)口止めなさるので、(小君は)子ども心にも、兄弟姉妹は多いけれど、この君(=浮舟)の顔だちを(他に)似る者がいない(ほど美しい)と心に深く思い込んでいたのに、お亡くなりになってしまったと聞いて、とても悲しいと思い続けていたけれども、このようにおっしゃるので、嬉しくて涙が落ちるのを、きまりが悪いと思って、

「はい、はい。」

と荒々しく申しあげて座っている。

源氏物語「小野の里訪問」の単語・語句解説

[ながめ居給へる]
もの思いにふけってじっと座っていらっしゃる。

[心ことに追ひて]
格別に先に払って。

[いとしるかりし]
とてもはっきりした。

[うちつけにまじりて聞こゆ]
突然交じって聞こえる。

[便なければ]
都合が悪いので。

[ことごとしからぬ]
(身分が)重々しくない。

[思ひ果てにしを]
すっかり諦めていたが。

[疎き人]
親しくない人。

[まだきに]
早くも。

[口かため給ふを]
口止めなさるので。

*源氏物語「小野の里訪問」でテストによく出る問題

○問題:「この君(*)」とは誰のことか。
答え:浮舟。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は源氏物語でも有名な、「小野の里訪問」についてご紹介しました。

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