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源氏物語「夢の浮橋」原文と現代語訳・解説・問題|高校古典

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寛弘五年(1008年)に書かれた源氏物語(げんじものがたり)は世界最古の長編小説として知られ、作者は紫式部(むらさきしきぶ)です。
今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる源氏物語の中から「夢の浮橋」について詳しく解説していきます。

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源氏物語「夢の浮橋」の解説

源氏物語でも有名な、「夢の浮橋」について解説していきます。

源氏物語「夢の浮橋」の原文

あるじぞこの君に、物語すこし聞こえて、

「物の怪にやおはすらむ、例のさまに見え給ふ折なく、悩みわたり給ひて、御かたちも異になり給へるを、尋ね聞こえ給ふ人あらばいとわづらはしかるべきことと、見奉り嘆き侍りしもしるく、かくいとあはれに心苦しき御事どもの侍りけるを、今なむいとかたじけなく思ひ侍る。日ごろも、うちはへ悩ませ給ふめるを、いとどかかることどもに思し乱るるにや、常よりもものおぼえさせ給はぬさまにてなむ。」

と聞こゆ。
所につけてをかしき饗などしたれど、幼き心地は、そこはかとなくあわてたる心地して、

「わざと奉れさせ給へるしるしに、何事をかは聞こえさせむとすらむ。ただ一言をのたまはせよかし。」

など言へば、

「げに。」

など言ひて、かくなむと移し語れども、ものものたまはねば、かひなくて、

「ただ、かく、おぼつかなき御ありさまを聞こえさせ給ふべきなめり。雲の遥かに隔たらぬほどにも侍るめるを、山風吹くとも、またも、必ず立ち寄らせ給ひなむかし。」

と言へば、すずろに居暮らさむもあやしかるべければ、帰りなむとす。
人知れずゆかしき御ありさまをもえ見ずなりぬるを、おぼつかなく口惜しくて、心ゆかずながら参りぬ(*)。

いつしかと待ちおはするに、かくたどたどしくて帰り来たれば、すさまじく、なかなかなりと思すことさまざまにて、人の隠し据ゑたるにやあらむと、わが御心の、思ひ寄らぬ隅なく落とし置き給へりしならひにとぞ、本に侍める。

源氏物語「夢の浮橋」の現代語訳

この家の主人(=妹尼)はこの君(=小君)に話を少し申しあげて、

「物の怪のせいでいらっしゃるのでしょうか、(浮舟は)普通の様子にお見えになる時がなく、患い続けていらっしゃって、(出家して)お姿も(以前とは)違っていらっしゃるので、(浮舟を)お探し申しあげなさる人がありましたならとても面倒なことになるでしょうと、(私どもも)拝見し悲しんでおりましたとおり、このようにとてもいたわしくお気の毒なこと(薫と浮舟の関係のこと)がございました事を、今は本当に畏れ多いことと思っております。普段も、引き続き思っていらっしゃるようですが、ますますこのようなこと(=薫から手紙が来たこと)などでお気持ちを乱されるのでしょうか、いつもより分別がおつきにならないご様子で(いらっしゃる)。」

と申しあげる。
この場所(=小野という山里)にふさわしい風情があるごちそうなどをしたが、(小君の)子ども心には、なんとなく落ち着かない気持ちがして、

「(薫が私を)わざわざ参上させなさった証拠に、何を申しあげさせようとするのでしょうか。ほんの一言でもおっしゃってくださいませよ。」

などと言うと、

「本当にね。」

などと(妹尼が)言って、このようですと(浮舟に)取り次いで話すけれど、(浮舟は)ものもおっしゃらないので、(妹尼は)どうしようもなくて、

「ただ、このように、はっきりしない(浮舟の)ご様子を申しあげなさるのが良いようです。(この小野は京から)雲のように遥か遠くに隔たってもいない道のりのようでございますので、山風が吹いても、また、必ずお立ち寄りになってくださいませ。」

と言うので、あてもなく日が暮れるまで長居をするのも妙だろうから、(小君は)帰ろうとする。
ひそかに会いたい(浮舟の)ご様子を見る事ができなくなった事を、気がかりで残念で、満足しないまま帰参した。

(薫は)早くと(小君の帰りを)待っていらっしゃった所に、(小君が)このようにはっきりしない(様子)で帰ってきたので、おもしろくなく、かえって遣わさない方がよかったとお思いになる事があれこれあって、(誰か)人が(浮舟を)人に気づかれないように隠して住まわせているのだろうかと、(薫は)自分の心の、あらゆる場合を想像して(かつて浮舟を宇治に)捨て置いていらっしゃった経験から(そうお思いになった)と、もとの本にございますようです。

源氏物語「夢の浮橋」の単語・語句解説

[悩みわたり給ひて]
患い続けていらっしゃって。

[尋ね聞こえ給ふ人]
お探し申しあげなさる人。

[ものおぼえさせ給はぬさま]
分別がおつきにならないご様子。

[所につけて]
その場所にふさわしい。

[心ゆかずながら]
満足しないまま。

[たどたどしくて]
はっきりしないで。

*源氏物語「夢の浮橋」でテストによく出る問題

○問題:誰が誰のもとに「参りぬ(*)」なのか。
答え:小君が薫のもとへ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は源氏物語でも有名な、「夢の浮橋」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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