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源氏物語「藤壺の入内」原文と現代語訳・解説・問題|高校古典

ホトトギス
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源氏物語は世界最古の長編小説で、紫式部によって1008年(寛弘五年)に書かれました。

今回はそんな高校古典の教科書にも出てくる源氏物語(げんじものがたり)の中から「藤壺の入内(ふじつぼのじゅだい)」について詳しく解説していきます。

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源氏物語「藤壺の入内」の解説

源氏物語でも有名な、「藤壺の入内」について解説していきます。

源氏物語「藤壺の入内」の原文

源氏の君は、御あたり去り給はぬを、ましてしげく渡らせ給ふ御方は、え恥ぢあへ給はず。

いづれの御方も、我人に劣らむと思いたるやはある、とりどりにいとめでたけれど、うち大人び給へるに、いと若ううつくしげにて、せちに隠れ給へど、おのづから漏り見奉る(*)。

母御息所も、影だにおぼえ給はぬを、

「いとよう似給へり。」

と、典侍の聞こえけるを、若き御心地にいとあはれと思ひ聞こえ給ひて、常に参らまほしく、

「なづさひ見奉らばや。」

とおぼえ給ふ。
上も、限りなき御思ひどちにて、

「な疎み給ひそ。あやしくよそへ聞こえつべき心地なむする。
なめしと思さで、らうたくし給へ。
つらつき、まみなどは、いとよう似たりしゆゑ、かよひて見え給ふも、似げなからずなむ。」

など聞こえつけ給へれば、幼心地にも、はかなき花紅葉につけても心ざしを見え奉る。

こよなう心寄せ聞こえ給へれば、弘徽殿女御、また、この宮とも御仲そばそばしきゆゑ、うち添へて、もとよりの憎さも立ち出でて、「ものし。」と思したり。

世にたぐひなしと見奉り給ひ、名高うおはする宮の御容貌にも、なほにほはしさはたとへむ方なく、うつくしげなるを、世の人、「光る君」と聞こゆ。

藤壺ならび給ひて、御覚えもとりどりなれば、

「かかやく日の宮」

と聞こゆ。

源氏物語「藤壺の入内」の現代語訳

源氏の君は、父帝のおそばをお離れにならないので、(帝が時折お違いになる方もそうだが)ましてしきりにお通いになるお方(=藤壺)は、(光源氏に対して)最後まで恥ずかしがって(隠れて)はいらっしゃれない。

どの(女御、更衣の)お方も、自分より人が劣っているだろうとお思いになっている方があろうか(、いや、ありはしない)、それぞれにたいそう美しいけれど、少し年長でいらっしゃるのに、(この藤壺は)たいそう若くかわいらしくて、しきりに隠れていらっしゃるけれど、(光源氏は)自然と物の隙間からお見かけ申しあげる。

(光源氏は)母の御息所のことも、面影さえ覚えていらっしゃらないけれど、

「(藤壺は母御息所に)たいそうよく似ていらっしゃる。」

と、典侍が申しあげたので、幼心にたいそう懐かしいとお思い申しあげなさって、いつもおそばに参りたく、

「慣れ親しんで(お姿を)見申しあげたい。」

とお思いになられる。
帝も、無限に愛情を注ぐ者どうしなので、(藤壺に)

「(この君に)よそよそしくなさらないでください。不思議に(あなたを)光源氏の母親に見立て申しあげてもよいような気持ちがします。
無礼だとお思いにならないで、可愛がってください。
顔つき、目もとなどが、とてもよく似ていたので、(あなたが光源氏の母であるように)似通ってお見えになるのも、不似合いではないのです。」

などとお頼み申しあげなさったので、(光源氏は)幼心にも、(藤壺に)ちょっとした花や紅葉につけても(藤壺に対する)好意をお見せ申しあげる。

この上なく心をお寄せ申しあげなさっているので、弘徽殿女御は、また、この(藤壺の)宮ともお仲がしっくりしないので、(藤壺への嫉妬に)加えて、以前からの(更衣の子である光源氏への)憎しみもよみがえり、「不愉快だ。」とお思いになっている。

世に並ぶものがないと(女御が)見申しあげなさり、評判が高くいらっしゃる第一皇子のお顔立ちに(比べて)も、やはり(光源氏の)つややかな美しさはたとえようもなく、かわいらしいので、世間の人は、「光る君」と申しあげる。

藤壺も(光源氏と)お並びになって、帝の寵愛も二人それぞれに厚いので、「輝く日の宮」と申しあげる。

源氏物語「藤壺の入内」の単語・語句解説

[しげく渡らせ給ふ]
しきりにお通いなさる。

[え恥ぢあへ給はず]
最後まで恥ずかしがってはいらっしゃれない。

[思いたるやはある]
お思いになっている方があろうか、いや、ありはしない。

[いとめでたけれど]
たいそう美しいけれど。

[せちに]
しきりに、ひたすら

[典侍の聞こえけるを]
典侍が申しあげたので。

[思ひ聞こえ給ひて]
お思い申しあげなさって。

[なづさひ見奉らばや]
慣れ親しんで見申しあげたい。

[御思ひどち]
愛情を注ぐ者どうし。

[な疎み給ひそ]
よそよそしくしないでください。

[なめし]
ここでは”無礼だ”、”失礼だ”の意味。

[らうたくし給へ]
かわいがってください。

[つらつき]
顔つき。

[かよひて見え給ふ]
似通ってお見えになるのも。

[聞こえつけ給へれば]
お頼み申しあげなされたので。

[心ざし]
ここでは”好意”、”愛情”の意味。

[そばそばしきゆゑ]
しっくりしないので。

[ものし]
ここでは”不愉快だ”、”嫌だ”の意味。

[にほはしさ]
つつやかな美しさ。

*源氏物語「藤壺の入内」でテストによく出る問題

○問題:誰が誰を「漏り見奉る(*)」か。
答え:光源氏が藤壺を漏り見奉る。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は源氏物語(げんじものがたり)でも有名な、「藤壺の入内(ふじつぼのじゅだい)」についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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