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源氏物語「光源氏の誕生」の原文・現代語訳・解説|桐壺第一章 第一段

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源氏物語は紫式部による長編物語で、平安時代に書かれました。
世界最古の長編小説ともいわれています。

今回は高校古典の教科書にも出てくる源氏物語の中から桐壺の第一章第一段「光源氏の誕生(ひかるげんじのたんじょう)」について詳しく解説していきます。

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源氏物語「光源氏の誕生」の解説

源氏物語(げんじものがたり)でも有名な、光源氏の誕生(ひかるげんじのたんじょう)について解説していきます。

源氏物語とは

源氏物語は平安時代に紫式部が書いた長編小説で、長保三年(1001年)頃に書き始められました。
正式な成立年は不明ですが、時代を超えて愛され続け、あの文豪・川端康成も「古今を通じて、日本の最高の小説」と評しています。

正・続編の五十四帖からなり、政変はさらに二つに分けられ三部構成となっています。
第一部は主人公である光源氏の誕生から、栄華を極めていくまでの約四十年が描かれます。
第二部はその後光源氏が死ぬまでの晩年を描き、第三部では光源氏死後の子孫たちの模様が描かれています。

「光源氏の誕生」の概要

「光源氏の誕生」は源氏物語の最初の章「桐壷」の冒頭部分です。
「光る君誕生」とも称されます。

[概要]
ある天皇の治世に、一人の更衣が帝の寵愛(ちょうあい)を受けていた。
他の女性たちの嫉妬もあって病気がちになるが、天皇の寵愛はどんどん深くなる。
若宮が誕生すると、第一皇子の母・弘徽殿女御(こきでんのにょうご)はこの若宮が皇太子になるのではないかと疑った。
頼る術のない更衣は一人辛い思いをする。
その更衣の部屋は桐壷である。

源氏物語「光源氏の誕生」の原文と現代語訳

源氏物語の第一章「桐壷」から「光源氏の誕生」の原文と現代語訳をご紹介します。

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源氏物語「光源氏の誕生」朗読動画

光源氏の誕生の原文

いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。

はじめより我はと思ひ上がり給へる御方方、めざましきもの(*1)に、おとしめそねみ給ふ。
同じほど、それより下臈の更衣たちは、まして安からず(*2)。
朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、もの心細げに 里がちなるを、いよいよ飽かずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえ憚らせ給はず、世の例(ためし)にもなりぬべき御もてなしなり。

上達部(かんだちめ)、上人(うへびと)などもあいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御覚えなり。
唐土(もろこし)にも、かかること(*3)の起こりにこそ、世も乱れ悪(あ)しかりけれと、やうやう、天(あめ)の下にもあぢきなう、人のもて悩みぐさになりて、楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに、いとはしたなきこと多かれど、かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて、交じらひ給ふ。

父の大納言は亡くなりて、母北の方なむ古の人の由あるにて、親うち具し、さしあたりて世の覚え華やかなる御方々にもいたう劣らず、何ごとの儀式をももてなし給ひけれど、取り立ててはかばかしき後ろ見しなければ、事ある時は、なほ拠り所なく心細げなり。

前の世にも御契りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男御子さへ生まれ給ひぬ。
いつしかと心もとながらせ給ひて、急ぎ参らせて御覧ずるに、めづらかなる児(ちご)の御容貌(かたち)なり。

一の皇子(みこ)は、右大臣の女御の御腹にて、寄せ重く、疑ひなきま(も)うけの君と、世にもてかしづき聞こゆれど、この御にほひには並び給ふべくもあらざりければ、おほかたのやむごとなき御思ひにて、この君をば、私物に思ほしかしづき給ふこと限りなし。

はじめよりおしなべての上宮仕へし給ふべき際にはあらざりき。
覚えいとやむごとなく、上衆めかしけれど、わりなくまつはさせ給ふあまりに、さるべき御遊びの折々、何事にもゆゑある事のふしぶしには、まづ参上らせ給ふ、ある時には大殿籠り過ぐしてやがて候はせ給ひなど、あながちに御前去らずもてなさせ給ひしほどに、おのづから軽き方にも見えしを、この皇子生まれ給ひてのちは、いと心異に思ほしおきてたれば、坊にも、ようせずは、この御子の居給ふべきなめりと、一の皇子の女御は思し疑へり。

人よりさきに参り給ひて、やむごとなき御思ひなべてならず、皇女(みこ)たちなどもおはしませば、この御方の御諌(いさ)めをのみぞなほわづらはしう、心苦しう思ひ聞こえさせ給ひける。

かしこき御蔭をば頼み聞こえながら、おとしめ疵(きず)を求め給ふ人は多く、わが身はか弱くものはかなきありさまにて、なかなかなるもの思ひをぞし給ふ。

御局(みつぼね)は桐壺なり。

光源氏の誕生の現代語訳

どの天皇のご治世であっただろうか、女御、更衣がたくさんお仕えしておられた中に、それほど高貴な身分ではない方で、とりわけ(帝の)ご寵愛を受けておられる方があった。

(入内の)初めから自分こそは(帝の寵愛を得よう)と自負しておられた(女御)の方々は、(この方を)目にあまる者として、さげすみ嫉妬なさる。
同じ身分(の更衣)、それより低い身分の更衣たちは、いっそう気が気でない。
朝晩の宮仕えにつけても、(他の)人々の心を動揺させるばかりで、恨みを受けることが積もり積もった結果であったのであろうか、たいそう病気がちになってゆき、なんとなく心細い様子で実家に下がりがちであるのを、(帝は)ますます限りなくいとしい者とお思いになって、他人の非難をも気にすることがおできにならず、世間の(悪い)先例にもなってしまいそうなご待遇である。

上達部、殿上人なども困ったことだと目を背け背けして、実に見ていられないほどの(更衣への)ご寵愛ぶりである。
中国でも、こういうことが原因で、世の中が乱れ悪い状態だったのだと、しだいに、世間でも苦々しく、人々の悩みの種となって、楊貴妃の例もきっと引き合いに出すに違いなくなってゆくので、まことにきまりが悪いことが多いけれど、おそれ多い(帝の)お心遣いの比類がないことを頼りにして、宮仕えしておられる。

(更衣の)父の大納言は亡くなっていて、母(である大納言の)北の方は、古風で、教養のある人で、両親そろっていて、現在のところ世間の評判も際立っている(女御や更衣などの)方々にもそれほど劣らないように、(宮中の)どんな儀式をも取り図らいなさったけれども、ことさら取りあげるようなしっかりした後見人がいないので、特別なことがある時は、やはり頼る所がなく心細そうな様子である。

(帝と更衣は)前世でもご因縁が深かったのであろうか、この世に比類なく清らかで美しい玉のような男の皇子までもお生まれになった。
(帝は)早く(会ってみたい)と待ち遠しくお思いになって、急いで参内させて(若宮を)ご覧になると、めったにないほどすばらしいご容貌である。

第一皇子は、右大臣の娘で女御となった人(=弘徽殿女御)のお産みになった方で、後ろ盾がしっかりしていて、疑いなく皇太子(になられる方である)と、世間でも大切にお仕え申しあげているけれど、この(若宮の)つややかなお美しさにはお並び申せそうもなかったので、(帝は第一皇子を)ひととおりの大切な方としてのご寵愛で、この若宮は、秘蔵の子とお思いになって大切になさることこの上なもない。

(母君の更衣は)もともと普通の帝の近くで日常の世話をなさるはずの(軽い)身分ではなかった。
世間の評判も実に並々でなく、高貴な人らしい様子であったけれど、(帝が)むやみにおそばに付き添わせていらっしゃるあまりに、しかるべき管弦の遊びの折々や、何事につけても風情のある行事や催しのたびごとに、誰をさしおいても(この更衣を)参上させなさり、ある時にはお寝過ごしになってそのままお仕えさせるなど、むやみにおそばを離れないように扱われているうちに、自然と身分の低い方のようにも見えたけれど、この皇子がお生まれになってから後は、(帝も更衣を)たいそう格別に待遇しようとお心にかけられたので、皇太子にも、悪くすると、この若宮がお就きになるのかもしれないと、第一皇子の(母君
の弘徽殿)女御はお疑いになっている。

(この女御は)他の方よりも先に入内なさって、(帝も)貴い方としてお思いなさる気持ちは並々ではなく、皇女たちなどもいらっしゃるので、この方の忠告だけはやはり面倒で、つらいものとお思い申しあげていた。

(更衣は)おそれ多い帝のご庇護を頼りに申しあげながら、(一方ではこの更衣のことを)さげすんだり欠点をお探しになる方は多く、自分自身は弱々しくどこか頼りない様子なので、(帝の寵愛のために)かえって(味わうことになった)つらい思いをなさる。

その(更衣の)お部屋は桐壷である。

光源氏の誕生の単語・語句解説

[候い給ひける]
お仕えしておられた。

[いとやむごとなき際にはあらぬ]
それほど高貴な身分ではない。

[心をのみ動かし]
心を動揺させるばかりで。

[あつしく]
病気がちに。

[あいなく目をそばめつつ]
困ったことだと目を背け背けし。

[世の覚え華やかなる]
世間の評判も際立っている。

[はかばかしき]
しっかりした。

[心もとながらせ給ひて]
待ち遠しくお思いになって。

[この御にほひ]
このつややかな美しさ。

[おしなべて]
並ひととおり。普通。

[大殿籠り過ぐして]
お寝過ごしになって。

[あながちに]
むやみに。

[おはしませば]
おらっしゃるので。「おはします」は「いる」意の尊敬語。

[心苦しう]
「心苦し」の連用形「心苦しく」のウ音便。

*光源氏の誕生でテストによく出る問題

○問題:(*1)の「めざましきもの」とするのはなぜか。
答え:更衣が身分も高くないのに帝の寵愛を独占しているから。

○問題:(*2)の「それより下臈の更衣たちは、まして安からず」とあるが、それはなぜか説明せよ。
答え:更衣たちは身分も低く、女御たちよりも帝の寵愛を期待することが出来ないから。

○問題:(*3)の「かかること」とはどういう事を指すか。
答え:帝が一人の更衣だけを寵愛するようなこと。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は高校古典の教科書にも出てくる源氏物語(げんじものがたり)でも有名な、桐壺・光源氏の誕生(ひかるげんじのたんじょう)についてご紹介しました。

その他については下記の関連記事をご覧下さい。

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